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『はみだしっ子』演出家・倉田淳インタビュー/下

10月6日からスタジオライフにて上演

真名子陽子 ライター、エディター


『はみだしっ子』演出家・倉田淳インタビュー/上

あの階段は彼らの心の象徴

拡大左から、緒方和也、倉田淳、田中俊裕=冨田実布撮影

――前回の公演を経て今回の公演で新たにやりたいことなどありますか?

倉田:やはり今回も何もない空間に挑戦させてもらいます。

――あのセットですね。

倉田:(前回のセットの)あの階段は彼らの心の象徴だと思っているので、今回もあのままでいきたいと思っています。今回の「そして門の鍵」では、そびえ立つ立派な門が原作では描かれているんです。それをどうしようかなと思ったのですが、リアルに置いたところで、多分やりたいこととは違うんじゃないか、果たして望む世界が見えるだろうかと思ったんです。門の鍵とは彼らの心の中の鍵だから、無対象にしようと決めました。

――セットがあるとそこに目がいってしまう、捉われてしまうと。

倉田:ええ。前回、心の象徴としてあのセットを乗峯雅寛さん(舞台美術)に作って頂いたのですが、これは絶対変えるべきじゃないんだと決心しました。もう潔くすべてをなくして無対象にして、イメージで作っていこうと思いました。無対象であればあるほど、心の門の鍵ということが強いメッセージとして伝わるかなって思ったんです。

――それは前回あのセットでよかったという確信があったんですか?

倉田:ありました。お客さまもあれこそ世界観だとおっしゃってくださったので、乗峯さんすごいと。私もすごくうれしかったですね(笑)。

――乗峯さんは原作を読まれてるんですよね?

倉田:すごく深く読んで下さいます。だから彼と組むと面白いんです。台本も読んでくださるし、演出家が何をしたいかを汲み取ってくださいます。どういう道をつけたら、原作の思いと演出家の思いと役者たちの思いを突っ込んでいけるかということを、すごく考えてくださいます。

――いくつか案を出してこられるんですか?

倉田:作品について脈絡ない話をいつもするんですけど、そうしたら、「これはどうでしょう?」とひとつの案をポンっと。大体「はあ〜、すごい」ってなりますね。これはちょっと困りますというのは今までひとつもなかったです。

――インパクトがありますね。印象に残るんですけど、だからといって目立ちすぎてない。

倉田:そこが乗峯さんのすごいところです。今作の先に見据えている「山の上に吹く風」はあの世界なので、ずっとあのセットでいきたいです!

――『はみだしっ子』の象徴として認知されていくというか、当たり前の風景というか。

倉田:帰ってきたというか。

――そうですね!

倉田:そうなっていったらすごく楽しいなと思います。「そして門の鍵」のお屋敷にも街灯があるんです(セットにも街灯がある)。あれも彼らの心の象徴なんです。

役者はそれぞれ湧き出る泉を持っている

拡大倉田淳=冨田実布撮影

――役者さんたちに対して、前回よりもっと……と思うことなどありますか?

倉田:長男(TRK)チームはどんどん突き進んで深めていって欲しいし、次男(TBC)チームはもう一歩と言わず二歩三歩、先へ。彼らの心情の汲み取り方にしても、表現の持って行き方にしても一歩じゃなく二歩三歩と先へいってほしい。そして末っ子(BUS)チームはとにかく伸びて欲しい(笑)。自分の中に一つ一つ腑に落ちるところをもっと役としてあてていって欲しいです。そしてもっと相手とのキャッチボールを確実なものにして欲しいですね。今は投げた球が弱かったり受け損なってしまったり……それはキャリアの問題だから仕方ないところなんですけどね。

――やはり長男チームの方々は確実ですか?

倉田:もうバシッ!と投げて、ガチッ!と受け取りますね。変化球もキチッと投げますし、変化球とわかって取りますから。それは大したもんだなと思います。

――それは単純にキャリアだけの差ですか?

倉田:彼らの感覚の問題ですね。

――その感覚は努力で補えるものなんでしょうか?

倉田:ある程度は……。昔、芥川比呂志さんが役者はそれぞれ湧き出る泉を持っている。その泉から、舞台という大きな泉にどんどん水を流してもらうんだと。この役者の泉からはたくさんもらおう、この役者の泉の水も欲しいわと考えるのが演出家の仕事なんだよとおっしゃったことがあったんです。でもひと言、枯れた泉はどうしようもないんだよ、それを見極めるのも演出家の仕事だと。枯れた泉はいくら言ったところで枯れているんだからどうしようもない……シビアだなと思いました。だからある程度までは学習ということでできますけど、私ができることはそこまでです。

――それはお客さまにも分かってしまいますよね。

倉田:分かります。お客さまは一発で見抜かれます。 

◆公演情報◆
Studio Life 公演 『はみだしっ子 ~in their journey through life~ 』
2018年10月6日(土)~10月21日(日) 東京・シアターサンモール
2018年11月2日(金)~11月4日(日) 大阪・ABCホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:三原 順
脚本・演出:倉田 淳
[出演]
山本芳樹、岩﨑 大、船戸慎士、松本慎也、仲原裕之、緒方和也、宇佐見輝、澤井俊輝、若林健吾、久保優二、田中俊裕、千葉健玖、牛島祥太、吉成奨人、伊藤清之、鈴木宏明、前木健太郎、藤原啓児
TRKチーム(山本芳樹、岩﨑 大、緒方和也、田中俊裕)インタビュー
〈倉田淳プロフィル〉
東京都出身。1976年、演劇集団「円」演劇研究所に入所。第1期生。芥川比呂志に師事。氏の亡くなる1981年まで演出助手をつとめた。1985年、河内喜一朗と共にスタジオライフ結成、現在に至る。劇団活動の他、1994年より西武百貨店船橋コミュニティ・カレッジの演劇コースの講師を務めた。また英国の演劇事情にも通じており、その方面での執筆、コーディネーターも行っている。

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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