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『まんぷく』の謎。昔の大阪のラーメンは…

青木るえか エッセイスト

『まんぷく』拡大『まんぷく』の公式サイト(NHK)より

 朝ドラ『まんぷく』がはじまりました!

 その前の『半分、青い。』は見ていなかった。いろいろ悪評は聞いていて、はたしてほんとに悪いのかそうでもないのか、確認したいなあと思ったけれど見始めて5分もたたないうちに知らずにチャンネル回しちゃうのでよくわからなかった。それが「つまんない」ということなんだろうか。

じゃこめしはうまそうだ

 『まんぷく』は、面白いかどうかはまだわからない。しかし見てしまう。やめられない。大河ドラマ『真田丸』の時もそうだったが、「私はこれを面白いとは素直に言いたくない、が、脇役の人たちをはじめとして登場人物に興味があってつい見てしまう」という感じだ。……きっと面白いんだろう。

 まあそれはいい。『まんぷく』は、チキンラーメンやカップヌードルを開発した安藤百福夫妻をモデルにしたドラマなので、食べ物が主役級の活躍をする。そもそも、主人公の福子(安藤サクラ)は「食べることが大好き」という設定だ。

 その割にはあんまり食べ物が出てくる印象がない。今のところは、福子の昼の弁当のじゃこ飯と、福子が親友や立花さん(安藤百福にあたる人。長谷川博己)と一緒に食べる屋台の志那そば=ラーメンぐらい。

 じゃこめしはうまそうだ。弁当箱が楕円形の曲げわっぱで、ごはん(固めでちょっとぼそっとした感じがあり、たぶん麦飯ではなかろうか)にちりめんじゃこがばらまかれ、隅っこに黄色いたくわんが数切れ。脳内で味を再現してみると別にうまくもないんだが(うちでも、何もないような夜にごはんにちりめんじゃこふりかけて食べることがあるがうまくもなんともない)、このドラマの中でちらっと出てくるとこれがうまそうである。大阪駅の駅弁で『まんぷく弁当』とかいって売り出せばこの1年は売れるんではないか。そのかわり、弁当箱はプラスチックなんかぜったい使わず、掛け紙も古くさいデザインにこだわって、いらぬソーセージとか玉子焼きとか揚げ物みたいなものは断じて入れず、きちんとあのじゃこ弁当の空気感まで再現してほしいものだ。

ドラマや舞台のラーメンは難しい!

 で、屋台のラーメンである。

 最初に出てきたのをガン見してしまったのだが……これがイマイチだった。

 その後、ネットをいろいろ見てると、「ラーメン美味しそう〜」という声がけっこうあって、「えええー?」と思ったのだが、たぶん、「美味しそう」と思う人と、「イマイチね」と思う私は、見ているものがちがうのだ。確かに、見方を変えれば、あのラーメンは美味しそうだった。

 しかし……。ラーメンて難しいんですよ! ドラマや舞台だと!

 前に、赤井英和が主演で、ラーメン屋のオヤジをやってる芝居を大阪松竹座で見た。当然、舞台の上でラーメン食べて「美味しいわー!」って場面がある。

 そのラーメンのまずそうだったこと(涙)。

 さめててのびてる。

 これは避けがたい。いくら尺は決まっているとはいえ、熱々のラーメンを、その場面に合うようにバッチリと用意(=調理)するのは難しいだろうし、熱々のラーメンはフーフーしてさまさないといけないからセリフを言うのにいろいろ不都合だ。しょうがないから、さめて麺ものびたのを食べて「おいしい〜」と言わなければならない。

 ではテレビではどうだ。

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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