メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

無料

貫地谷しほりが現代能楽集IX『竹取』に出演

伝統芸能とコンテンポラリーの融合。能楽師、打楽器演奏者、ダンサーも登場

米満ゆうこ フリーライター


拡大貫地谷しほり=安田新之助撮影

 狂言師で世田谷パブリックシアター芸術監督の野村萬斎が、古典の魅力を現代に還元しようと立ち上げた『現代能楽集シリーズ』。9回目となる今回は、日本最古の物語と言われる『竹取物語』を取り上げる。小林聡美、貫地谷しほりの人気女優が出演するほか、能楽師、打楽器演奏者、ダンサーらも登場し、伝統芸能とコンテンポラリーの融合を目指す。貫地谷しほりが西宮市内で取材会を開き、作品に対する思いを語った。

身体を使った表現で未知の領域に行きたい

 「小さいころに『竹取物語』の絵本を読んで、竹から小さな女の子が出てくるファンタジー性にずっと惹かれていました。大人になってからもジブリの『かぐや姫の物語』を見て、あの映画のキャッチコピーは『姫の犯した罪と罰』でしたが、えっ、『竹取物語』はそんな話だったの?と。ただの昔話とは違う暗い側面を持った物語なのかなと興味が沸きました。子どものころから読んでいた物語の世界に入っていける喜びでいっぱいです」と話す。初共演となる小林については、「昔からテレビで拝見していて、潔い方という印象を持っています。小林さんと私は偶然にも身長が同じなんですよ。小林さんは『だから選ばれたのかな』と、冗談をおっしゃっていましたが(笑)」

 マイムや身体を使った独特の動きにセリフを取り入れたスタイルで知られる小野寺修二が構成・演出を手掛ける。「この作品のオファーがあったときに、演劇をやっている親しい友人たちが、皆、『絶対にやったほうがいいよ』と口を揃えて言うんです。また、演出家の栗山民也さんとお食事をしたときに、『えっ、小野寺、竹取、貫地谷。この組み合わせは、絶対面白い!』と私よりも大興奮されて(笑)」と、周りの反響の大きさに驚いたそうだ。

拡大貫地谷しほり=安田新之助撮影

 本作で、誰がかぐや姫を演じるかは、今の時点では定かではない。色んな役柄を出演者が順繰りに演じたり、同じ人物を二人で同時に演じたりと、観客のイマジネーションを膨らませてくれるのが小野寺作品の特徴でもある。今回、脚本は詩人の平田俊子が書き下ろす。そのセリフは、つぶやきであったり、唱和であったりとさまざまなスタイルで発語されるのだろうか。「小野寺さんから、『かぐや姫のイメージにピッタリだと思う』と熱烈なオファーのお手紙をいただいたので、かぐや姫を演じるんだと思い込んでいました(笑)。小林さんと二人で、翁と媼もやるのかもねと話しています。さっきまで、媼だったのに、急に翁に変わるのかも(笑)。小野寺さんですから、ただの美しい話だけには終わらないと思います」。平田の詩的なセリフにのって、月や竹、夜空にも思いを馳せる作品になりそうだ。

 さらに、本作でどんな身体の動きを取り入れて、『竹取物語』の世界を表現するのか期待が高まる。「小野寺さんの舞台『椿姫』を拝見して、人間の身体のすごさに驚かされました。例えば、ちょっとした仕草で男女の営みを表現したりするんです」。小野寺は、2016年に竹内銃一郎の戯曲『あの大鴉、さえも』で、小林を初演出した。シュールで抽象的な物語を、身体を使い、コミカルに演じた小林は観客の笑いを誘っていたが、運動量は多くかなりハードに見えた。「小林さんに『痩せますか?』と聞いたら、『あー痩せるかもね。でも覚えてない。痩せるかもしれないし、痩せないかもしれないイメージ』だと言われました(笑)」。さらに、小林は「小野寺さんは、昨日はこうだと言っていたのに、今日は違うことを言う。それは演者の可能性を見てくれているから」だと教えてくれた。「私には出来ないと思っていても、もしかしたら出来るかもしれない。今回、未知の領域に行けるのではないかと思ったんです」

人生は何においてもトライ&エラー

拡大貫地谷しほり=安田新之助撮影

 未知の領域に行くためには、もちろん、不安材料はつきものだ。貫地谷は、実は身体表現やダンスが大の苦手だという。「何を血迷ったのか、小野寺さんの舞台でダンサーがすごい動きをしていてかっこいいと思い、この世界の中に入れるんだったら入りたいと夢を見てしまいました(笑)。以前、舞台でダンサーと共演したときに、稽古場で皆で踊ってみたんですけど、私だけなかなかさまにならない。私が出演した舞台『ガラスの仮面』で、身体を使ってダンスのような動きをするシーンがあったんですが、本当に恥ずかしくて(笑)。何をしても私では決まらないんじゃないかと。でも、やると決めたからには楽しくやりたいですね」

 今までの人生において、どちらかというとチャレンジをしなかったほうだと打ち明ける。「ミュージカルもやったことがないです。今回、チャレンジできる年齢はいつまでなんだろうと考えて。いつでも出来るという人もいますが、身体を動かさなきゃいけないから、挑戦するには今はいい時期ではないかと。小野寺さんからの手紙や、演劇界の先輩方に背中を押されました」。そうは言うものの、小さいころから出来ないことを平気で人前でやるタイプだったという。取材会でもケラケラよくと笑い、何でもあっけらかんと話す。「ブラスバンドでクラリネットを吹いていたんですが、練習を全くしていなくて吹けないのに、堂々と舞台に立ったことがあります。結果はもちろん、できなかった(笑)。親は赤っ恥をかいたのに、私は『やっちゃった』とケロリ。ピアノの発表会では、途中で弾き間違えても、平気で最初から弾き直す子どもだったんです。人生は何においても、トライ&エラーすることが大切だと思っています。新しい可能性にワクワクしていますね」

そのとき、そのとき、本当であることが大切

拡大貫地谷しほり=安田新之助撮影

 舞台には年に一回は立つと決めている。「映像だけやっていると、目線を動かしたり、映像でしかやらない表現ばかりになってくる。だんだん、今このサイズで撮られているなと分かってくるんです。そうすると、その枠の中でしか演技をしなくなる。悪いことではありませんが、一度、リセットしたくなるんです」。昨年は舞台『ハムレット』で、みずみずしいオフィーリアを演じた。「舞台は毎回、発見があるんです。物語の中で、ここで必ず感情がくるというシーンがあるんですが、人間なので、感情がこない日もある。前は、お金を払って見に来てくださるお客さまに申し訳ないと自分を責めていたんです。でも、『ハムレット』で、こんな日もあるかと思って続けていたら、違うシーンでワーッと感情が盛り上がったことがあって。そう、これが大事なのかもしれない。そのとき、そのとき、本当であることが大切なんだと。人間の感情は決まっていなくて、その感情に自分を持っていくのも必要ですが、受け入れるのも必要なんだと学びました。自分の経験としても、女優としても豊かな時間を持てる。映像は毎日違うシーンを演じますが、舞台は毎日同じシーンをやる中で、違うことを発見できる、すごく贅沢な時間ですね」

◆公演情報◆
現代能楽集『竹取』
2018年10月5日(金) ~ 2018年10月17日(水) 東京・シアタートラム
10月21日(日) 滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
10月23日(火)~10月24日(水) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
10月27日(土)~10月28日(日) 福岡・福岡市立東市民センター なみきホール
11月2日(金) 熊本・熊本県立劇場 演劇ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
構成・演出:小野寺修二
脚本:平田俊子
音楽:阿部海太郎
企画・監修:野村萬斎
[出演]
小林聡美 貫地谷しほり 小田直哉(大駱駝艦) 崎山莉奈 藤田桃子 古川玄一郎(打楽器奏者) 佐野登(能楽師 宝生流シテ方)

筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

「三度の飯よりアートが好き」で、国内外の舞台を中心に、アートをテーマに取材・執筆。ブロードウェイの観劇歴は20年以上にわたり、ブロードウェイの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて、現地で取材をしている。

米満ゆうこの新着記事

もっと見る