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吉田類と太田和彦、どっちのほうが美味しいか?

青木るえか エッセイスト

「第一人者」の吉田類さん=東京・神田で拡大居酒屋紹介の「第一人者」吉田類さん=東京都神田で

 酒というのも食べ物の一種か。

 居酒屋というのは酒を飲みに行く場所というのが本来の意味なんだろうけど、下戸でも居酒屋には行く。今や居酒屋ってのは食堂で、食事をする場所。

 コーヒーショップのほうがまだ「コーヒー専門店」の割合が高い気がする。喫茶店のつもりで、ちょっとパフェでもあれば食べたいと思って入ったコーヒー屋(そういう店はほぼ“珈琲”の表記である)で、甘いものがまるでない、コーヒーにいれる砂糖しか甘みがない、せいぜい壁土ぐらい固いクッキーぐらい、という店なんてことはよくある。

 居酒屋に入って、酒以外ないということはない。

 酒にはつまみというものがあるのだ。このつまみというものは、酒を飲めない人間でも美味しく食べられる。

第一人者vs後発

 居酒屋紹介番組というものがある。

 吉田類と太田和彦だ。

 吉田類は『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)。

 太田和彦は『太田和彦の日本百名居酒屋』(旅チャンネル)であります。

 吉田類はあのカタギとは思えない(優しそうだが、ケンカしたら強そうな)風貌と、何者なのかよくわからないながら悠然とした態度でなんとなく納得させられてしまうという存在感で、居酒屋紹介番組というものを成立させた。

 そして太田和彦。

 後発感は否めない。番組のつくりもほとんど同じ。

 どっちが居酒屋について語る男としてキャリアがあるのかわからないが、世間は「第一人者が吉田類」と思いこんでいるし、吉田類も他人をまったく意識してない=居酒屋を楽しく語るのは世界にオレだけいればいいんじゃねえの?誰か他にいたっけ?と信じ切っているような風情だから。太田和彦のことを知らない、と言われても信じる。

 太田和彦はたぶん気にしている。自分が後発であることを。番組もあまりにも似ていることを気にしている。

 気にするならもうちょっと別なテイストの番組にしたらいいじゃないかと思うが、居酒屋をめぐる番組なんて、そう新しさなんて出せそうもない。「オーソドックスにやりましょうや、ねえ太田さん!」と言いながらその実「吉田類のアレ、あーいうのウチもやればウケるよ」という制作側の心の声が聞こえてくるようである。

 そして視聴者も、吉田類と太田和彦の番組が別のものであるという意識がなかったりするかも。「あー今日は吉田類は帽子かぶってないな」って、それは太田和彦だ。顔なんか見ちゃいない。「ふらふらと居酒屋で酒のんでうれしそうにしてる番組」としか認識していない。

太田和彦のほうが「食い物屋寄り」

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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