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【公演評】月組『エリザベート』

珠城りょうのエネルギッシュなトート&愛希れいかラストステージで飾る10度目の再演

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『エリザベート』公演から、トート役の珠城りょう(右)とエリザベート役の愛希れいか=岸隆子撮影

 月組公演、三井住友VISAカード ミュージカル『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』が、8月24日、宝塚大劇場で初日を迎えました。1996年、雪組で日本初上演されたウィーン・ミュージカルが宝塚に革命を起こして22年、今では財産とも呼べる代表作となりました。上演回数1000回を超え、観客動員数240万人を記録してもなお“チケット難公演”の勢いは留まるところを知りません。全編を彩るシルヴェスター・リーヴァイ氏の音楽が紡ぐ不変の感動と、出演者の個性がバトンをつなぎ、時代を超えて今もなお愛され続けています。

 記念すべき10代目トート閣下をつとめるのは、月組トップスターの珠城りょうさん。包容力と力強さで、これまでにないダイナミックなトートが誕生しました。また、この公演でトップ娘役の愛希れいかさんが退団します。男役から転向し、歌・ダンス・演技の三拍子がそろった娘役として頂点を極めた愛希さんが、エリザベート役でラストステージを飾ります。

エネルギッシュな珠城トート

 細く長いバイオリンの音色が響くと、客席が固唾を飲む。イタリア人テロリスト、ルイジ・ルキーニが勢いよく飛び出してくるまでのピーンと張りつめた緊張感に、息が苦しくなってしまう。最初の1秒から最後の1秒まで、独特の世界観でお客さまをつかんで離さない、それが『エリザベート』なのです。

――1853年。自由気ままに生きていた15歳のエリザベート(愛希)は、ある日、綱渡りのロープから落下し、冥界の入口で黄泉の帝王トート閣下(珠城)と出会った。トートは生命力あふれるエリザベートに一目で魅せられるが、彼女自身が“死”を求めるまで追い続けようと、その命を返すのだった。やがてエリザベートはオーストリー帝国の皇帝フランツ・ヨーゼフ(美弥るりか)に見初められ嫁いだが、皇太后ゾフィー(憧花ゆりの)に自由も子どもも奪われてしまう。孤独と絶望のふちに幾度となく立たされるたび、目の前に現れ、黄泉の世界へといざなうトート。死が人を愛し、人が死を愛することはあるのか? 魂が救われる日を求め、さまよい続けるエリザベートとトートが踊る“愛と死の輪舞曲”の行方は……。

拡大『エリザベート』公演から、トート役の珠城りょう=岸隆子撮影

 青い血が流れるというトートは “死”の象徴。たくましくて生命力あふれる珠城さんとは、イメージが正反対だからこその楽しみもあります。ついに本場ウィーン版のように短髪&ワイルド路線が来るか?と、期待も高まりましたが、スタイルは従来のトートを踏襲していました。残念! いつか短髪トートが生まれる日は来るのでしょうか。

 珠城トートのヘアスタイルはグリーンとパープルがアクセントになった銀髪のウェービーロング。衣装のベースには、木の葉やガラスの破片を思わせるモチーフが施され、いずれもシンプルなデザインが体格のいい球城さんのスタイルに映えています。

 どんな場面でもいつの間にか姿を現しているトートですが、珠城さんの存在感はとてつもなく大きくて、まさに“黄泉の帝王”と呼ぶのにふさわしい、強烈なエネルギーを発しています。青白く浮かぶ顔や手に体温はなく、見下す視線も冷酷。ただ恐ろしいだけではなく、エリザベートに惹かれてしまう気持ちと憤り、フランツへの嫉妬など、実は感情的なトートの内面を、動と静のコントラストを生かしながら、珠城さんらしさで表現していました。

優しさあふれる美弥のフランツ

 若くてハンサムな皇帝フランツは、マザコンで頼りないという、ちょっと歯がゆいキャラクター。愛するエリザベートとはすれ違い、国難の連続に苦悩するなど耐え忍ぶことが多く、辛抱役といわれています。美弥さんは落ち着いた佇まいとまなざし、魅惑の低音ボイスにあふれる優しさがたまりません。フランツのナンバーはひときわ難曲ぞろいのせいか、高音には裏声を駆使するなど少し苦労しているようですが、年を重ねるごとに深まる演技はさすがでした。

 皇太后ゾフィーを演じる憧花さんは、月組の組長でもありますが、この公演で退団となりました。大人の女役として常に個性的な役を演じてきたので、もっとエキセントリックな役づくりでくるかと想像しましたが、徹底してクールなゾフィー像を作り上げていました。定評のある歌唱力もたっぷりと響かせています。

◆公演情報◆
『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』
2018年8月24日(金)~10月1日(月) 宝塚大劇場
2018年10月19日(金)~11月18日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション:ウィーン劇場協会
潤色・演出:小池修一郎

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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