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一路真輝、京都で初のコンサートを開催

宝塚ナンバーからミュージカルナンバーまで

真名子陽子 ライター、エディター


拡大一路真輝=岸隆子撮影

 元宝塚歌劇団トップスター一路真輝が京都で初のコンサートを開催する。京都フィルハーモニー室内合奏団との競演で、宝塚時代のナンバーから、退団後に女優として出演したミュージカルナンバーなどを2部構成でお届けする。退団公演となった『エリザベート』からは、「愛と死の輪舞」を宝塚バージョンで、「夜のボート」は東宝バージョンで歌うことが決まっており、他に『モーツァルト!』や『レ・ミゼラブル』からも選曲され、昨年芸能生活35周年を迎えさらに進化した一路真輝の歌声を存分に楽しめる構成になっている。

 一路真輝の取材会が行われ、コンサートへの意気込みを丁寧に語ってくれた。

1部は相対的に男役色が強い感じ

記者:初めて京都でコンサートを開催されるそうですね。

一路:京都は大好きで、音楽学校時代も宝塚に入団してからもよく京都へ行ってました。哲学の道を歩いて湯豆腐を食べたり、銀閣寺へ行ったり、「鴨川をどり」など舞妓さんの踊りを観させて頂いたりして。お仕事ではご縁がなかったのですがオアシスのような憧れの場所で、心の奥でつながりはずっと感じていました。お仕事は初めてなので京都で歌わせて頂けることがすごく楽しみです。

記者:今回、1部では宝塚時代のナンバー、2部は女優になってからのナンバーということで、ミュージカルを主体とした構成なんでしょうか?

一路:1部は、やはり京都フィルハーモニー室内合奏団さんとご一緒させていただくのでクラシックの曲を入れたいなと思いました。有難いことに宝塚の在団中にクラシックと触れる機会があったんです。バウホールで『微笑みの国』というレハールの作品をさせて頂いたご縁で、ウィーンのフォルクスオーパー管弦楽団とCDを作らせて頂きました。そんな流れでクラシックのオーケストラの方と繋がっていたいという思いがあって、あえてクラシックのレハールとかヨハンシュトラウスの曲に自分の色をのせようと思いました。その中に宝塚時代に男役で歌っていた曲が二曲あったので、それを今回入れています。

記者:他に1部ではどんな曲を?

一路:無理やり繋げてるんですけど、やはりウィーンといえば『エリザベート』ということで、トートのナンバー「愛と死の輪舞」を入れています。宝塚で初公開した「愛と死の輪舞」は私にとってもすごく大事な曲です。宝塚の初演に合わせてウィーンのスタッフの方がオリジナルで作ってくれた曲なんです。

記者:「愛と死の輪舞」を歌われる時に気をつけていることはありますか?

一路:今でも覚えてるんですけど、ウィーンのスタッフの方が作られたデモテープが届いて聞いたときに、ウィーンミュージカルにしてはすごくポップな曲だなと思ったんです。でもそこに小池(修一郎)先生の「愛と死の輪舞」の歌詞がついたら、トートの悲しみやトートがどうしてシシィを追い続けたのかというトートのあり方が、この一曲に全部入っていたんです。お客さまがミュージカル『エリザベート』を初めて観た時に「なんなんだろう、トートという存在は」と思うと思うんです。ルキーニがいくら黄泉の帝王と言ってもわからない。この曲は、私はこういうものですという自己紹介のような曲なので、とても重厚な曲として歌っていました。

記者:他にも『JFK』で歌われた曲名もあがっています。

一路:やはり『エリザベート』の「愛と死の輪舞」を歌うとなると、一気に宝塚時代に戻ります。だから宝塚歌劇のこれぞ主題歌という寺田瀧雄先生の名曲や、寺田先生と師弟関係にあった吉田優子先生の『JFK』の曲などを入れたいなと思ったんです。宝塚は私の心の故郷なので宝塚の曲で締めたいと思いました。だから1部は相対的に男役色が強い感じですね。

記者:やはり宝塚の曲は思い入れのある曲になってくるんですね。

一路:もちろんです。でも、退団して20年以上経ちますが、宝塚の歌を歌う時はものすごく迷います。お客さまが聞きたい曲と自分が歌いたい曲が違っていたりするんです。ただ最近、お客さまの声を聞いて、この曲はこういう時に歌ったらいいのかなというのが少し見えてきた時期でしたので、割と早く曲は決まりました。

貴重な経験。やっと夢が実現します

拡大一路真輝=岸隆子撮影

記者:クラシックのオーケストラで歌うことについてはいかがでしょう?

一路:ミュージカルなどはオケボックスが前にあって演じることが多いじゃないですか。でも同じ舞台上で弦の音が聞こえたり、管が聞こえたりする中で歌うのはやはり貴重な経験です。お声がけして頂いてからタイミングがなかなか合わなかったのですが、今回やっと夢が実現します。

記者:ライブですとお客さまが近いと思うんですけれども、その良さとはまた違うんでしょうか?

一路:そうですね、ライブは臨場感が素晴らしいですね。ブレスひとつお客さまに聞こえているでしょうし、そこがライブの良い所でもあると思います。でも、こういう劇場やホールで音の反響があるところはまた別の魅力があるんですよね。歌い方も変わります。でも最終的にはどちらもうわーと歌っているんですけどね(笑)。でもやはりオーケストラに合わせて歌うとなると、身構えも違ってくるのではないかなと思います。

記者:2部は女優になってからのナンバーですね。

一路:宝塚に14年間いて、退団して20年以上経ち、少しブランクはありましたが、女優の方が長くなりました。その女優としての代表作が『エリザベート』というのも、また縁を感じますね。だからもちろんシシィの歌は入れさせて頂いています。原点である宝塚退団後すぐの『王様と私』も、今回は新鮮な気持ちで歌えたらなと思っています。あとは自分が演じた役の歌だったり、ご縁がなくて演じていないけれど今まで歌ったことがある歌などを混ぜて選曲しました。

記者:『モーツァルト!』の「星から降る金」も歌われるんですね。

一路:はい、歌います。この曲はウィーンで『モーツァルト!』を観たときからとにかく大好きな曲なんです。好きな曲はたくさんあるんですけど、この曲に関しては「大」がつきます。だから大事な公演では歌うんですけど、すごく体力がいる難しい曲なのでたくさん歌う時は入れないんです。でも今回はせっかく京フィルさんとご一緒させて頂くので、歌いたいなと思って入れてみました。

記者:この曲の魅力をひと言で言うと何でしょう?

一路:ものすごく母性を感じるんです。それを表現したいなと思います。実体験でも母になれたのですが、当時歌った時は母ではなかったので、違いを感じ取って頂けているとうれしいですね。

記者:母になってから歌うのは違いますか?

一路:よく出産や結婚といった人生経験が演じるにあたって役立つと言われます。それもそうなんだけど、例えば殺人者じゃなきゃ殺人犯はできないのかというのと一緒で、演技力があれば全ての役ができるはずなんです。でも、時々よぎるんです。「たぶん母になったからこその感情が今のせられているのかな」と。だから面白いなと思いますし、全ての人生経験が役に立つ訳じゃないところもすごく面白いです。

 『王様と私』のアンナ先生や『アンナ・カレーニナ』のアンナなど、ベビーシッターさんがいるような位が高い母親は違うんですよね。日本の母とはまた全然違うんです。だから「母親ってこういうもんだよね」と演じると、演出家から「違いますよね」と言われて、「あ、そうだそうだ」って気づく。実生活全てがそのまま役立つ訳ではないということは実感しています。日本で有名な母親像の女優さんはお子さんいない方が多いですしね。

記者:『レ・ミゼラブル』でファンテーヌが歌う「夢破れて」も歌うことが決まったそうですね

一路:『レ・ミゼラブル』も好きな作品なんですけどご縁がなくて。でも、歌のピースとして、ファンテーヌの歌は歌いたいなと思って入れました。

20年後に歌って、何でこんなに変わっちゃったんだろう

拡大一路真輝=岸隆子撮影

記者:年齢を重ねていくごとに心情って変わっていくと思うんですけど、それは実感していくものですか?

一路:実感しますし、10年前に歌った歌を歌って「あれ? 私、変わったかも」って思うこともあったりします。それもすごく面白いなあと思います。わかりやすい曲で言うと、『エリザベート』の「最後のダンス」は、20年前には男役でバリバリに歌っていた自分がいて、その後ウィーンで男の人が歌う曲を何度も聞いて、そして、女優になっていろんな役を演じて、20年後に『エリザベート』のガラコンサートで「最後のダンス」を歌った時に、自分でも全然違うなと感じたんです。何でこんなに変わっちゃったんだろうって……。

記者:でも余計に色気が増していました(笑)。

一路:男役は色気が大事だと言われていても、現役の頃はどこまで何をどう表現したら男の色気になるかわからなかったんです。退団して20年経って、男性が歌う「最後のダンス」の色気と、自分が女優になってから感じた色香でできた新しい「最後のダンス」を歌えたことがすごくうれしかったです。吉田優子先生に100点もらったんです。現役中に100点なんてもらったことなかったのに。「すごい! 100点あげる!」って言ってくださったんです。

記者:誰のものでもない「最後のダンス」ですね。素晴らしかったです。

一路:小池先生は、「そんなにずらして歌うの?」「どこまでずらすんですか?」っておっしゃってましたけど(笑)。小池先生とは戦友なので、「じゃあ、ここはずらすのはやめておこう」と、最後はお互いに歩み寄りました。

何歳になってもやるべきことが山積み

拡大一路真輝=岸隆子撮影

記者:歌のルーツというか、一路さんにとっての「歌」に対する思いを教えてください。

一路:すごく遡りますが、名古屋の中日劇場で宝塚を観て入りたいと思ったんですね。でもその時に先天性股関節脱臼を持っていたので、お医者様から宝塚受験は猛反対されたんです。でも舞台を観てしまったから、宝塚への夢が止まらなくなってしまって、いろんな整形外科の先生に相談して、おっかなびっくりでダンスを始めました。でもどこか自分の中で、踊りで大成することは無理だなとわかっていたので、気がついたら歌をすごくがんばっている自分がいたんです。それがルーツのような気がします。少しずつレールを敷いて頂いて、それががんばる原動力になったかな。

記者:男役として生きる術だったんですね。

一路:そうですね。トップさんは三拍子揃った人だと思っていましたから、トップになれるなんて思っていなかったです。大劇場でソロが歌えれば十分という気持ちで入りました。だから、こうやって歌で綴られるミュージカルで卒業できたことは、神様からもらったすごいギフトだなって思っています(笑)。

記者:歌う時はスキルや感情面など、どんなところを心がけていますか?

一路:男役の発声と女優の発声とオペラの発声と、全部違うんですね。だから歌う曲目に喉を合わせるために、声楽の先生の門を毎回叩きます。今回こんな作品でこんな歌を歌いますというところから始めています。そういうことが積み重なって、1部で男役の歌、2部で女優の歌、ということができるようになったんです。以前はソプラノを出すために男役の歌を封印していた時期がありました。低い歌は歌わないでおこうと思っていた時期があったんです。宝塚を退団してから10年ぐらいそうしていたのですが、お休みを頂いて戻ってきた時は、また宝塚の歌から始めたんです。復帰コンサートは男役の歌を歌いました。

記者:それはなぜですか?

一路:女優の声がまだちょっと練れていなかったんです。男役の声は起きた時から出るんですよ(笑)。一番吸収する10代の時に練習していたので、自転車に何年も乗っていなくてもすぐに乗れるのと同じです(笑)、男役の歌はすぐに歌えるんです。でも女性の声はその舞台に合わせて鍛錬しないと出ないんです。すごく高いキーの歌がある作品をやる時は、初日に向けて半年ぐらい準備をしました。そうしないと、男役で鍛えてしまった喉では、女優の声は簡単には出ないんです、今も。でも、これもポジティブに考えていて、何年経っても何歳になってもやるべきことが山積み(笑)。これで私は終わり、ということなくずっと生きていきたいなって思えるので、すごく幸せだなって思っています。

元宝塚の人がいると安心することを発見しました

拡大一路真輝=岸隆子撮影
記者:昨年は35周年という節目を迎えられましたが、今後はどんな風に描いてらっしゃるのでしょうか?

一路:身の丈にあった役に巡り合えることを模索しています。ストレートプレイも多くなって、『卒塔婆小町』で100歳の老婆を演じている自分は、昔に描いていた青写真にはなかったんです。けれど、いろんなものをかなぐり捨てることができるようになっている自分がいて、それはすごくうれしかったですね。こういう役をやる年齢になったんだっていうのを最近すごく感じています。これからもっと増えていくんではないかなって思った時に、自分の立ち位置や求められる役が広がっていくような気がしてワクワクします。何でもやりたいし、必要とされたいという気持ちがあるので、今後どんなお話を頂けるのかとても楽しみです。今度、『オン・ユア・フィート!』で朝夏まなとさんのお母さん役で出るんです。

記者:朝夏さんは同じ事務所に入られました。アドバイスは何かされたんでしょうか?

一路:先日、ライブを観に来てくれたので、「退団してどう?」って聞いたら、「女になるのに必死です」って言ったので、「20年経てばこうなるよ」って言いました(笑)。でも20年経っても大して変わってないですよね。努力も必要だけど自分らしくいたらいいんじゃないというような話をしました。

記者:後輩の朝夏さんと共演できるのは楽しみですか?

一路:そうですね。宝塚を退団して一番不安な事は、毎回新しい座組ということなんです。毎回新しい人と組む。それは宝塚にはない緊張感なんです。さすがに20年以上経つので慣れましたが、でも最近、元宝塚の人がいると安心することを発見しました。何なんでしょうね。お互いに叱咤激励しながら、宝塚出身だからこれは簡単にはできないよねという話もするんです。「男役だったからこういう所が不得手だよね。だからお互いに言い合おうね」みたいなことも言えるんです。「どうしてこのキーが出ないんだろう」、「ここは女優になって一番難しいキーだよね」っていう話もできる。元男役同士だからわかる会話なんです。

記者:では最後にこのコンサートへの意気込み、メッセージをお願いします。

一路:大好きな京都にパワーをもらって舞台に立っていた宝塚時代を思い返して、退団して20年以上経って京都でコンサートができるということにすごく縁を感じます。そんな思いを歌にのせてお客さまに伝えられたらいいなと思っていますので、ぜひ観にいらしてください。

◆公演情報◆
一路真輝&京フィル シャイニング コンサート in 春秋座
2018年11月10日(土) 京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)
公式ホームページ
【出演】
一路真輝
指揮:牧村邦彦
管弦楽:京都フィルハーモニー室内合奏団

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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