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『母と暮せば』に松下洸平が出演/下

こまつ座「戦後"命"の三部作」で、観客と思いを共有したい

大原薫 演劇ライター


『母と暮せば』に松下洸平が出演/上

映画版と舞台版を合わせて完成するのかもしれない

拡大松下洸平=冨田実布撮影

――映画版の『母と暮せば』の印象は?

 映画版は山田監督が井上ひさしさんの遺志を引き継いで愛情をこめて作った作品なんだなと思いました。あの映画に携わった人たちみんなが「井上さんだったらこう書くだろう、井上さんだったらおそらくこうするんじゃないか」と心の中で思いながら撮ったということが、伝わってきました。祈りの町・長崎に生きる人たちの姿をあたたかく描いている素晴らしい作品だと思います。だからこそ、舞台版で映画とは違うアプローチがしたいと思いますね。あれだけ完成された作品はないですから。なぞることはもちろんしないで、あの作品であえて描かなかった部分を舞台版では引き受けたいなと思います。そういう意味では、映画と舞台と合わせて見てもらって完成する作品かもしれないですね。

――『母と暮せば』は元々、井上ひさしさんが『父と暮せば』と対になる作品を、と構想されたことが出発点ですものね。

 そうなんです。僕たちの心のどこかに井上さんがいらっしゃる。畑澤さんも栗山さんも僕らも劇場の一番後ろで井上さんが笑いながら見てくれているんだろうなと思いながら、毎日舞台に立ちたいです。実は、僕は井上ひさしさんにお会いしたことなくて。だから、自分にとっては歴史上の人物みたいな感じなんです(笑)。

――そういう印象なのですか。

 お会いできないまま亡くなられたので、僕にとってはすごく不思議な存在です。こうして井上さんの遺志を継いで作られた2作品『木の上の軍隊』と『母と暮せば』に携わらせていただいていますが、おそらく井上さんがどこかで見てらっしゃるんじゃないかなと思うんです。(同席したこまつ座代表、井上麻矢に向かって尋ねて)井上さんは役者のことを褒めたりするんですか? ……めちゃくちゃ褒めるんですって。じゃあ、僕も褒めてもらえるように頑張りたいですね。(井上麻矢から「井上ひさしはいつも、紀伊國屋ホールの一番後ろのカーテンのところから舞台を見ていた」という言葉があり)じゃあ、初日はおそらくそこにいらっしゃると思うので、見てくださっている井上さんに恥じないような舞台にしたいです。井上さんだけじゃなく、あの日亡くなった方々やあの日からいろんな悲しみを背負って生きてきた人たちの思いを引き受けて、僕らはバトンを渡していきたいと思いますね。

◆公演情報◆
こまつ座「戦後“命”の三部作」第三弾
こまつ座第124回公演・紀伊國屋書店提携
『母と暮せば』
2018年10月5日(金)~10月21日(日) 東京・紀伊國屋ホール(新宿東口)
2018年10月27日(土) 茨城・水戸芸術館 ACM劇場
2018年11月3日(土・祝)岩手・花巻市文化会館
2018年11月17日(土) 滋賀・滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 中ホール
2018年11月23日(金・祝) 千葉・市川市文化会館 小ホール
2018年12月1日(土) 愛知・春日井市東部市民センター
2018年12月8日(土) 埼玉・草加市文化会館
2018年12月11日(火) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:畑澤聖悟
演出:栗山民也
監修:山田洋次
[出演]
富田靖子、松下洸平
〈松下洸平プロフィル〉
2008年、自作曲に合わせて絵を描きながら歌を歌う「ペインティング・シンガーソングライター」として都内及び関東近郊でライブ活動を開始し、同年、『STAND UP!』でCDデビュー。2009年からテレビ、舞台と活動の幅を広げる。最近の主な出演作品は、ドラマ『捜査会議はリビングで!』(NHK BSプレミアム)『サバイバル・ウェディング』(NTV)、舞台『TERRORテロ』『スカーレット・ピンパーネル』『魔都夜曲』『ラディアント・ベイビー〜キース・ヘリングの生涯』など。12月~1月には『スリル・ミー』への出演を控えている。
松下洸平オフィシャルサイト

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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