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女性医師が増えて困ることは何もない

上野千鶴子 社会学者

東医大不正入試によって、ようやく医師の「働き方」が、問題視されてきた拡大東京医大の不正入試によって、医師全体の「働き方」も問われるようになってきた

 医師が過重労働になるのは、人口当たりの病床数が多く、外来受診数が多く、保険診療点数が抑制されており、医師が不足しているからである、と日本の医療システムの構造的な原因を指摘するひともいる。個人的な問題の背後には構造的な問題が横たわっている。だが、その構造を厚生官僚と共に長期にわたるなれ合いのもとで維持してきたのは、医師会自身ではないのか。開業医と勤務医とのあいだには大きな格差がある、医師会は開業医主導だったというなら、それを放置してきたのは誰なのか。

 八つ当たりのように、医師の過重労働は国民健康保険制度のせいだという人すらいる。日本の医療は質が高く、相対的に安価で、病院のアクセスへのハードルが低い、だから病院へ患者が押し寄せる、と。だが5時間待ち3分診療の現実が、ほんとうに「質が高い」医療と言えるかどうかは疑問だし、何より病院へ好きで行くひとはいない。安価で民主的な国民皆保険は、日本の誇るべき財産だ。患者に診療抑制を求める前に、安易な診療行動を誘発したのは、これも誰なのか?

 診療の完全予約制を採用すれば、医療現場は医師にとっても患者にとっても劇的に改善するだろう。できないはずはない。歯科診療の多くはとっくにそうなっているのだから。予約がとりにくくなれば、自ずと診療行動は抑制される。今でもすでに専門病院の敷居は高くなっている。緊急性の判定は、家庭医が行えばよい。

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筆者

上野千鶴子

上野千鶴子(うえの・ちづこ) 社会学者

1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。1994年、『近代家族の成立と終焉』でサントリー学芸賞、2011年朝日賞受賞。著書に、『ナショナリズムとジェンダー』『生き延びるための思想』『おひとりさまの老後』『身の下相談にお答えします』『男おひとりさま道』『おひとりさまの最期』など多数。近刊に『女ぎらい――ニッポンのミソジニー』(朝日文庫)。