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『はみだしっ子』演出家・倉田淳インタビュー/上

10月6日からスタジオライフにて上演

真名子陽子 ライター、エディター


拡大左から、岩﨑 大、倉田淳、山本芳樹=冨田実布撮影

 10月6日から、Studio Life 公演『はみだしっ子 ~in their journey through life~ 』がシアターサンモールで上演される(21日まで。11月2日~11月4日 大阪・ABCホール)。2017年に初舞台化された『はみだしっ子』は、1975年に「花とゆめ」(白泉社)に連載された三原順原作の漫画で、今作は続編となる。脚本・演出を手がける倉田淳に話を聞いた。

上演しながら怖いなあと思っていた

――前回の公演を振り返って頂いて、感じた事などを聞かせて下さい。

倉田:やはり『はみだしっ子』ファンの皆さまの情熱や想いの深さが本当にすごいなと感じました。その思いにはかなわないと思いましたね。あの原作の、漫画の中で起きていることの裏側に、ものすごく深い洞察力でいろいろなことを感じていらっしゃいます。上演しながら怖いなあと、しみじみ思いました(笑)。幸いなことに受け入れて頂けて、本当に有難かったです。

――例えば、どんな声が多かったのでしょうか?

倉田:3次元で立ち上がっている舞台をご覧になりながら、(漫画が掲載されていた)当時の繊細なご自身のことなどがリンクされたようで、開幕からずっと泣きっぱなしだったとおっしゃる方がいました。セリフも覚えていらして、そのセリフを改めて肉声を通して聞くと、「あ、こういう意味もあったのかもしれない。こういう意味も……」と新しい発見をされたり……。

――役者の皆さんも初日のお客様の圧というか、いつもの客席と違ったと言ってました。

倉田:彼らは相当緊張したと思います(笑)。いい歳をした男性があの坊やたちをやるので、そこをお客さまが受け入れてくれるかどうか、すごく怖かったと思います。

――それもおっしゃっていましたね。受け入れてもらえるか……。

倉田:私も怖かったです(笑)。受け入れてくださいましたし、そして、さらにもっと深いところで作品のイメージを構築してくださっているんだなと感じました。作品への新しい入り口を作ってくださったのではと思います。これはすごいことだと思うんです。そこに、私達が挑ませてもらった意味があったのかなと思いました。本当に怖かったですね。

もうちょっと彼らの行く末まで一緒に行こう

拡大倉田淳=冨田実布撮影

――私も観劇させてもらいましたが、子どもを演じているという風には見えませんでした。

倉田:それはやはり原作の力で、子どもなんだけど思考回路は大人そのものなんです。

――三原先生はなぜ子どもを通して伝えようとされたんでしょうか?

倉田:今となっては詳しいことはわからないけれど、子どもはストレートなことが言えるんですよね。大人はやはり余計な思考が付いてきます。これは口にしちゃいけないとか、これを言ったらバカだと思われるかもとか、ワガママと思われるから我慢しようとか……付随する感情がたくさん出てきてしまいます。でも、子どもは馬鹿正直でいられますから。

――素直に表現しようと思った結果、なのかもしれませんね。

倉田:ええ。ストレートに直球を投げられるのは子どもの特権だなと思ったりします。あとは親との関係がストレートに明確になります。子どもにとっての社会は、家族以外にないですから。親は心にどんな問題を持っていようが、ある程度自分で処理できるけれど、子どもは全く術を持っていないんですよね。

――そうですね。確かに三原先生が伝えたいことは、子どもの言葉だからこそストレートに伝わるのかもしれません。そして今回新たな『はみだしっ子』です。前回の時にはもう、続編をやろうと決めていたんですか?

倉田:原作が文庫で全6巻あるんですが、いきなり全部は絶対に無理だと(笑)。欲を出さずに最初から丁寧に追っていくしか道はないだろうと思って作り始めました。けれど、いざ追い始めたら1巻さえ終わりもしない(笑)。エピソードを3つ、1巻の途中までで、「あ〜、ここまでしかできなかった……」と思ったら、グレアムたちに申し訳ないような気がしたんです。もうちょっと彼らの行く末まで一緒に行こう、ここでピリオドを打ってしまうわけにはいかないと思って、今回、新たに上演させて頂くことにしました。でも今回も考え始めたら、彼らのターニングポイント「山の上に吹く風は」まではいけないとなって、今回も潔くあきらめて「そして門の鍵」までになります。その前の「残骸踏む音」と「そして門の鍵」の2つのエピソードをとらせてもらいました。原作は30ページと20数ページだったかな。

――2巻の頭くらいまでですか?

倉田:そうですね、1巻の終盤と2巻の頭ですね。ページ数で言えば少ないんですよ。それなのにいざ台本にし始めるとヘビーで、ひとつひとつのセリフに「おおっ」と思いながら進めていきました(笑)。向き合う度に参ります。

――言葉の重さに?

倉田:そうです。「そして門の鍵」の中で、彼らは抱えている問題に落とし前をつけて先に進もうとします。その落とし前をつけるためにグレアムは父親に会うんですね。漫画だと絵がありますから、一度にいろんな情報が飛び込んできますが、文字だけになると、このお父さんはなんでこうなっちゃうんだろうって、ひどいことを言ってるなと余計に感じます。そんな中でグレアムは葛藤を抱えながらも、真っ当な方向を見ようと努力する子で良かったねと(笑)。

◆公演情報◆
Studio Life 公演 『はみだしっ子 ~in their journey through life~ 』
2018年10月6日(土)~10月21日(日) 東京・シアターサンモール
2018年11月2日(金)~11月4日(日) 大阪・ABCホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:三原 順
脚本・演出:倉田 淳
[出演]
山本芳樹、岩﨑 大、船戸慎士、松本慎也、仲原裕之、緒方和也、宇佐見輝、澤井俊輝、若林健吾、久保優二、田中俊裕、千葉健玖、牛島祥太、吉成奨人、伊藤清之、鈴木宏明、前木健太郎、藤原啓児
TRKチーム(山本芳樹、岩﨑 大、緒方和也、田中俊裕)インタビュー
〈倉田淳プロフィル〉
東京都出身。1976年、演劇集団「円」演劇研究所に入所。第1期生。芥川比呂志に師事。氏の亡くなる1981年まで演出助手をつとめた。1985年、河内喜一朗と共にスタジオライフ結成、現在に至る。劇団活動の他、1994年より西武百貨店船橋コミュニティ・カレッジの演劇コースの講師を務めた。また英国の演劇事情にも通じており、その方面での執筆、コーディネーターも行っている。

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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