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「半分、青い。」は「計算、高い。」と結論した心

矢部万紀子 コラムニスト

 朝ドラの王道を私なりに解説するなら、①は「女子が何者かになろうとする姿を描く」で、②が「戦争を伝える」だと思っている。②は時代設定などもあって描けないケースもあるが、きちんと入るとビシッとしまった朝ドラになる。

 「半分、青い。」のヒロイン鈴愛は、漫画家になる夢を見つけ、高校を卒業したら東京に行くと決める。農協への就職が決まっているのに、と反対する母(松雪泰子)。「鈴愛はね」と反論する娘に、「18にもなって自分のことを鈴愛と言うような子に、漫画みたいな競争の世界、やっていかれるはずがない」と言う。すると、鈴愛はこう返す。

 「お母ちゃん、漫画は競争の世界やない。夢の世界や」

 母を乗り越えて自分の道を歩みだす。何度も朝ドラで描かれるシーン。そこに「鈴愛」という一人称をもってきて、幼さゆえの強さを描く。「王道」かつ「うまい」。ウルっときた。以上が①。

 ②は、祖父の仙吉(中村雅俊)が担った。鈴愛の弟・草太(上村海成)が学校の宿題「戦争体験を聞く」について祖父に尋ねる。仙吉は「それは、じいちゃん、できん」と答える。本にも書いてあるし、話してくれる人もいるだろう。だけど、自分にはできない、と。

 ギターの弾き語りが得意な仙吉に草太は、「じいちゃんが僕くらいの時に、はやっていた歌を弾いて」と頼む。軍歌ばかりでいい歌など一つもなかった。あの頃、こんな歌がはやっていたら、死んだばあちゃんに聞かせたかったと言って、仙吉はサザンの「真夏の果実」を歌う。

 死んだばあちゃんは風吹ジュン。ナレーションも担当していて、仙吉が満州から引き揚げて来たことなどを語る。中村の歌と芝居で、戦争を描く。うまい。

「半分、青い。」の脚本を手がける北川悦吏子さん=東京・渋谷のNHK放送センター拡大「半分、青い。」の脚本を手がけた北川悦吏子さん=東京・渋谷のNHK放送センター

 さらに北川さんは、新しさも出した。

 鈴愛の両親、晴と宇太郎(滝藤賢一)は、お互いを「ハルさん」「ウーちゃん」と呼び合う。「あなた」「おまえ」でも「ママ」「パパ」でもない。これまた、うまい。

 というような感想を得て、岐阜編の最後あたり。信頼する朝ドラ好きの友人に「北川さんは手練れだね」などと語った。彼女から返ってきたのは一言。「あざとい」。

 この指摘もよくわかった。①よし、②よし、新しさを足して、はいヒット。そんな印象を彼女は得たのだろう。

 今にして思えば、「あざとい」は「計算、高い。」であり、「手練れ」なんて言っていた私は、なんてお人好しなんだと思う。

 だが東京編でも私は、「北川さん、うまい」と思っていた。豊川悦司が演じる漫画家・秋風羽織が

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

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