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『母と暮せば』に松下洸平が出演/上

こまつ座「戦後"命"の三部作」で、観客と思いを共有したい

大原薫 演劇ライター


拡大松下洸平=冨田実布撮影

 松下洸平が劇団こまつ座『母と暮せば』に出演する。『母と暮せば』は井上ひさしの遺志を引き継いで畑澤聖悟の脚本、栗山民也の演出により上演される作品。代表作の一つであるヒロシマを描いた父と娘の物語『父と暮せば』(作:井上ひさし)と対となる作品を、という井上ひさしの構想から、山田洋次監督により映画『母と暮せば』が制作された。長崎で被爆した母と亡き息子の心の交流をつづった本作が2018年10月、新たに二人芝居として舞台化される。

 母親役を演じるのは富田靖子。松下は亡き息子・浩二役を演じる。『木の上の軍隊』に続くこまつ座出演となる松下に、本作出演にかける意気込みを聞いた。

長崎で見た景色が演じる上で大事だと思う

――松下さんは先日、『母と暮せば』の舞台となる長崎に行ってきたんですね。

 はい、長崎に初めて行ったんです。こまつ座「戦後"命"の三部作」の一つである『木の上の軍隊』(※沖縄で日本が敗戦したことも知らずに木の上に居続けた二人の兵士を描いた作品。実話を元にしたストーリーで、井上ひさしの遺志を引き継ぎ蓬莱竜太が脚本を書いた)に出演したときも稽古が始まる前に実際に沖縄に行ったんですね。そのとき現地の人と話した経験が後々役作りしていく上で重要だったので、今回も「長崎には行かないと」と思って(こまつ座代表の)井上麻矢さん達と一緒に伺ったんです。

 長崎が独特なのはカトリック信者が多い土地だということで、教会も多いんです。『母と暮せば』にも浦上天主堂が出てくるので、そういうところを巡っていくうちに長崎の持つ独特な町の空気を感じました。「静かな町だな」という印象がありましたね。原爆に関して、「広島は怒りの町で、長崎は祈りの町だ」という言葉があるんです。広島と長崎では受けた被害では一緒でも、そこに対する考え方がだいぶ違う。広島ではそのことを忘れずに怒り続ける。それはとても大切なことで、長崎の人にも同じ怒りの感情はあると思うんですけど、表現の仕方が違うんだなと思いました。教会に行って手を合わせて神様に祈る。その文化の違いが原爆に対する考え方の違いに出ているなと。

拡大松下洸平=冨田実布撮影

 長崎に行って被爆した方たちなどの話を聞く機会が何度かあったのですが、怒りよりも悲しみが強いという印象がありました。爆心地にある長崎医大に行きましたが、当時の建物はほとんど残っていない。でも、1カ所だけコンクリートで作った講堂が残っていて、それに手を触れてみたんです。被爆された方の言葉も直接お聞きしましたが、言葉はもちろんその方々の目や体が記憶に残っています。そういう実際に触れられることって、俳優にとってはとても大事で。『木の上の軍隊』の前に沖縄に行ったとき、実際に兵士がその中で生活をしていた木に登ったんですね。木の感触とか上から見えた島の景色がイメージを作っていく上でとても大事なものになりました。そういう意味では長崎に行って残された講堂に触れて、当時の人たちが手を合わせていただろう教会で自分も同じように祈りを捧げたときの感覚が、稽古が始まってからすごく役に立つと思います。長崎に行ってよかったなと思いますね。

◆公演情報◆
こまつ座「戦後“命”の三部作」第三弾
こまつ座第124回公演・紀伊國屋書店提携
『母と暮せば』
2018年10月5日(金)~10月21日(日) 東京・紀伊國屋ホール(新宿東口)
2018年10月27日(土) 茨城・水戸芸術館 ACM劇場
2018年11月3日(土・祝)岩手・花巻市文化会館
2018年11月17日(土) 滋賀・滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 中ホール
2018年11月23日(金・祝) 千葉・市川市文化会館 小ホール
2018年12月1日(土) 愛知・春日井市東部市民センター
2018年12月8日(土) 埼玉・草加市文化会館
2018年12月11日(火) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:畑澤聖悟
演出:栗山民也
監修:山田洋次
[出演]
富田靖子、松下洸平 
〈松下洸平プロフィル〉
2008年、自作曲に合わせて絵を描きながら歌を歌う「ペインティング・シンガーソングライター」として都内及び関東近郊でライブ活動を開始し、同年、『STAND UP!』でCDデビュー。2009年からテレビ、舞台と活動の幅を広げる。最近の主な出演作品は、ドラマ『捜査会議はリビングで!』(NHK BSプレミアム)『サバイバル・ウェディング』(NTV)、舞台『TERRORテロ』『スカーレット・ピンパーネル』『魔都夜曲』『ラディアント・ベイビー〜キース・ヘリングの生涯』など。12月~1月には『スリル・ミー』への出演を控えている。
松下洸平オフィシャルサイト

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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