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『まんぷく』に違和感。塩づくりは男だけの仕事?

木村涼子 大阪大学大学院人間科学研究科教授

安藤サクラのもったいなさと性別分業

 物語は、今はまだまだ戦後の混乱期。萬平たちは彼の発案で塩づくりをしていました。その後、塩づくりに加えて栄養食品の開発へと、モデルとなった安藤百福の発明人生を追う形で物語は進行しています。

 楽しく見つつも、このドラマがズッポリ性別役割分業に陥っていることが、実はだんだんと気になってきています。「もらい泣き、もらい笑い」が繰り返され、他者(=萬平)を人生の柱とする主題歌の歌詞が嫌な予感を誘っていましたが、これまでのところ主題歌通り、ヒロイン福子は、萬平さんの才能と情熱に惚れ込み、彼をサポートすることが何よりも喜びだと繰り返し表明する女性です。実際彼女がすることは、萬平の仕事の「内助の功」というべき行動のみです。彼女の人生は、彼女のものというよりも、彼女が選んだ萬平さんのためのもののようにみえます。

 ただ、朝ドラのヒロインは「女だてらに」何かを成し遂げる女性も多く取り上げられており、そういうパターンのみであれば、現実から乖離し、視聴者の共感も得にくいことでしょう。今期の朝ドラは、愛する夫の志や才能を支えんがために、ふんわりした優しさとともに苦労を耐える力があり、夫の事業にとってヒントとなる知恵をも持つ女性の人生を、ポジティブに明るく描くことが中心となるのでしょう。それについては納得できます。

 とはいえ、今のところ、カンヌでパルムドールを受賞した『万引き家族』でその演技が絶賛された、安藤サクラの引き出しの多さを使いきれていないことが残念です。いつも、まるで判で押したような恵比寿顔のニコニコとした表情とゆっくりほんわかした話し方が続きます。こうした一本調子では、夫を支える女性の多面性や魅力を十分に描けていないと、不満を感じることも確かです。

 安藤サクラがもったいないというのは、ドラマ全体の女性の描き方に関連します。ヒロインの役柄が「内助の功」タイプであることは良いとしても、

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筆者

木村涼子

木村涼子(きむら・りょうこ) 大阪大学大学院人間科学研究科教授

1961年生まれ。1990年、大阪大学大学院人間科学研究科博士課程単位取得退学。大阪大学大学院人間科学研究科教授。博士(人間科学)。専門は、近代日本におけるジェンダー秩序、ジェンダーと教育研究など。『<主婦>の誕生――婦人雑誌と女性たちの近代』(吉川弘文館)、『学校文化とジェンダー』(勁草書房)など著書多数。