児相のある街は子供にとって治安が良い街だ
2018年10月31日
東京都港区が南青山に建設予定の児童相談所(ほかに虐待にあった子どもやDV被害者を保護する母子生活支援施設を含む「子ども家庭総合支援センター」)に近隣住民が反対している問題が、大きな波紋を呼んでいます。激しい怒号が飛ぶ住民説明会の様子がテレビで報道されたことで、瞬く間にインターネットでも注目されるようになりました。
報道によると、住民は児童相談所の建設に対して、以下のような反対理由や意見を挙げており、これが「住民の酷いエゴイズムだ!」と大きな批判が飛び交っているようです。
「青山ブランドのイメージが下がる」
「港区の価値が下がる」
「青山ではなくて田町に建てれば良いじゃないか」
「商業地の一角になぜ施設を建設するのか」
「ランチ単価1600円もする一等地に児童相談所はそぐわない」
NIMBYは古くから存在する問題であり、今でも様々な施設に対して各地で建設反対運動が行われていますが、この南青山児相設置の件はなぜ各メディアで報じられるほど大きな話題になったのでしょうか?
おそらく上記の発言からも分かるように、住民側のエゴイズムが通常のNIMBYの問題以上に強く滲み出ていたからだと思われます。
このエゴイズムを因数分解すると、主に2つの要素があるように思います。
まず、児童相談所を「迷惑施設」と捉えている住民が少なくなかったという点です。これまでNIMBYを唱える住民たちが反対する「迷惑施設」は主に、ゴミ処理施設や原子力発電所、空港、刑務所等で、彼らは公害発生や騒音、安全面の悪化という、明確な損害の「可能性」を挙げる施設が多くなっています。
ところが、児童相談所は直接的にそうした「損害」を招くものでは決してありません。「非行少年が集まって治安が悪化しそう」という漠然としたイメージを理由に反対している住民がいるようですが、実際に児童相談所を設置した地域の治安が大きく悪化するというデータは、今のところ聞いたことはありません。
逆に、虐待が放置される社会環境は子供にとって「治安が悪い」ことと同義なのです。児童相談所の設置はそういう状況を改善し、「子供にとっての治安を良くしていこう!」という意味があります。
むしろ区の中でも児童相談所のお膝元となれば、運用次第で虐待件数が他地区よりも減る可能性も十分あると考えられます。「子供たちにとっての治安」という意識が住民たちに無いからこそ、児童相談所を迷惑施設と決めつけてしまうのでしょう。今回の反対運動には、子供のことを考えない大人の身勝手さが露呈していたように思いました。
次に、「ブランド」「街の価値」「そぐわない」等、反対する住民の声の中に、露骨な「選民意識」と貧困家庭に対する蔑視や偏見が表れているとも取れる物言いが散見されたことが、非常に大きな反感を買ったのだと思います。
確かに、児童虐待は貧しい家庭ほど発生しやすいというのは、様々な研究結果から示されている事実です。ですが、裕福な家庭で
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