2018年11月08日
引き続き『まんぷく』に出てくる食べ物を観察しております。
今週もラーメンが出た。いずれこれが「萬平さんのインスタントラーメン開発」につながるのだから重要だ。
インスタントラーメン、というと思い出すことがある。今から40年ぐらい前の『暮しの手帖』の記事だ。商品テストではなく、「インスタントラーメンもわりといいもんだよ」みたいな切り口の記事。
花森安治時代の『暮しの手帖』には、ゴリゴリのハードな商品テストと並んで「こんなもんもええやおまへんか〜」的にゆる〜く新製品や便利グッズをお勧めする、というページもあり、花森安治&暮しの手帖を論じるならそっちの側面もぜったい見落としてはいけないと思うのだが、まあそれはおいといて。……そのインスタントラーメンおすすめ記事では、まず町の人の「インスタントラーメンに対する声」を拾って載せるという構成になっていた。
当時は、『明星チャルメラ』『出前一丁』『サッポロ一番』などの袋麺全盛で、まだカップヌードルは出ていないか、いや出始めの頃か……そんな時期の話だ。インスタントラーメンというものはちゃんとした食事ではなくて、あれを食事にするなんてのは、白い眼で見られるようなことで、でもわりと美味しいからつい食べちゃうよ!って感じで、子どもや若者、忙しいお母さんや会社帰りのお父さんなんかが「えー、わりと好きです(テヘ)」などと述べていた。
その中で一人、初老の女性が「ずいぶん前に食べたことがございますが、みなさんよく召し上がりますねあんなもの」と吐き捨てるように言っていたのだ!
年寄りだから時代の流れについていけず、インスタント食品を目の敵にしてるだけだろう!というような発言だが、読んでいくと、最初期のインスタントラーメンはいろいろひどかったらしい。この女性の感想はもっともなもので、単にそれに懲りてインスタントラーメンに手を出さないでいたらその後のアップデートを知らなかった、みたいなのだ。だから「あの頃の味で決めつけてイヤがってるみなさん! 今は美味しいですよ! もういっぺん食べてみましょうよ!」という記事なのだった。『暮しの手帖』の読者はきちんとした、インスタント嫌いタイプの女性のタイプが多そうだから、そういう層に向けての「インスタントラーメン布教記事」だったかもしれない。
それを読んだせいで、私は「“最初のインスタントラーメン”はうまくなかった」ということが頭にすりこまれてしまった。
そのイマイチだった最初が、まさに「日清チキンラーメン」ということになる。
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