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『手をなくした少女』ローデンバック監督に聞く

たった一人ですべての作画を描き切る

叶精二 映像研究家、亜細亜大学・東京工学院講師

――本作は別の長編企画として7年間も準備作業が行われていたと聞きました。まず、その経緯から伺えますか。

2017年年3月12日 東京アニメアワードフェスティバル・池袋 新文芸坐にて拡大セバスチャン・ローデンバック監督=2017年年3月12日、東京アニメアワードフェスティバル(池袋・新文芸坐)にて 撮影・筆者
ローデンバック はじめはグリム童話の「手なしむすめ」を題材とした演劇作品をアニメーション化するという企画でした。2001年から2008年まで「フォリマージュ」(フランスの古参アニメーション制作スタジオ)で準備作業が行われていたのですが、結局実現しませんでした。

――2013年から本作の制作に取りかかり、完成までに約3年間費やされたそうですね。

ローデンバック 一度企画が頓挫した後、何とか制作を継続させる方法を探していたのですが、2013年に私の妻がアーティストの創作活動を支援するローマのレジデンスに合格し、1年間イタリアに滞在出来ることになり、私もそれに同行しました。そして、一人でこっそりとこの作品の作画を始めました。プロデューサーもいない、アシスタントもいない、完成の目処も立たない状態でしたので、ストーリーボード(絵コンテ)も描かず、物語も自由に翻案しながら描いていきました。

――2014年にフランスに帰国されてから、完成までの2年間はどのように取り組まれたのでしょうか。

ローデンバック 帰国してからパリで1年間を費やして、まず冒頭20分間のアニメーションを完成させました。その時、運よくフランスの国立映画センター(CNC)から助成を得られまして、その資金を利用して作ったのです。その20分の作品を名刺代わりにして、あちこち回ってパートナーとなる配給会社を探しました。何とか配給会社が見つかり、それから半年間かけて完成させました。イタリア行きが2013年5月、完成披露試写が2016年5月でしたから、制作期間はちょうど3年間でした。

――作画だけでなく、コンポジット(作画素材を合成して画面を完成させる工程。実写映画の「撮影」に相当)もその期間に含まれているということでしょうか。

ローデンバック 作画とコンポジットはパリで同時に行いました。作画は相変わらず私一人でしたが、コンポジットにはアシスタントスタッフが何人も入ってくれました。

――昨今は手描きの作品でもタブレットにペンで描くという技法が主流になっています。この作品は紙に描いてスキャンするという形だったのか、それともタブレットに作画するという形だったのか、どちらでしょう。

ローデンバック 全て紙に描いてからスキャンをしています。昔ながらの手描きの技法です。主に筆を使って作画をしていました。私にとっては、その方法が最も早いのです。

セバスチャン・ローデンバック監督拡大

驚異の作画を支えた4つの特徴

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筆者

叶精二

叶精二(かのう・せいじ) 映像研究家、亜細亜大学・東京工学院講師

映像研究家。亜細亜大学・大正大学・東京工学院講師。高畑勲・宮崎駿作品研究所代表。著書に『日本のアニメーションを築いた人々』(若草書房)、『宮崎駿全書』(フィルムアート社)、「『アナと雪の女王』の光と影」(七つ森書館)、共著に『王と鳥 スタジオジブリの原点』(大月書店)など。

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