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茨木のり子の詩を朗読する大貫妙子さん拡大茨木のり子の詩を朗読する大貫妙子さん

背筋がぴんと伸びた二人の女性

 大貫妙子さんは、洋楽かぶれのティーンエイジを過ごした私が初めて好きになった日本人の女性シンガーだ。

 学生時代、クラスの男の子に借りた「Romantique」から始まり、次々と出されたアルバムを、苦しい時も悲しい時も、そして嬉しい時も、その音楽の海に浸るようにして聴いた。透明感のある美しい声、繊細な言葉とメロディーが創り出す映像的な音楽世界。そこに登場する女と男はカッコよく、大貫さんの歌を聴いていると、目の前にドーヴィルの海岸やパリの公園が現れ、少し大人になったような気がしたものだ。

 読書会「少女は本を読んで大人になる」の再開に向けた打ち合わせで、ゲストにミュージシャンをおよびしようとなった時、思わず「大貫妙子」と小さく呟(つぶや)いたのだが、まさかそれが実現するとは、正直思っていなかった。願いは口にしてみるものだ。

 その大貫さんが「茨木のり子」を取り上げたいとおっしゃった時は、さらに喜びが膨らんだ。茨木のり子もまた、私が大学生の頃に出会い、大好きになった詩人だったからだ。

 大貫妙子と茨木のり子。この背筋のぴんと伸びた二人の女性の組み合わせはとてもしっくりとしたものに感じられた。読書会はまた、私にとっては、30年前の自分に再会することであり、その歳月を更新することでもあった。


筆者

前田礼

前田礼(まえだ・れい) 市原湖畔美術館館長代理/アートフロントギャラリー

東京大学大学院総合文化研究科博士課程(フランス語圏カリブ海文学専攻)在学中より「アパルトヘイト否(ノン)!国際美術展」事務局で活動。アートフロントギャラリー勤務。クラブヒルサイド・コーディネーター。市原湖畔美術館館長代理。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」「ヨーロッパ・アジア・パシフィック建築の新潮流」等の展覧会やプロジェクトに関わる。『代官山ヒルサイドテラス通信』企画編集。著書に『ヒルサイドテラス物語―朝倉家と代官山のまちづくり』(現代企画室)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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