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映画『止められるか、俺たちを』と大人たちの衝動

予定調和を破壊し続けた若松プロダクションの半世紀を思う

大友麻子 編集者・ライター

『止められるか、俺たちを』拡大『止められるか、俺たちを』 三島由紀夫の割腹自殺のニュースをテレビで観ている若松孝二。実は、劇中で三島を演じているのは監督の白石だ。「僕に若松孝二をやれという無茶振りをした以上、一緒に辱めを受けましょうという監督の謝意の表れだと感じた」(井浦)

助監督めぐみに寄り添うことで響くノイズ

 「ワカちゃん(若松孝二)が『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年・若松プロ)を撮ったみたいに、今度は『実録・若松プロ』ですか、って揶揄する奴もいるけど、そういうことじゃないんだって、作ったお前らが胸張って言わないとだめだろ」

 自分たちが映画の中でネタにされているのだから、心中は穏やかでないものがあったかもしれない足立正生、秋山道男、高間賢司、荒井晴彦ら初期若松プロダクションのレジェンドたちから、辛口と激賞がごちゃ混ぜになった叱咤激励を浴びながら、若松孝二の生前と同じく若松プロ自主配給で全国公開をスタートさせた本作。

 若松プロというと、「反権力」だの「エロスと暴力」だのと、そんな枕詞で語られることが多い。あの時代特有の空気感が、その枕詞を後押ししていたと思うし、このインディペンデントな空間を29歳で切り拓いた若松孝二が、2012年、車に衝突して76歳でいきなりその生涯を閉じてしまうまで、ほぼ半世紀近くの間、一度も看板を降ろさずに、駄作と言われる映画や大赤字の作品も含めて何十本も世の中に送り出し続けてきた稀有な存在であったことも、そうした評価の根底にあっただろう。

 しかし、そんな若松孝二を強烈な個性として描くだけであったなら、この作品はこれほどの存在感をもって、今を生きる私たちに迫ってこなかったはずだ。

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筆者

大友麻子

大友麻子(おおとも・あさこ) 編集者・ライター

1971年、東京生まれ。編集者/ライター。上総掘りという人力による深井戸掘削技術を学んでフィリピンの農村で井戸掘りに従事。のちマニラのNPOに勤務。帰国後、游学社(当時編プロ、現在は出版社)へ。若松プロダクションの映画制作にも関わってきた。現在はフリーランスとしても活動。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです