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【ヅカナビ】本朝妖綺譚『白鷺の城』

真風涼帆が日本物のイケメン七変化

中本千晶 演劇ジャーナリスト


 宙組『白鷺の城』は、45分の舞台とは思えぬほど密度が濃い。その間、トップスター真風涼帆が平安時代の公達、中国の皇帝、戦国時代の武将、粋な青天と様々な姿を見せてくれる。タカラヅカの日本物(中国物も)で見たい男役スターの姿がすべて拝める美味しいショーである。しかも、どれもお似合いで、これからやって欲しい役の妄想をあれやこれやと膨らませた人も多いのではないだろうか。

 宙組20年の歴史の中で日本物のショーは初めてだという。そんな中で、他組で経験のある真風と芹香斗亜のリードが頼もしい。愛月ひかるも専科・松本悠里との場面で頑張っている。

 このショーには一本筋の通ったストーリーが織り込まれている。狐の化身である「玉藻前」と、狐の血を引く陰陽師との時空を超えた恋物語だ。男は様々な人物に転生していくが、常に玉藻前を追い求めている。この魔性の女を星風まどかが妖しく美しく、健気に演じる。

 時代が大きく行きつ戻りつし、「玉藻前伝説」をはじめ文楽や歌舞伎でも知られる物語もふんだんに盛り込まれている。作・演出を担当する大野拓史らしいこだわりの一作だ。ただ見るだけでも華やかで楽しいが、深掘りすると色々出てくる。

 こういうショーをさらっと上演できるのがタカラヅカの底力だと思う。せっかくならより深く味わいたいところだ。まずは、この壮大なラブストーリーを時系列で整理してみよう。

1000年を経てハッピーエンドな恋物語

・古代中国〜奈良時代(8世紀前半)
九尾の狐が化けた絶世の美女、妲己(星風)が殷の紂王を待ち続けている。ようやく待ち焦がれた紂王が現れたかと思いきや、それは吉備真備(真風)だった。(ちなみに妲己は中国の傾国の美女の一人として知られている)【第四景】

・平安時代中期(10世紀前半)
狐の化身である葛の葉(松本悠里)は、夫・安倍保名(愛月ひかる)と息子・晴明とともに幸せに暮らしていたが、息子の将来を案じて身を引くのだった。【第三景】

・平安時代後期(12世紀後半)
安倍晴明の子孫である安倍泰成(真風)の前に鳥羽上皇の寵姫、玉藻前が現れる。その正体は九尾の狐だった。【第二景】

・戦国時代(16世紀中頃)
狐の血を引く軍師、栗林義長(真風)は主君の岡見宗治(芹香)とともに出陣する。宿命の女性との出会いが今生で叶わぬと悟った義長は討ち死にする。【第五景】

・江戸時代初期(17世紀初め)
白鷺城に化け物退治にやってきた宮本無三四(桜木みなと)らに、陰陽師の幸徳井友景(真風)はこれまで幾度となく見てきた夢を語る。【第一景】

殺生石に封じ込められていた玉藻前が蘇り、白鷺城の天守閣に現れるが、無三四が刺してしまう。もう決して玉藻前を手放さないと心に決めていた友景は自刃して後を追う。雷鳴の中、葛の葉の生まれ変わりである富姫(松本悠里)が姿を現す。【第六景】

富姫の祈りでごく普通の男女に生まれ変わった二人(真風・星風)は、ねぶた祭りで再会。共に手を取り合い歩んでいく。【第七景】

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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