丸山あかね(まるやま・あかね) ライター
1963年、東京生まれ。玉川学園女子短期大学卒業。離婚を機にフリーライターとなる。男性誌、女性誌を問わず、人物インタビュー、ルポ、映画評、書評、エッセイ、本の構成など幅広い分野で執筆している。著書に『江原啓之への質問状』(徳間書店・共著)、『耳と文章力』(講談社)など
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
人生100年時代。西脇義訓さんの「好きを極める」生き方とは(前編)
日本は今や「人生100年時代」なのだそうだ。「定年イコール人生のリタイア」という時代は急速に過去のものになりつつある。
とはいえ、定年の後、いったい何をすればいいのか、「人生100年といわれても、どう生きたらいいのかわからない」と戸惑う人は少なくないし、なかには「生きていても仕方がない」という極端な考えに走る人もいるようだ。その一方で、定年後こそ、本当に自分がやりたかったことをする絶好のチャンスだと捉える人もいる。
「クラシックが好きで好きでたまらない」「寝ても覚めてもオーケストラ」という溢(あふ)れんばかりの熱い想いを抱えながらサラリーマン人生を送り、2013年、65歳にしてプロのオーケストラを設立。指揮者デビューを果たした西脇義訓さんはその一人。いわば、好きなことにとことん情熱を注ぐ偏愛人だ。
正直、クラシック音楽とは縁が遠かった私だが、西脇さんの偏愛ぶりに興味をひかれ、話をうかがった。偶然と必然が交錯する人生に耳を傾けるうちに、これもアリかなと思えてきた。
まさに「好きを極める」いう風のあるその生き方を、2回にわけて紹介したい。
西脇義訓(にしわき・よしのり) 1948年、愛知県生まれ。15歳でチェロを始め、大学で慶應義塾ワグネル・ソサィエティ・オーケストラに在籍。71年、日本フォノグラム(現ユニバーサルミュージック)に入社。2001年、録音家の福井末憲と共にN&F社を設立し、長岡京室内アンサンブル、サイトウ・キネン・オーケストラ、青木十良などの録音・CD制作に携わる。2013年、デア・リング東京オーケストラを創立し、録音プロデューサーと指揮者を兼ねる。
2018年8月31日、東京・三鷹市芸術文化センター「風のホール」で前代未聞の画期的なコンサートが開催される。演奏するのはデア・リング東京オーケストラ。演目はメンデルスゾーン「交響曲第4番 イタリア」、ベートーベン「交響曲第7番」ほか。
何がそんなに画期的なのかについては後編に譲るとして、前編ではまず、デア・リング東京オーケストラの創設者であり、指揮者でもある西脇さんの稀有な生き様に触れてみたい。
「周囲の人達の反応ですか? そりゃあ一様にビックリしてました。というのもほとんど誰にも打ち明けていなかったものでね。なぜって『プロのオーケストラを作って、指揮者になる!』なんて公言したら、頭のおかしなヤツだと思われてしまうだろうという自覚があったからです(笑)。
否定的な意見を聞きたくなかったというのもあったかな。不可能だと思うのは他人の価値観でしかない。結局のところ、行動を起こすか起こさないかは自分次第なのだと考えていました。それはつまり覚悟の問題。どういう結果になっても、すべては自己責任だと腹を括る覚悟がなければ、夢を手繰り寄せることはできないのではないでしょうか」
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