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藤田俊太郎インタビュー(上)

梅田芸術劇場×チャリングクロス劇場、ミュージカル『VIOLET』を演出

真名子陽子 ライター、エディター


拡大藤田俊太郎=冨田実布撮影

 梅田芸術劇場と英国チャリングクロス劇場が共同で企画・制作・上演する新規プロジェクトに藤田俊太郎が演出として参加する。このプロジェクトでは、チャリングクロス劇場の芸術監督トム・サザーランド氏総指揮のもとで企画された作品を、演出家と演出プランをそのままに「英国キャスト版」と「日本キャスト版」を各国の劇場で上演する。

 日本の演出家が英国で作品を発表できる機会を創出し、日本の演劇界、ミュージカル界をさらに活気づけることがこのプロジェクトの意義だと株式会社梅田芸術劇場は説明する。その第一弾となるミュージカル『VIOLET』の演出を藤田俊太郎が担う。

 藤田は単身ロンドンへ渡り、ウエストエンドで数々の作品を手がけるクリエイティブスタッフ、キャストと共に約6週間の稽古を重ね、チャリングクロス劇場で約3カ月間の公演をプロデュースする。

ミュージカル『VIOLET』とは――
 アメリカ南部で暮らす25歳のヴァイオレットは長距離バスに乗って1500キロの旅に出ようとバス停でバスを待っている。幼い頃、薪割りをする父親の斧が飛んできて、顔に大きな傷を負い人目を避けて暮らしていたヴァイオレットは、あらゆる傷を治す奇跡の宣教師に会うために旅に出るのだ。旅の途中、黒人兵士フリックと白人兵士モンティと知り合いになり急接近するヴァイオレット。しかし、「帰り道のバス停で待っている」という二人に別れを告げ、目的の教会へと向かう。そこで宣教師に会い、ヴァイオレットが目にしたのは……。そして帰り道。フリックとモンティに再会するヴァイオレット。そこで起こる出来事とは……。

 今年2月に主人公ヴァイオレットと同じ道のりをバスで旅をした藤田。今回の共同プロデュースにかける思いや、トム・サザーランドとのこと、そしてバスの旅のことなど、今の藤田の言葉を存分に聞くことができた。

良い作品を創ります、僕が責任持ちます

――制作発表会見での藤田さんとトムさんのとても尊敬し合っている雰囲気は、演出家だからこそわかり合えるものがあるのかなと感じました。

藤田:それはあると思います。トムさんのことをすごく尊敬していますし、作品を尊敬しています。そして、今回のプロジェクトにおける関係についても感謝しています。非常に愛の溢れる方で、このプロジェクトに芸術監督という立場でいてくださるので、すごくありがたいです。僕の演出に口を出すつもりはない、でも全面的にサポートします、ということがとても明確です。良い作品を創りましょう、僕が責任持ちますよということがそれぞれの立場ではっきりしています。

――とても良い関係ができているんですね。

藤田:はい。これからぶつかったりするかもしれないけれど、今は物を創るという中でお互いリスペクトしながら進められていて、とても良い状況にあります。その理由はやはり梅田芸術劇場とチャリングクロス劇場の関係の素晴らしさにあると感じています。チャリングクロス劇場のプロデューサーであるスティーブン・レヴィさんと梅田芸術劇場プロデューサーの皆さんがこれまで時間をかけて関係を築いてきた、演劇人として国や状況を超えてつくってきた関係です。対•人で成り立つ演劇ではとても時間のかかる仕事です。

――なるほど。確かに対・人で成り立っています。

藤田:皆さんが築き上げてきたものへの価値がはっきりしていますから、今の幸せな状況に繋がっているのではないでしょうか。会見ではその空気感がよく出ていたと思いますよ。

どういう光と影を演出していくのか

拡大藤田俊太郎=冨田実布撮影

――このプロジェクトの情報を聞いた時、単純にすごいなと感じました。

藤田:わかります。とても具体的で目的がはっきりしている。ちゃんとした実績があるうえで、もうひとつ先に進もう、というプロジェクトです。新しい世界や新しい作品を創っていこうという野心や、演劇に対する愛に溢れていますよね。「すごく幸せなお話をいただいたな、演出したい」と率直に思いました。実際にチャリングクロス劇場へ行ったのですが、素敵な劇場で演出ができることにとても感動しました。きちんと良い作品をつくりたいです。

――良い作品とは?

藤田:シンプルにお客さまが今、この作品を観て良かったと感じられる作品だと思います。同じ台本であっても時代や状況が変わると、まるで見え方や聞こえ方が変わってくる。演出家として思うのは、2019年に、この劇場で、このキャスティングで、このスタッフでやるならば、どういう光を当てれば良いのか、もしくはどういう影を創るか。なにを伝えたいのか、作品が今を映し出す鏡になってお客さまに届けたいなと思っています。

――その光と影というのは、演出をしながら探すんでしょうか?

藤田:まずは台本や譜面から導きだします。『VIOLET』に関しては明確です。ヴァイオレットが顔に傷を負っていることが作品の中での影、であり陰です。そしてその顔の傷が癒やされると思って1500キロの旅をしていくことが光ですよね。最後の曲が光を求めている内容を含んだ曲なんですけれども、その光はヴァイオレットが自分で見出した光かもしれないし、自分が他者と会った経験によってもう一度人生を生きてみようと思った光かもしれない。顔の傷は癒えていないけれど、心の中ではその傷は癒えたという光かもしれない。『VIOLET』では具体的に光、という言葉が出てきます。演出のポイントを光と影という言葉で表現するととても抽象的かもしれませんが。

――演出家というお仕事は、その光と影を明確に提示することなんでしょうか?

藤田:はい。作品のメッセージや焦点を当てるべき場所はどこだろうということを、はっきりさせてカンパニーを導き、そして“かたち”にしてお客さまに届けるということだと思います。

◆公演情報◆
梅田芸術劇場×チャリングクロス劇場
日英共同プロジェクト
ミュージカル『VIOLET』
・英国ロンドン公演/チャリングクロス劇場
プレビュー:2019年1月14日(月)~1月20日(日)
公   演:2019年1月21日(月)~4月6日(土)
・日本公演
ロンドン公演終了後に東京・大阪にて上演予定
公式ホームページ
公式ツイッター
〈藤田俊太郎プロフィル〉
1980年生まれ、秋田県出身。2005年、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。在学中の2004年、ニナガワ・スタジオに入る。2016年まで蜷川幸雄作品に演出助手として関わる。絵本ロックバンド「虹艶(にじいろ)Bunny」としてライヴ活動展開中。主な作・演出作に、『喜劇一幕・虹艶聖夜』(11年)、主な演出作に、さいたまネクスト・シアター『ザ・ファクトリー2 話してくれ、雨のように……』(12年)、『美女音楽劇人魚姫』(15年)『手紙』『sound theaterVI』『Take Me Out』(16年)、『手紙2017』『ダニーと紺碧の海』『sound theaterⅦ』(17年)『Take Me Out 2018』『ジャージー・ボーイズ ザ ミュージカル イン コンサート』(以上18年)。『ピーターパン』『LOVE LETTERS』(17年〜)『The Beautiful Game』(14年)の演出にて第22回読売演劇大賞優秀演出家賞・杉村春子賞、『ジャージー・ボーイズ』(16年)の演出にて第24回読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞、『ジャージー・ボーイズ』『手紙2017』の演出の成果に対して第42回菊田一夫演劇賞を受賞。

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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