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大空ゆうひインタビュー/上

舞台『まさに世界の終わり』、心の繊細な部分に必ず何かが刺さってくる

中本千晶 演劇ジャーナリスト


拡大大空ゆうひ=冨田実布撮影

 舞台『まさに世界の終わり』に出演する大空ゆうひに話を聞いた。『まさに世界の終わり』は、わずか38歳でこの世を去った後に注目されたフランスの劇作家、ジャン=リュック・ラガルスの戯曲である。グザヴィエ・ドラン監督によって映画化もされ(邦題『たかが世界の終わり』)、2016年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞している。

 物語は、不治の病を抱えた男が18年ぶりに実家に帰郷し、兄夫婦と妹、そして母親に再会するというシンプルなものだが、そこで起こる家族ならではの心の葛藤がきめ細やかに描かれる。大空が演じるのは主人公ルイ(内博貴)の兄の妻であるカトリーヌだ。

 演出を担当する石丸さち子の元での稽古に励む大空から、作品を創り上げていく苦労と面白さを聞いた。稽古場で研ぎ澄まされた集中力が伝わってくるようなインタビューとなった。

難しいと思った台本が、ここまで

――お稽古もいよいよ佳境ですが、手応えはいかがですか?

 最初に戯曲を読んだ時は散文詩のように何度も同じことを繰り返すのが不思議で、意味がまったくわからないというところから始まりました。それから上演台本をいただき、これを石丸さんが一語一語深く読み解いていってくださって、キャストもそれぞれ感じたことを持ち寄って稽古を重ねるうちに、この家族一人ひとりの姿がうっすらと見えてきたんです。

 もちろん余白の多い本なので、まだまだこれからも発見があるでしょうけど、まったくの無色透明からどんどん色がついてくるような工程がとても面白いお稽古でしたね。

――台本にト書きがまったくないので、その場の状況なども想像しにくいのでは?

 選択肢がたくさんあるのでとても難しいと思いましたが、それを読み解いていく作業はまるでパズルを解いていくようでした。字面だけではわからない秘密がたくさん潜んでいるんです。家族って、10組あれば10組ごとに違う何かを抱えていると思うので、観た人それぞれの心の繊細な部分に、いろんなことが刺さってくる作品です。

 一見難しい本がここまでいろいろなことを感じられる作品になってきたことが、今は本当に面白いです。これがお客さまにもちゃんと伝わるといいなと思います。

――どんな舞台になるのかも台本だけだと予想がつかないだけに、楽しみです。

 実際どんなセットでどう見せるかも本当にいろいろなやり方があると思うんです。長いセリフも多いですから、モノローグ的に処理することもできるのですが、今回それをすべてリアルな会話として成立させているところにも、石丸さんの工夫が詰まっていて、より見応えのあるものになっていると感じます。

◆公演情報◆
舞台『まさに世界の終わり』
2018年9月22日(土)~9月24日(月・休) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2018年10月4日(木) 名古屋・名古屋市芸術創造センター
2018年10月6日(土) 藤沢・藤沢市民会館 大ホール
2018年10月13日(土)~11月6日(火) 東京・DDD青山クロスシアター
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:ジャン=リュック・ラガルス
翻訳:齋藤公一
上演台本・演出:石丸さち子
[出演]
内 博貴 大空ゆうひ 島ゆいか 鍛治直人 那須佐代子
〈大空ゆうひプロフィル〉
1992年、宝塚歌劇団に入団。月組、花組に所属後、2009年宙組トップスターに就任。『銀ちゃんの恋』『カサブランカ』『誰がために鐘は鳴る』『ヴァレンチノ』等、数々の話題作に主演し、2012年7月に宝塚歌劇団を退団。以降、舞台を中心に活躍。最近の出演作品はミュージカル『HEADS UP!』『円生と志ん生』『人形の家』『グッド・バイ』『現代能 安倍晴明』など。
大空ゆうひオフィシャルサイト

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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