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女性医師の問題は医師全体の「働き方問題」である

上野千鶴子 社会学者

 こうした反応の背景として、医学部受験が医師採用人事と同じ機能を果たしてきたことを挙げるひとたちがいる。医学部卒業生は90%以上が医師になる。しかも大学医局の人事支配が続いているので、医学部受験は医師予備軍の採用試験と同じ意味を持つ。したがって採用人事における男子選好が、入学試験にさかのぼっただけ、という見方である。現状では「無理もない」「しかたがない」「やむをえない」という声は男性医師からも女性医師からも聞かれた。だがそれは問題だらけの現状を追認することではないのか?

 女性医師の高い離職率と非正規雇用率、救急や夜勤のほとんどない診療科(耳鼻咽喉科、眼科等)への選好、産休・育休による同僚医師へのしわよせ、都市部への医師の偏在などを理由に、女性医師にこれ以上増えてほしくない、というホンネがのぞく。かつては「オレの医局に女は来るな」という暴言が横行したが、さすがにそれはセクハラという名のレッドカードになった。公言するひとはいなくても、内心そう思っている関係者は多いことだろう。

 だが、以上の傾向の「女性医師」を「女性労働者」に置き換えてみたらどうだろう? ・・・ログインして読む
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筆者

上野千鶴子

上野千鶴子(うえの・ちづこ) 社会学者

1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。1994年、『近代家族の成立と終焉』でサントリー学芸賞、2011年朝日賞受賞。著書に、『ナショナリズムとジェンダー』『生き延びるための思想』『おひとりさまの老後』『身の下相談にお答えします』『男おひとりさま道』『おひとりさまの最期』など多数。近刊に『女ぎらい――ニッポンのミソジニー』(朝日文庫)。