女子点数の減点は大震災級の問題。政治やメディアも甘すぎる
2018年08月29日
東京医科大学が、入学試験で女子受験生の点数を一律に減点するという「点数改ざん」を行っていたことが発覚し、大きな波紋を広げています。
東京医科大学は2018年度の入学試験において、2次試験の小論文でそれぞれの獲得点数に0.8を掛け、現役から2浪男子は20点、3浪男子は10点を加点する一方で、4浪男子と女子全員には加点しないという操作を実施したと内部調査委員会が報告しました。一部の弁護士等からは、憲法14条(男女平等)に対する違法性も指摘されています。
先進国の高等教育機関がこれほどまでに分かりやすい女性差別を実施したという衝撃の事実は、当然、日本中で大きな反発を生みました。さらにこのニュースは世界でも報じられ、「目を疑うような日本の女性差別」の新たな代表事例に加わりました。
また、東京医科大学は女性研究者支援で補助金約8000万円を受け取っており、補助金を「騙し取った」として更なる批判を浴びています。さらに、大学側が「女性医師は出産や結婚を機にやめてしまうから」という言い訳をしたことは余計に反発を強め、インターネットを中心に非難の声はやみません。
ところが、発覚から1カ月近くが経とうとしている2018年8月下旬でも、この問題に対して政治が動く気配はほとんど見られません。一部では話題が続いているものの、表立っての動きはなくなったと言ってよいでしょう。
もし、これが男子を対象とした減点であればどうなっていたでしょうか? 日大アメフト問題のように、メディアもおそらく長時間にわたって報道し、責任者を徹底的に追及して、学校の組織や文化自体にも矛先を向けていたはずです。
減点された女子受験生の救済に関しても、有志の弁護士らが結成した「医学部入試における女性差別対策弁護団」が、ホットラインを自主的に開設しているだけで、政治や行政が動いている気配は今のところ見られません。
大学による差別そのものも酷いですが、政治・行政・メディアが学校の罪に対して甘いことも含めて、女性差別がいかに根深い問題か改めて痛感させられます。
そして、あろうことか女性医師ですら、メディアの取材等に対して「現状を鑑みれば東京医科大学の措置は仕方ない」と答えている人が数多くいることは衝撃的です。
本来、「女性医師が結婚出産で辞めてしまうのなら、辞めずに済むような職場環境を作ればよい」だけだと思うのですが、トップレベルの学力を有していた医師たちでさえ、そのような発想に至らないほど、「医師はブラック労働が当たり前」と盲信してしまっている人も多いようです。
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