林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「自分が必要とされる限り、細田守監督の志や哲学に向き合っていきたい」
過去と未来、リアルとファンタジーが軽やかに交錯する映画『未来のミライ』。甘えん坊な少年“くんちゃん”の視線は、いつしか時空を超え、思いもよらぬ角度から「家族」を見つめ直すきっかけを私たちに与えてくれる。今や世界で新作が待望される鬼才・細田守監督の最新作。今年(2018年)のカンヌ映画祭・監督週間でプレミア上映されたのち、世界最大のアニメの祭典・アヌシー国際アニメーション映画祭に出品された。
齋藤優一郎プロデューサーは、2011年に細田監督の作品を制作する「スタジオ地図」を立ち上げたアニメ業界の若き風雲児。映画の白地図に新しい道を描き続ける齋藤氏に、気になる海外との関係について、カンヌの地で語っていただいた。
――『未来のミライ』は、今年のカンヌ映画祭の監督週間に入った唯一のアニメーション作品です。どういったいきさつで、監督週間への出品となったのですか。
齋藤 カンヌという新しいチャレンジを決断出来たのは、フランスの大切なパートナーの1人、海外セールス会社シャレードのヨハン・コントの存在が大きいです。前作『バケモノの子』は、フランスの老舗映画会社ゴーモンに、アジアを除く海外セールスとフランス配給を担っていただいたのですが、そこで最も信頼できるパートナーがヨハンだった。彼がゴーモンから独立し、スタジオ・カナルにいたピエール・マザールと、ワイルド・バンチにいたキャロル・バラトンと一緒にシャレードを立ち上げました。
――新しい会社のようですが。
齋藤 去年(2017年)できたばかりです。僕も細田監督もそうですが、「会社」や「スキーム」と仕事をするというより、(気持ちと哲学を共有できる)人と新しいチャレンジをするのが楽しい。今回、『未来のミライ』を海外でどうやったら多くの人に見てもらえるのか、作家としてのフェーズが変わる『未来のミライ』を作る細田監督を、今後どうプロデュースしていくべきなのか、それには、前作でも面白いチャレンジを一緒に経験できたヨハンと一緒に手を組むことが最良と考えたんです。ヨハンは、「(シャレードが扱う)作品を自分の家族と同じくらい大切に思えるか」とか、「自分の家族や子供たちが幸せになれる作品だけを扱いたい」と言っていて、すごい志だな、と。
シャレードのメンバーはカンヌ映画祭の経験値も豊富です。基本的に実写映画を中心にキャリアを積み上げてきた3人でしたが、ピエールは『パディントン』や『ひつじのショーン』の海外セールスを、キャロルはジブリ作品をやってきた経験があった。彼らは、アニメーションへの愛情と深い造詣がある人たち。彼らとのチャレンジにすごくドキドキ、ワクワクして、きっとものすごい面白いことができるのではと思いました。
『未来のミライ』は企画段階から、細田監督の作家性が新しいフェーズに向かう作品になると、僕は予感していました。ヨハンとはその予感を共有し、監督と作品を一緒に励まし、海外での中長期的な細田監督プロデュースをどのようにしていくべきか、ずっと話し合ってきました。その中に、カンヌへのチャレンジという途方もないアイデアもあったんです。
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