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ソニン、『マリー・アントワネット』出演中

幸せな瞬間がない役だけど、役者としては充実している

真名子陽子 ライター、エディター


 

拡大ソニン=岸隆子撮影

 ミュージカル『マリー・アントワネット』が名古屋公演の後、2019年1月1日から15日まで、梅田芸術劇場メインホールで上演される。9月に福岡からスタートし、東京、名古屋を経てようやく最終の地、大阪へやってくる。2006年に日本で初演を迎えた本作は、楽曲が追加され、演出も新たに生まれ変わった「新演出版」だ。王妃マリー・アントワネットと庶民マルグリット・アルノー、二人の“MA”。そのマルグリットを演じるソニンの取材会が行われた。

自分の目で真実を見る力を問われている

拡大ソニン=岸隆子撮影

記者:演じているマルグリットは作品の中で唯一架空の人物です。マルグリット役を演じてみていかがでしょうか?

ソニン:とても難しい役だと感じています。架空の人物ですが、実在した貧困に喘ぐ民衆の一人としてリアルに演じなければいけないですし、この作品のフィクションであるドラマをつなげていくのはマルグリットです。そして、物語のいろんな箇所に込められているメッセージをお客さまに提示するのもマルグリットの役目なんです。民衆の狂気や恐怖政治などが前面に出ている作品ですので、マルグリットが民衆の一員としてストーリーを最後までお客さまと一緒に運ばないといけない。そういうところで難しさを感じています。

記者:もうひとりのMA、マリー・アントワネットについては?

ソニン:これまでマリー・アントワネットはいろんな作品に登場していますが、この作品のマリー・アントワネットは一番感情移入できるのではと思います。マリー・アントワネットがフランス革命に巻き込まれた犠牲者であるということが今作では描かれています。民衆にとって受け入れられない所もたくさんありますが、それよりも一人の人間として、女性として、母親としてマリー・アントワネットが多く描かれています。とても新鮮に感じられるんじゃないかなと思いますね。

記者:メッセージを伝えていく役だということですが、それはどんなメッセージなんでしょう?

ソニン:すごくいろんなメッセージが潜んでいて、観る人によって響くポイントは違うと思います。例えば、1枚の絵を見たときにいろんな想像をされると思うんです。それは人によって違いますよね。そういう芸術的な見方ができる作品だなと思います。その中で、皆さんに感じていただけると思うことは、自分の目で真実を見る力――現代にも通じると思うのですが、ゴシップやフェイクニュースなども含めていろんな情報が行き交う世の中で、あなたは何を信じて、どういう物差しで自分の心の中を図っていきますか……。そういう提示をしている作品で、それはお客さまに必ず感じていただけることじゃないかなと思っています。そして、そのメッセージを皆さまに伝える役をマルグリットは担っています。

女性と男性の反応はまるで違う

拡大ソニン=岸隆子撮影

記者:福岡公演と東京公演を終えられて、お客さまの反応などはどのように受けとめていらっしゃいますか?

ソニン:観に来てくださった方の感想を聞くと、これほどまで違うんだと驚くくらい感想がさまざまなんです。それは、いろんな見方ができるからだと思います。濃厚で強いメッセージがたくさん組み込まれているのですが、ミュージカルなのでシンプルにエンターテインメントとして楽しむこともできますし、物語に入り込もうとして沼のように奥深くまで入っていくこともできます。そこがおもしろいところだなと感じています。二人の女性の話で、男性からすると嫌な部分もあると思うのですが、女性特有のウェットな部分が生々しく伝わってきますし、そこを女性はすごく感じ取るみたいです。観終わった後、目をパンパンに腫らして、こんなに嗚咽しながらミュージカルを観たことがないという方もいらっしゃいました。女性には特に響く作品じゃないかなと思いますし、女性と男性の反応はまるで違いますね。

記者:それはどんな風に違うんですか?

ソニン:割と男性はさっぱりした感想が多いかな……。いろんな感情がわかるから、女性は目を背けられないですよね。はまってしまって揺さぶられるんだと思います。演じている私たちは心身ともに大変です。役者としてはそれがやりがいなんですけどね。

自然の中でエネルギーチャージしないと

拡大ソニン=岸隆子撮影

記者:マルグリット役を演じるために、体力面やメンタル面で意識していることはありますか?

ソニン:睡眠や栄養、喉の管理などはどの公演でも気をつけています。ただ今回のマルグリットは出番が多くてずっと歌っていますし、すごくパワフルです。だから喉の管理は今まで以上に気をつけていますね。今までと違ってメンテナンスしているのは、心です。ロングランなので、後半になると精神的に復活していないことに気づくんです。だから、自然があるところへなるべく行くようにして、エネルギーチャージをしていました。太陽の光を浴びるようにしたり、塩風呂に入ったり、アロマが好きなので部屋でセージを焚いたり……どこまで効果があるのかわからないですけどね(笑)。

記者:精神的な負担が大きいんですね。

ソニン:マルグリットは1mmも幸せな瞬間がないんです。マリー・アントワネットはフェルセン伯爵からの愛に満ち溢れていますが、マルグリットは笑う瞬間がほとんどなくて、口角を上げたとしてもそれは憎しみなんですよね。笑顔がないので、役といえども負のエネルギーをずっと使っていると、やはり少しずつ体にも負担がかかるんだなと感じました。役と同化しているということだと思うのですが、なるべく笑うようにしたり、リラックスするように意識しています。

記者:そういう経験は初めてですか?

ソニン:今までも暗い役は多かったのですが、ここまで幸せの瞬間が1mmもない役は初めてです。やはり人を憎むことはすごく良くない“気”だと思うんです。怒ることはあっても憎むことはないじゃないですか。常に許す心を持つことをモットーにしているので、普段にないことをやるのはこんなに大変なんだと感じています。でも、すごくいい役ですので、役者としては充実しています。

◆公演情報◆
ミュージカル『マリー・アントワネット』
2018年9月14日(金)~9月30日(日) 福岡・博多座
2018年10月8日(月・祝)~11月25日(日) 東京・帝国劇場
2018年12月10日(月)~12月21日(金) 名古屋・御園座
名古屋公演ホームページ
2019年1月1日(火・祝)~1月15日(火) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
大阪公演ホームページ
[スタッフ]
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出:ロバート・ヨハンソン
遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」より
[出演]
花總まり/笹本玲奈(Wキャスト)、ソニン/昆夏美(Wキャスト)、田代万里生/古川雄大(Wキャスト)、吉原光夫 ほか
※田代万里生は福岡、東京のみ出演
笹本玲奈インタビュー
古川雄大インタビュー

筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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