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安蘭けいが再びイプセン劇に挑戦する/下

現代にも通じるテーマを描いた社会派ドラマ『民衆の敵』を上演

大原薫 演劇ライター


安蘭けいが再びイプセン劇に挑戦する/上

そぎ落として演じるのがストレートプレイ

拡大安蘭けい=冨田実布撮影

――宝塚歌劇団星組トップスターだった安蘭さん。ミュージカルが出発点にあるのですが、女優となった今はミュージカルもストレートプレイも出演されています。ストレートプレイに出るときは、ミュージカルをやるときとちょっと違うギアが入るという感覚があるのでしょうか。

 舞台に立って自分を見せるという点では同じなんですけど、ミュージカルの方が作り込んで舞台に立っているという感覚があって、ストレートプレイに出演するときはより自分自身に近い感じなんです。どちらも本当に楽しいですが、歌うと歌わないとでは全然違います。

――歌がある方が表現しやすい?

 初めてストレートプレイに出演したときは、高揚した気持ちを「ここで歌えればどんなにいいだろう」と思ったんですね。でも、最近は全然そういうふうに思わなくなって。歌がない芝居に慣れてきたのかな。ミュージカルとストレートプレイと区別をつけるつもりはないけれど、演じていると全然違うものをやっているという感覚になることはあります。そこまで過剰に表現しなくても台詞で十分伝えることができるし、ミュージカルだと音楽がある分、感情、表現が過多になってしまうところもあるかもしれない。もちろん劇場にもよると思いますが。ストレートプレイだと、よりそぎ落として演じることになるんだと思います。

――今年の安蘭さんの舞台で印象に残ったのが1月の『TENTH』で演じたブロードウェイミュージカル『ネクスト・トゥ・ノーマル』です。安蘭さんが演じる双極性障害の母親と家族の物語で、とても現代的なテーマを扱う作品です。日本版初演の2013年に続いての出演で、安蘭さんの変化を感じました。

 本当ですか? ありがとうございます。前回やったことをなぞることはないですし、いい意味で前回のことを忘れて、もう1回新しいものを作るような感覚でした。今振り返ると、初演のときはさっきも言ったように感情過多になったり、歌うことに集中しすぎたりしたところがあったのかもしれない。でも、再演では、そういうことをそぎ落としてもっと自然に演じることができた気がするんです。たとえば、「まずアメリカ人になって、ダイアナになる」という段階を踏んでいたのが、直にダイアナになれたんですね。今までは「ダイアナはアメリカ人だから……」と考えていたのが、実は余計なことだったのかもしれない。何かを演じるというのは自分をなくして役になるということなんですが、全く自分をなくすことってできなくて。自分を残しながら役を演じることで個性が生まれるんだと思うんです。それで余計気持ちも入るし、お客様に納得していただけるんだなということがだんだんわかってきた気がします。

 宝塚では「まず女子から男子になって、フランス人になって、アンドレを演じる」というふうに、自分を完全になくして、そこからいろいろなものを自分にかぶせて演じてきた。宝塚という世界ではその演じ方がよかったんだと思いますが、等身大の役柄を演じる上では自分を出していくことも必要だということがだんだん腑に落ちてきた。そういう意味では、今はとてもシンプルに舞台に立っている自分がいますね。 

◆公演情報◆
Bunkamura 30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2018
DISCOVER WORLD THEATRE Vol.4
『民衆の敵』
2018年11月29日(木)~12月23日(日・祝) 東京・Bunkamuraシアターコクーン
2018年12月27日(木)~12月30日(日) 大阪・森ノ宮ピロティホール
チケット発売日 東京公演/9月15日(土)から:大阪公演/11月4日から
公式ホームページ
[スタッフ]
作:ヘンリック・イプセン
翻訳:広田敦郎(シャーロット・バースランドの英語逐語訳による)
演出:ジョナサン・マンビィ
美術・衣裳:ポール・ウィルス
[出演]
堤真一、安蘭けい、谷原章介、大西礼芳、赤楚衛二、外山誠二、大鷹明良、木場勝己、段田安則
内田紳一郎、西原やすあき、本折最強さとし、目次立樹、西山聖了、石綿大夢、四柳智惟、中山侑子、木下智恵、穴田有里、安宅陽子、富山えり子
阿岐之将一、香取新一、島田惇平、竹居正武、寺本一樹、中西南央、石川佳代、滝澤多江、田村律子、中根百合香、林田惠子
池田優斗★、大西由馬★、松本晴琉☆、溝口元太☆(★・☆…Wキャスト)
〈安蘭けいプロフィル〉
1991年、宝塚歌劇団に首席で入団。2006年、星組男役トップスターに就任。2009年に退団後も数多くの舞台に主演。『サンセット大通り』『アリス・イン・ワンダーランド』の演技で第38回菊田一夫演劇賞を受賞。最近の主な出演作品は、『レインマン』『リトル・ナイト・ミュージック』『リトル・ヴォイス』『白蟻の巣』『スカーレット・ピンパーネル』など。
安蘭けい公式ホームページ

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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