真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター
大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
山本芳樹×岩﨑大×緒方和也×田中俊裕
2017年にスタジオライフにより初舞台化された三原順原作の『はみだしっ子』。その続編となる『はみだしっ子 ~in their journey through life~ 』(脚本・演出/倉田淳)が同じくスタジオライフにより10月から11月にかけて東京と大阪で上演される。『はみだしっ子』は1975年に「花とゆめ」(白泉社)に連載され、「はみだしっ子語録」という冊子まで作られるほど、40年以上経った今もなお支持されている漫画で、親に見捨てられ一緒に旅をすることになったグレアム、アンジー、サーニン、マックスのはみだしっ子4人の物語。
そのグレアム、アンジー、マックス、サーニン役のキャストは前作と同じメンバーが揃い、今作もTRK(トランク)、TBC(タバコ)、BUS(帽子)の3チームにより上演される。TRKチームの山本芳樹(アンジー)、岩﨑大(グレアム)、緒方和也(サーニン)、田中俊裕(マックス)に話を聞いた。
――まずは前作のことからお伺いしたいのですが、公演が終わって感じたことなどありましたら教えてください。
山本:スタジオライフとして初めて上演する作品でしたし、『はみだしっ子』の舞台化も初めてでした。原作ファンの方々がたくさんいる中、作品がどう受け入れられるか、倉田さんはじめ劇団員全員が思っていた中で幕が開きました。結果、お客様に受け入れてもらえた、喜んでいただけたのではないかと感じられる反響があったので、すごくうれしかったですね。
――熱心な原作ファンの方も観に来られていたと思います。
山本:そうですね、いつもの公演の雰囲気とは違いましたね。なんていうか……お客様自身の思い出を重ねて観ていらっしゃるような感じがしました。当然、原作のビジュアルは再現できないですから、等身大でやろうと思って作りました。作品が持つテーマ性をしっかりと伝えるということは忘れずに。
岩﨑:この作品の登場人物は子どもなんだけど子どもじゃないなと感じていたので、芳樹さんが言ったように等身大で演じて良いんじゃないかなと思って役作りをしました。この作品が持つテーマ性にウソはつけないですし、倉田さんはビジュアルだけでなく、心情にもこだわっているので、そこは大切に演じました。そこをきちんと押さえてから、仕草や細かい動きなどなど、子どもであることを意識しましたけどね。
――やはり客席の雰囲気の違いは感じましたか?
岩﨑:感じましたね。初日だったと思うんですけど、張りつめて緊張した空気感で、圧力のようなものを客席から感じました。
山本:何を見られているんだろうって。あらゆるものを見られているような気がしたよね。
――それは今までにない感覚だったんですか?
山本:そうですね。僕たちも稽古の時からどう受け入れられるんだろうって思っていましたし、これでいける!という感覚がなくて、本当にこれで大丈夫だろうかと思いながら初日の舞台に立ちました。
田中:怖かったあ~。第一声が僕だったんですけど、もう怖くて、怖くて……。
岩﨑:その圧がこちら側にじわじわと寄ってくるような感覚でした。それが今までと違っていて、『はみだしっ子』ファンの方々の思いが乗っていたように思います。そんな雰囲気にどうしようと思いながらも、やってきた稽古を信じて、倉田さんを信じてやるしかないと思って挑みましたね。
山本:本当に今までにない経験でした。
緒方:今までとは違うお客様も見に来て下さっているなというのを一番感じましたね。それはすごくうれしかったです。個人的なことでは、稽古中から思っていたんですが、この4人と、中でも主役をやり続けている先輩二人とずっと一緒でしたので、それがとても良かったなと思いました。初めてでしたので。
山本:それまであまり絡むことがなかったし、こういう風にチームでやることもあまりなかったしね。
緒方:何をやってもお二人は受けてくれるので、芝居をしていてすごく楽しかったです。最初、子どもの役をどうしたらいいかわからなかったので、何度か飲みに行かせてもらったんです。その時にアドバイスをもらったり、こういう風にしていこうかと4人で相談したり、本番に向けてどんどん変わっていきました。なので、今回も飲みに行って、チーム力をあげていきたいなと思っています。ねっ?
田中:はい、今回もお願いしますっ!(笑)。さっきも話に出ましたが初日の空気感は特にすごかったのですが、でも初日だけでなくその空気感は毎公演感じていました。その中で一生懸命に言葉を紡いでいきました。演じたマックスがどう受け入れられるか心配だったんですけど、悪い印象なく受け入れられたかなと思いましたので、達成感はありましたね。そして、今までほとんど絡むことがなかった先輩たちについていくことで精一杯でした。
――プレッシャーみたいなものを感じていたんですか?
田中:プレッシャーというか……今までは先輩方が稽古しているのを見ているだけだったので、一緒に芝居をすることが特別な体験だったなと思うんです。緒方さんとも芝居を一緒にしたことがなかったですから。いろんなことが怖かったというのもあって、(岩﨑)大さんに「飲みに連れて行ってください!」って言ったんです。
(一同笑)
緒方:いつもトッティ(田中)から言ってきてたよね。
田中:不安を少しでも解消しよう、いろいろ相談しようと思って……。
――TRKチームはキャリアを積んだお兄さんが多いチームですもんね。
山本:そうだよね。同期は若手と言われるBUSチームだもんね。なのに、なんで自分だけおっさんチームなの?ってなるよね(笑)。
田中:いやいや、ならないです。なんで僕?とは思いましたけどね。
山本:でも4人のバランスはすごく良かったですよ。
田中:ありがとうございます! どちらかというとバランスを取るのが得意なんです、僕。
――今までも原作がある作品をされてきましたが、同じ原作ものでも役作りは違いましたか?
山本:ビジュアルを完全に再現するのは難しいので、原作で描かれている心情やテーマ性を重視して作りました。あと感覚としてあったのは、4人の関係性や絆を大事にするということでしたね。バラバラの4人が集まって、それぞれの関係性ができて、そしてひとつにまとまって同じ方向へ向かっていく……そういう物語が、現実の中で起きていればいいと。あの時の自分のモチベーションはこの4人の中にありました。極端なことを言うと、この4人がいるから、この仲間が大好きだから、僕はここにいる。そんなことを勝手に思っていましたね、見せていないですけど……。
(一同笑)
岩﨑:見せないところがアンジーっぽいですよね。それぞれのキャラクターに自分自身が投影されている部分があるんです。僕は言わずにいることや自分だけで守っていることがあるというのはグレアムに投影されているし。それぞれのキャラクターがうまくぶつかり合って、TRKチームの『はみだしっ子』の4人が生まれたんじゃないかなと感じます。
――この4人だから感じられたこと?
岩﨑:そうですね。一度、稽古場で別のチームにまじってやってみたことがあったんです。その時に何か違うなという違和感がありました。
田中:向かっている方向がチームごとに微妙に違ったんですよね。
――違うというのは捉え方が違ったんですか?
田中:明確な何かがあるわけではないんですけど、他の2チームを見ていた時に感じたんですよね。何か違うんだよなあって。
山本:稽古を重ねて関係性ができて少しずつまとまっていく中で、こいつらのために生きていこうってなっていきましたよね。
◆公演情報◆
Studio Life 公演 『はみだしっ子 ~in their journey through life~ 』
2018年10月6日(土)~10月21日(日) 東京・シアターサンモール
2018年11月2日(金)~11月4日(日) 大阪・ABCホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:三原 順
脚本・演出:倉田 淳
[出演]
山本芳樹、岩﨑 大、船戸慎士、松本慎也、仲原裕之、緒方和也、宇佐見輝、澤井俊輝、若林健吾、久保優二、田中俊裕、千葉健玖、牛島祥太、吉成奨人、伊藤清之、鈴木宏明、前木健太郎、藤原啓児
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?