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二人を同一画面に収める巧さ

■『俺は善人だ』(ジョン・フォード監督、エドワード・G・ロビンソン主演:一人二役、1935)
 無遅刻無欠勤の実直なサラリーマンのジョーンズが、脱獄した凶悪なギャングのボスのマニヨンと瓜二つであることから起こる悲喜劇を、ジョン・フォードが30年代ハリウッド古典映画の粋を集めたような簡潔、かつスピーディな話芸で描いた傑作。替え玉の替え玉というアイデアや、小心者のジョーンズが最後に見せる大博打などなど、ハラハラドキドキの連続だが、彼が密かに憧れる彼の同僚役の美人ジーン・アーサーが、茶目っ気たっぷりのスクリューボール(変人)・ウーマンを溌剌と演じていて、眼福だ。二人のエドワード・G ・ロビンソンを同一フレームに収める合成画面も完璧な仕上がりで、目を見張る。ジョーンズのカメラ目線の正面ショットにも一驚。

■『暗い鏡』(ロバート・シオドマク監督、オリヴィア・デ・ハヴィランド主演:一人二役、1946)
 社交界で評判の高かった名医が殺害され、容疑者としてルース・コリンズ(オリヴィア・デ・ハヴィランド)が浮上するが、彼女にはアリバイがあった。そんななか、ルースと瓜二つの双子の姉妹、テリー・コリンズが捜査線上に浮かぶが、彼女にもまたアリバイがあり、警察の捜査は難航する。そこで警察は、事件の解明を新進の精神科医スコット・エリオット(リュー・エアーズ)に依頼。スコットはさまざまな心理テストの結果、姉妹の一人がパラノイア/偏執狂を病んでいることを突きとめる。やがて彼女は、正常なほうの姉妹を装ってスコットのオフィスを訪れるが、それを見抜いたスコットも彼女に罠を仕掛け……というツイストの利いた展開にサスペンスが張りつめる。フィルム・ノワールの名匠、シオドマクの手になるスリラー映画の逸品だが、本作でも、二人の姉妹を同一画面に収める合成ショットが、鏡の巧みな活用とあいまって出色。ちなみにオリヴィア・デ・ハヴィランド(1916~)は、ヒッチコックの『レベッカ』などでヒロインを演じたジョーン・フォンテイン(1917~2013)の姉だが、この東京生まれの美人姉妹は、瓜二つというほど酷似してはいない。またこの姉妹が不仲であったことは、語り草になっている。

■『古都』(中村登監督、岩下志麻主演:一人二役、1963)
 川端康成の同名小説を原作に仰いだ、端正で優美なフィルム。

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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