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【公演評】花組ドラマシティ『蘭陵王』

“美しすぎることが罪”――気高き美貌の武将で、凪七瑠海がドラマシティ単独初主演

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『蘭陵王』公演から、蘭陵王役の凪七瑠海=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 花組公演、ロマンス『蘭陵王(らんりょうおう)—美しすぎる武将—』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで11月20日に初日を迎えました(12月4日~10日、KAAT神奈川芸術劇場)。

 蘭陵王は6世紀の中国に実在した人物で、名は高長恭。あまりの美しさに兵士たちの士気が下がらぬよう、仮面をつけて戦ったという伝説の武将です。演じます専科の凪七瑠海さんは、花組生19名を率いたドラマシティ単独初主演となりました。

 凪七さんの品のある持ち味が生き、美しすぎるがゆえにもたらされた悲劇や、演出の木村信司先生独特な演出もあいまって、最後まで圧倒される展開に目が離せません。雅楽師の東儀秀樹さんが楽曲を提供したフィナーレも大きな話題を呼びました(以下、ネタバレがあります)。

高貴さが役に映える凪七瑠海

拡大『蘭陵王』公演から、蘭陵王役の凪七瑠海(中央)=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 舞台の上は曼荼羅が描かれた絨毯やタペストリー風のもので占められ、すでに独特の世界観が漂っています。舞台の隅で語り部となるのは専科の京三紗さん。落ち着きと味わいのある声色が、物語をより一層神秘的なものにしていました。

 オープニングは勇ましく美しい武将の凪七さんがさっそうと登場……ではなく、予想をまったく違う方向から覆す、衝撃の展開から始まりました。

――1500年ほど前のこと、斉と周が争っていた中国で、一人の少年(凪七)が雨に打たれてうずくまっていた。その美しさに魅せられた者たちは、衣服や食べ物を与える代わりに彼を自分のものにし、支配者が変わっても、それは繰り返されていた。ある日、北斉軍の将軍・段韶(舞月なぎさ)は、少年が行方不明の王子・高長恭であることに気づいた。皇室に迎え入れられた高長恭は、武術の腕を磨いて立派に成長。初陣にして皇太子・高緯(瀬戸かずや)の軍を勝利に導く。感激した皇帝(航琉ひびき)より20人の美女と蘭陵の領地を与えられた高長恭は、こうして蘭陵王となったのだ。

 ひざをかかえて座る少年は、あどけない容姿と透き通った歌声がいつもの凛々しい凪七さんと違いすぎて、何度も確認してしまったほど。航琉さん演じる村の長者や澄月菜音さん演じる盗賊から手籠めにされ、「ぼくだけじゃない」と感情をなくしたように歌い続ける凪七少年は、息苦しくなるほど痛々しくてたまりません。美しすぎるがゆえの悲劇は、すでにこんなところから始まっていたのでした。

 王子であることが判明した高長恭は、強いことが生き残る術になると、黙々と武術の鍛錬に励みました。凪七さんは小さな顔と抜群のスタイルで、いたいけな少年から“強くて美しい”武将に変身です。専科に異動して以来、大人の風格と頼もしさを備え、歌唱力もますます向上し、蘭陵王を演じるにふさわしい説得力がありました。

◆公演情報◆
ロマンス 『蘭陵王 —美しすぎる武将—』
2018年11月20日(火)~ 11月28日(水) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2018年12月4日(火)~ 12月10日(月) KAAT神奈川芸術劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:木村 信司

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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