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安蘭けいが再びイプセン劇に挑戦する/上

現代にも通じるテーマを描いた社会派ドラマ『民衆の敵』を上演

大原薫 演劇ライター


拡大安蘭けい=冨田実布撮影

 安蘭けいがヘンリック・イプセンの代表作の一つ『民衆の敵』に出演する。イプセンは“近代演劇の父”とも称されるノルウェーの劇作家で、『ペール・ギュント』『人形の家』『ヘッダ・ガプラー』などが日本でも馴染み深い。1882年に発表された『民衆の敵』はイプセンが真正面から社会問題を扱った作品だ。

 温泉の発見に盛り上がるノルウェー南部の海岸町。発見功労者となった医師トマス・ストックマン(堤真一)は水質が工場の廃液によって汚染されている事実を突き止める。トマスはこの事実を公表しようとするが、公表すれば町の経済が破綻してしまうため、周囲の人たちは反対。トマスの孤立は深まっていく……。

 息もつかせぬ台詞の応酬とスリリングな人間模様を見せる問題作を、イギリスの気鋭、ジョナサン・マンビィの演出により上演する。

 安蘭けいが演じるのはトマスの妻、カトリーネ。夫を支えつつも、周囲との関係を取り持とうとする役柄だ。以前、森新太郎演出の『幽霊』で主演した安蘭が、再びイプセンの作品に挑戦することでも注目される。また、元宝塚歌劇団星組トップスターである安蘭が、ストレートプレイとミュージカルに出演するにあたり、退団後にどんな変化を感じているかなどを聞いた。

イプセンは、今の私たちに通じる感情やテーマを与えてくれる

拡大安蘭けい=冨田実布撮影

――『民衆の敵』出演の話をお聞きになったときはいかがでしたか。

 とても嬉しかったです。社会的な題材にも興味を惹かれましたし、以前にイプセンの作品で『幽霊』に出演していてそれもとても面白かったので、今回の戯曲はどんなかなという好奇心もありました。また、Bunkamuraシアターコクーンの舞台には、以前『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』で出させていただいたときにすごく素敵な劇場だなと思っていたし、「またここに帰ってくることがあるかな、ご縁があるかな」と思っていたところだったので、今回出演のお話をいただいて、とても光栄に思いましたね。

――『幽霊』に出演されたとき、イプセンの作品にはどんな印象をお持ちでしたか。

 最初は「難しい」という印象で、出演のお話をいただかなかったら、戯曲を読むこともなかったかもしれません。でも読んでみると、確かに昔の話ではあるけれど、現代に置き換えることもできる共通のテーマがあるなと思ったんですね。『幽霊』は閉ざされた町の話ですが、目に見えない縛りの中で生きている現代の人たちと重なるところがあるんじゃないかと思って、とても興味深かったです。イプセンは先見の明があったのか、未来を読んでいたのかと思うくらい、今の私たちに通じる感情やテーマを与えてくれる作品を書くんだなと思いました。

――演じ手としてはいかがでしょうか。イプセンの作品は、戯曲を字面どおりストレートに演じるというよりも、もっと深く解釈していかなくてはいけない戯曲のように感じるのですが。

 そうですね、考えれば考えるほど、掘り下げれば掘り下げるほど、一筋縄ではいかない感じがするんです。前回の『幽霊』のときも人の欲望とか、いろいろなものを引き出していかないと演じられない役だったので。でも、そうやって一筋縄でいかないことが楽しいし、やりがいがあると思いますね。

◆公演情報◆
Bunkamura 30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2018
DISCOVER WORLD THEATRE Vol.4
『民衆の敵』
2018年11月29日(木)~12月23日(日・祝) 東京・Bunkamuraシアターコクーン
2018年12月27日(木)~12月30日(日) 大阪・森ノ宮ピロティホール
チケット発売日 東京公演/9月15日(土)から:大阪公演/11月4日から
公式ホームページ
[スタッフ]
作:ヘンリック・イプセン
翻訳:広田敦郎(シャーロット・バースランドの英語逐語訳による)
演出:ジョナサン・マンビィ
美術・衣裳:ポール・ウィルス
[出演]
堤真一、安蘭けい、谷原章介、大西礼芳、赤楚衛二、外山誠二、大鷹明良、木場勝己、段田安則
内田紳一郎、西原やすあき、本折最強さとし、目次立樹、西山聖了、石綿大夢、四柳智惟、中山侑子、木下智恵、穴田有里、安宅陽子、富山えり子
阿岐之将一、香取新一、島田惇平、竹居正武、寺本一樹、中西南央、石川佳代、滝澤多江、田村律子、中根百合香、林田惠子
池田優斗★、大西由馬★、松本晴琉☆、溝口元太☆(★・☆…Wキャスト)
〈安蘭けいプロフィル〉
1991年、宝塚歌劇団に首席で入団。2006年、星組男役トップスターに就任。2009年に退団後も数多くの舞台に主演。『サンセット大通り』『アリス・イン・ワンダーランド』の演技で第38回菊田一夫演劇賞を受賞。最近の主な出演作品は、『レインマン』『リトル・ナイト・ミュージック』『リトル・ヴォイス』『白蟻の巣』『スカーレット・ピンパーネル』など。
安蘭けい公式ホームページ

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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