メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

無料

凰稀かなめ、『暗くなるまで待って』に出演

オードリー・ヘプバーンも演じた盲目の若妻役に挑む

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大凰稀かなめ=岸隆子撮影

 1966年にブロードウェイで初演されて以来、映画や舞台でも大好評を博したサスペンスの傑作『暗くなるまで待って』が、2019年1月から2月にかけて上演されます。

 主な登場人物はわずか6人。アパートの一室で繰り広げられる物語は、駆け引きやだましあい、そして暗闇での対決など、手に汗握る展開と衝撃のクライマックスが観客をうならせ、その魅力はいまだ色褪せることがありません。今回の上演は、加藤和樹さんと元宙組トップスター凰稀かなめさんを主演に迎え、2009年以来、約10年ぶりの再演となります。

 凰稀さんが演じるのは、盲目の若妻スージー。映画版ではオードリー・ヘプバーンが演じ、日本では彩輝なお、朝海ひかるら宝塚OGがつとめてきた聡明な女性です。公演への意気込みや現在の生活について語ってくれました。

第一印象を大切にしたい

記者:この作品への出演が決まった時の感想をお聞かせください。

凰稀:今まで障がいのある役を演じたことがないので、「これは役者として勉強になるな」と思いました。スージーの盲目は生まれつきではなく事故によるものだけに、深い喪失感もあったことでしょう。それでも屈せず人生に立ち向かう心の強さに共感しました。台本はまだですが、今からとても楽しみです。

記者:オードリー・ヘプバーンの役をされることについてはいかがですか?

凰稀:オードリーは誰もが憧れる可愛くて可憐な女性ですが、この作品ではまた違った魅力があるんですよね。「こんな声を出すんだ」「こんな表情をするんだ」という驚きがあって、この作品がひときわ注目を浴びたことがわかりました。スージーは宝塚の先輩方も演じてこられた役ですが、オードリーとも先輩方ともまた違った、自分だけのカラーが出せたらいいなと思っています。

記者:出演者の中で紅一点となります。

凰稀:イケメンパラダイスですね(笑)。テレビでも活躍されているプロフェッショナルぞろいですので、一緒にお芝居をしながらたくさん学ばせていただこうと思っています。お客さまも目の保養になるんじゃないでしょうか。

拡大凰稀かなめ=岸隆子撮影

記者:『1789 -バスティーユの恋人たち-』(以下『1789』)でもご一緒された加藤和樹さんとは再びの共演になりますね。

凰稀:『1789』の時はお芝居でからむことはなかったのですが、毎回、新鮮なお芝居をされる方だなという印象があります。私のことをいつも「ねえさん、ねえさん」と呼んでくれるんですよ。今回は立ち回りもあって、信頼関係がないとケガにもつながりますので、お互い気をつかわず、良いコミュニケーションをとっていきたいですね。真面目で礼儀正しい加藤さんが、悪党のロートをどう演じるかも今から楽しみです。

記者:お稽古に入るまでに、なにか準備はされますか?

凰稀:家ではアイマスクを着けて過ごすことなども考えています。お稽古では、最初は目が見える状態で固めてから、見えないお芝居へと変えていくだろうと思いますが、やはり第一印象を大切にしたいと思っています。

記者:第一印象とは?

凰稀:私はいつもお稽古初日の本読みで、出演者全員の表情と言葉のイントネーションやリズムなど、すべてを感じ取るようにしています。本読みの第一印象が一番強いですからね。お芝居は言葉に表れない駆け引きも、すべて“その場”で“対”でやらなければ、緊張感も生まれません。

記者:繊細な感覚を大切にされていることが伝わります。

凰稀:最後は暗闇の戦いになり、お客さまにもスージーと同じ世界に入る怖さも体感していただくことになります。難しさもたくさんありますが、徐々にみんなで作りあげていけたらと思っています。

役と私の間には誰も入り込めません

拡大凰稀かなめ=岸隆子撮影

記者:お芝居のどういうところに魅力を感じますか?

凰稀:まったく違う人間になれるところでしょうか。舞台は嘘の世界を本当のように演じられるので、自分自身の人生より断然面白いです。男とか女とか関係なく、自分とかけ離れた役をやるのは楽しいし、なにより芝居をしている時の方が楽なんですよ。

記者:こんな楽しいことはやめらないって感じでしょうか?

凰稀:ほんと、やめたらどうなっちゃうんでしょうねえ。寝込んじゃいそう(笑)。

記者:舞台はよく見に行かれるんですか?

凰稀:行きますよ! ただ、観劇を楽しみながらも「私ならこうするな」「ここはもっと間を取るかも」とか、ついつい考えちゃいます。でも、それによって自分自身もすごく勉強になっていることも感じます。

記者:以前に役と会話するとおっしゃっていましたが、それは今でも続いていますか?

凰稀:はい、どの役とでも会話します。まず疑問に思ったことから始めるんです。「あなたはどこで生まれたの?」「私は神奈川県」「あなたは何が好き?」「私は海の幸が苦手よ」とかね。台本の中で自分と似ているところや境遇を探して、「私たち、ここが似てるよね。でも、こういう感情にはならないんじゃない?」とか、ひとりで勝手に妄想の世界に浸っています。2人の間にはもうだれも入れない(笑)。

記者:(笑)。それはどれくらい続くのですか?

凰稀:千秋楽までには話しきっちゃいます。ある時期から会話が急になくなっていくので、そうなった時には覚えたセリフをすべて忘れるようにしています。

記者:その頃には役と同化しているんでしょうね。スージーとも間もなく会話が始まりそうです。

凰稀:夫のサムはスージーが見えないからといって甘やかしません。笑いに変えながらさりげなく励ましてくれるので、そんな夫婦の間に流れる空気感も大切にしながら演じたいですね。

お客さまが動かす空気を読む

拡大凰稀かなめ=岸隆子撮影

記者:宝塚の本拠地でもある関西での公演もあります。

凰稀:やはり、関西はあたたかいですね。でも、ファンの皆さんが優しく見守ってくれることに甘えてはいけません。だって何度も見に来てくださるんですもの。だからこそ、笑わせたい、泣かせたい、毎回違うことを届けたい。常にそういう気持ちでお客さまと向き合っています。共演者と芝居をするというより、第三者のお客さまも巻き込んで、三角形でお芝居しているイメージがあります。

記者:地域によってやはり反応は違うんでしょうね。

凰稀:東京はじわじわと波うってくる感じで、関西は大波がまとまってくるみたいな感じ。最終的に空気を作り上げるのはお客さまなので、動かないときはホント動きません。だからそこにいくまで結構緊張しますね。『さよなら、チャーリー』では、登場するのが開演して20分後でしたので、袖で芝居を見ながら空気を読んでいました。「あ、波が出てきたな。よし、安心していこう」という感じです。関西のお客さまはかなりわかりやすくて、助けられています。

記者:劇場の大きさによって芝居の違いはありますか?

凰稀:あまり感じたことはないですね。宝塚では大劇場から500人規模のバウホールまで経験しましたが、どんな舞台でも一番遠くの方に届くように芝居をしています。そんな中でも、目線や間の取り方、動き方で、距離を使い分けることもあって、近くの人に訴えながら、遠くの人にも見せるにはどうすればいいかなども常に計算しています。

記者:この作品は絶体絶命のピンチを切り抜けるサスペンスですが、凰稀さん自身はそんな経験はありますか?

凰稀:実は私、運が良いみたいで、トラブルにあったことがないんですよ。反対に、小道具を忘れたトップさんに舞台上でさりげなく渡したり、咳込んでしゃべれなくなった時にこっそりお水を渡したり。助ける方が多かったですね。

自家製の香水でお客さまを夢の世界へ

拡大凰稀かなめ=岸隆子撮影

記者:宝塚を退団して変わったことはありますか?

凰稀:それが、辞めた感覚がいまだにないんです。そもそも私、宝塚にいたのかしらなんて思うこともあったりして(笑)。でも、休みの日にたくさん寝られることには幸せを感じています。目覚ましをかけなくてもいいなんてね! あとは外を普通に歩いていることです。当時は見えなかった道端に咲く小さなお花やきれいな星空を見て、新鮮に感動しています。

記者:ふだんはどんなふうに過ごしているんですか?

凰稀:宝塚時代は寝るだけの家と劇団とレッスン場の3カ所をぐるぐる回るだけでしたが、今は家でゆっくり過ごすのが好きです。外出が嫌いなわけではないんですが、必要なお買い物以外はあまり出かけません。……あ、暗い子みたい?(笑)。

記者:外見の変化もあり、すっかり美しい女性になられました。

凰稀:スカートですね。スース―するのでお稽古では着ないのですが、今は頑張ってはいています(笑)。ヒールの靴をはいたり、ネイルもするようになりましたし、女性としてきれいにしようという意識はあります。

記者:この部屋に入れられた時からすごくいい香りがするのですが、舞台でもつけていらっしゃるんですか?

凰稀:もちろんです! 今つけているのは自分で作った香水なんですよ。宝塚時代から役に合わせてつけていましたし、ショーでも香りを変えていました。靴の裏、手や髪にもつけて、銀橋を渡る時にお客さまにふわ~っと届かせることで夢の世界に浸ってほしいなと、毎回凝っていました。

記者:今はご自分で作られているんですね。

凰稀:自分で作った方が早いと思ったんです。『1789』で使っていた香水が製造中止になったのをきっかけに作り始めて、今は4本のオリジナルがあります。「Luxury Time」が『1789』のマリー・アントワネット。「Time Together」が『銀河鉄道999』のエメラルダス。「Beginning Time」がコンサート。「Meditation Time」は初主演公演の『花・虞美人』をイメージして、改めて作りました。この作品のためにも、今、考えているところです。スージーの強さや愛情、盲目ゆえの繊細さもほしい。でも、あまりにも良い香りだと、まわりの男たちにばれちゃうかな(笑)。

◆公演情報◆
『暗くなるまで待って』
2019年1月25日(金)~2月3日(日) 東京・サンシャイン劇場
2019年2月8日(金)~2月10日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2019年2月16日(土)~2月17日(日) 愛知・ウインクあいち
2019年2月23日(土) 福岡・福岡市民会館 大ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:フレデリック・ノット
訳:平田綾子
演出:深作健太
[出演]
加藤和樹 凰稀かなめ/高橋光臣 猪塚健太 松田悟志 ほか

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

さかせがわ猫丸の記事

もっと見る