2018年12月12日
2018年10月25日、公益財団法人日本相撲協会(以下、協会)は、高らかに暴力の追放を宣言し、全世界に約束した。しかし、わずか2か月後、早々に角界の信用と信頼を揺るがす大失態がまた起きてしまった。
2017年、秋巡業中の酒席の場で貴ノ岩の態度をめぐり、第70代横綱日馬富士がカラオケのリモコンで殴打したことが九州場所中に発覚した。貴ノ岩は2場所全休、日馬富士は診断書を提出して休場したのち、引退する事態となった。
あれから1年後、被害者だった貴ノ岩は冬巡業中に泊まったホテルで、付け人の三段目貴大将が風邪薬を忘れ、言い訳をしたことで暴行に及んでしまった。理由としては身勝手かつ軽率だ。
問題なのは、会見で師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)が「飲まなければならない薬」と言った風邪薬を付け人に持たせたことだ。普通は服用する本人がカバンの中に入れるなど、自己管理するもの。それを付け人に押しつけ、明け荷に入れておくよう指示を出していたのだろう。
被害者となった貴大将は自分にも非があると認めた。なぜか母親までコメントする展開となったが、彼らに非はないはずだ。風邪薬を1回服用しそこねただけで、命にかかわるとは到底思えない。
また、貴ノ岩が暴行前の夕食でビール1杯を飲んでいるようでは、風邪をひいた自覚がないと言われても仕方がない。要は会見で述べたように「自分の気持ちの弱さと自覚が足りなかった」のではなく、「自分に甘過ぎる」だけに過ぎない。これでは、三役にあがれるはずもない。
問題発覚後、千賀ノ浦親方や八角理事長(第61代横綱北勝海)は慰留したが、本人の意志が固く、責任をとる形で引退を決断した。
これに伴い、2019年初場所の番付にも大きく影響を与えそうだ。すでに番付編成会議を終えており、貴ノ岩が位置する予定だった前頭の何枚目かが空欄になってしまうかもしれない。仮にそうなると、2007年九州場所以来の非常事態となってしまう。
角界が暴力問題を解決できない根源を2つあげておきたい。
まず、稽古。四股、すり足、また割り、鉄砲といった基本動作のほか、「三番稽古」、「申し合い稽古」、「ぶつかり稽古」といった相手力士を必要とするものがある。このほか、第58代横綱千代の富士が巡業先の土俵下で、次の場所以降に対戦が考えられる力士を研究したように、相手の長所と短所を見抜く「見取り稽古」もある。
これらの稽古のうち、暴力につながるものが
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