メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

『義母と娘のブルース』大ヒットのワケ

ドラマ『ぎぼむす』は「血縁のない親子」と「血縁のある親子」を肯定していた

大山くまお ライター

拡大『義母と娘のブルース』で主演をつとめた綾瀬はるかさん=2016年12月
 「ぎぼむす」の愛称で親しまれた綾瀬はるか主演、森下佳子脚本のドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)が19日、最終回を迎えた。最終回の視聴率19.2%は、自己最高であるとともに、今期の民放連ドラの中で1位。TBS火曜日夜10時からの「火曜ドラマ」としては、日本中で旋風を巻き起こした「逃げ恥」こと『逃げるは恥だが役に立つ』以来のヒット作と言われている。では、このドラマは一体何を描いていたのだろうか?

 『義母と娘のブルース』は、綾瀬はるか演じる優秀なキャリアウーマンが、妻を亡くし、自らも重病で死期を悟った竹野内豊演じる夫と“契約結婚”をして家庭に入り、“義母”として娘のために奮闘するというホームドラマ。夫の死をはじめとする大きな悲劇に見舞われながら、義母と娘との愛と絆を笑いの要素をまぶしつつメリハリのある演出で描ききったことがヒットの要因だろう。綾瀬はるからキャスト陣の好演も光った。

契約結婚と血縁のない親子

 『義母と娘のブルース』と『逃げるは恥だが役に立つ』は“契約結婚”というテーマが共通している。恋愛ではないところから始まる結婚によって家族が形成され、徐々に愛情を育んでいくというストーリー展開も同じである。『義母と娘のブルース』では、血縁のない母子の愛情に焦点が当てられた。

 近年、血縁のない家族、あるいは疑似家族をテーマにした作品が増えている。「血を分けた親子の絆はあって当然」「血縁を何よりも重視する」という旧来の家族のあり方、考え方を覆すもので、是枝裕和監督の映画『万引き家族』がその代表的な例だろう。ドラマでは脚本家の坂元裕二が意識的にこのテーマを取り上げており、『Mother』、『カルテット』、『anone』などで血縁のある家族と対比させながら、血縁のない人々がお互いをいたわり、支え合う姿を描いている。坂元作品以外でも、『監獄のお姫さま』、『コンフィデンスマンJP』、『健康で文化的な最低限度の生活』などでも同様のテーマが扱われるエピソードがあった。

 このような傾向は、現実社会の家族で「血を分けた親子の絆はあって当然」「血縁を何よりも重視する」ということが感じられにくくなっていることの反映だろう。大切なのは血縁ではなく、お互いの愛情であり、思いやりであり、それらをもとにした行動である。また、一時だけでなく、長い時間をかけてお互いのことを見続ける必要がある。そうでなければ、たとえ血縁があっても家族がバラバラになってしまうことを現代の視聴者はよく知っている。

 10年にわたる親子の物語である『義母と娘のブルース』でもそのあたりはたっぷり描かれていた。なお、同作は血縁のない親子の愛情について、世界でもっとも有名な作品『赤毛のアン』を下敷きにしている(原作者の桜沢鈴は義母のモデルが『赤毛のアン』に登場する義母・マリラであることを明かしている)。

ドラマで描かれなかった「第三章」

・・・ログインして読む
(残り:約1218文字/本文:約2467文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

大山くまお

大山くまお(おおやま・くまお) ライター

1972年生まれ。出版社勤務を経てフリーに。映画、ドラマ、音楽、プロ野球などカルチャー全般についての取材、執筆、企画立案、編集などを行う。著書に『「がんばれ!」でがんばれない人のための“意外”な名言集』(ワニブックス)、『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」から学ぶ幸せの作り方』(双葉社)、『名言力 人生を変えるためのすごい言葉』(SB新書)など。「文春野球ペナントレース2018」中日ドラゴンズ監督。