日中でも点灯する積年の悪弊をなくすべきだ
2018年10月16日
悪夢のようなあの北海道大地震・大停電の日から、早1カ月がたった。震源地では今でも余震と避難生活が続いているが、早くこれが収まるよう祈る。
幸い震源から離れた筆者の住む道東では、市民生活は完全に元に戻ったように見える。ただし、これから冬が近づくにつれて電力需要が急速に高まる。その時再び停電にならないかどうかと、不安に感じている人は多いだろう。
特に私を含めて「オール電化」住宅に住む人の不安は大きい。この1カ月、私の地域では小型ガスコンロ・ボンベの品薄が続いているが、熱源がなくても加工品・缶詰類さえあれば数日はもつ。だが真冬に氷点下20~30度にもなる当地では、オール電化住宅の住人にとって停電はまさに致命的である。
幸い私は、先日灯油ストーブとポリタンクを手に入れられたが(ただし灯油ストーブはネットで買うしか手はなかった)、これを使わないですむよう祈っている。
いま、再停電を恐れ、日々に節電を心がける市民は多いだろう。だが、市内の各種施設・商店・銀行等をのぞいてみた限り、大停電などなかったかのごとくである。
停電復旧直後は、「節電」の文字を含む張り紙が少なくない施設・商店に見られ、実際その様子は手に取るようにわかった。管理者は施設内・店内が多少暗くなってもそれを当然のことと見なしていたようだし、市民もそれを受け入れていた。計画停電がとりざたされ政府が2割の節電を求めていた時期も、コンビニやドラッグストアさえ(いずれも店内をこうこうと照らす商いを行っている)、一定ていど照明を落として営業していたものである。
だがあれから1カ月、私が見るところ、事態はほとんど元の木阿弥となった。今でも市役所本庁は若干照明を落としているが、市の他の施設は――中には巨大な天窓まである施設もあるのに――以前と違いがない。大商店・大スーパー・量販店等も、私が見るかぎり停電復旧直後の面影はない(ただし朝晩の暖房の温度や冷蔵庫の温度を若干上げ下げしていると答えた店もあったことは記しておく)。
データ上もそう判断される。地震発生の前日9月5日、道内の最大電気使用量は383万kwであった。大停電があるていど復旧し、大型店等が照明を落として営業をしていた9月9日のそれは308万kw(9月5日の最大電気使用量に対する節電率は19.6%)だったが、私が市内の状況を見て回った1カ月後(10月10日)のそれは372万kw(同2.9%)である(北海道電力「過去の電力使用状況データ」)。この間、暖房用に電気を使い始めた地域もあろうが、一方地震のあった9月上旬は北海道でも例外的に30度近い日が続き冷房用の電気使用も多かったと考えられる。とすれば、照明を含め今日の節電率は非常に低いと判断できる(照明だけが節電対象ではないが、後述するように電気利用に照明が占める割合は小さくない)。
私は、東日本大震災の起きた2011年3月11日の晩から、都内(私はしばらく都内にいた)の多くの商店等で照明を極力落とす努力が続いた事実を思い出す。それはいつの間にか元に戻ってしまったようだが(ただしその後節電の努力自体がなくなったわけではない;例えば、泊原発の廃炉をめざす会編『北海道電力〈泊原発〉の問題は何か』寿郎社、2012年、198-9頁)、少なくとも照明について見るかぎり、今回その二の舞が演じられたように見える。
本州以西・以南と異なり、エアコンが普及していない北海道では、「不要な照明をできるだけ(3割程度)消す」ことが、企業においても「業務エリアで照明を半分程度、間引く」ことが、一番効果的だというのに(節電率はそれぞれ7%、15%; 2018年9月9日付朝日新聞)、である。
大停電の起きた北海道だけの問題ではないが、総じて日本ではいたるところで、昼夜の区別なしに照明をつける根強い悪習がある。
ほとんど窓のない構造の大量販店の場合もだが、コンビニのように、小面積でありながら窓を大きくとった店でさえ、店内は数多くの蛍光灯によって周辺のチリさえはっきり見えるほどの明るさを保っている。
夜ともなればその異常な輝きは外部からもひときわ目立つ。それだけの経費をかけても、明るさが客を引きつけて元がとれるのかもしれないが、大停電が起きた後にさえ同じ商習慣に固執するのはいかがなものか。言い訳に「LEDを使っている」という張り紙をしたコンビニ、ドラッグストアも多い。だがLEDであろうと、点灯しない方が節電につながるのは明らかである。
この点で鏡とすべきはヨーロッパであろう。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください