多くの日本人女性がモラハラ教育の中で育っている
2018年12月18日
女子・浪人受験生の「合格者判定改ざん問題」が発覚した順天堂大学が、大きな批判を浴びています。順天堂大学は既に2018年12月初旬に改ざんがあったことは公表していましたが、この時は東京医科大学の類似ケースとして見なされていました。
ところが、第三者委員会の報告書が公表され、順天堂大学が、「女性の方が(中略)コミュニケーション能力が高い傾向があり、また、大学入学後において男性側の成熟が進み、(中略)解消される傾向があることから、(中略)大学入試時点における女子受験者に対する面接評価の補正を行う必要があった」と説明したところ、「コミュ力」がTwitterのトレンド入りするほど、瞬く間に批判の渦に巻きこまれました。
入学試験制度というのは「能力の高い者を選抜するために行う工程」であって、能力が高いことを理由に減点するという行為は、もはや「入学試験制度の破綻」とすら言えます。そうまでして必死に女性を差別しようという大学の姿勢に、女性や受験生に限らず、良識ある人々が驚き呆れ怒るのも当然です。
順天堂大学は、自校のアドミッションポリシー(入学者受入方針)で「柔軟性と協調性を備えた高いコミュニケーション能力を有する人」を求めているはずなのに、コミュニケーション能力が高いと減点していたわけです。さらに、学校法人順天堂の「学風」として「出身校、国籍、性による差別無く優秀な人材を求め活躍の機会を与えるという『三無主義』」を掲げているのに性差別をしたことも、火に油を注ぐ要因になりました。言っていることとやっていることが180度真逆です。
さらに、2018年9月に文部科学省によって公表された「医学部の男女別合格率」調査(2013年~18年)で男女差がワースト1位だったにもかかわらず、東京都から「女性活躍推進大賞」の優秀賞を2017年度に受賞していることも発覚しました。「裏で女子に減点していたのに応募する神経が信じられない」と批判されるのも当然です。
加えて、男女のコミュニケーション能力が解消されるという自らの主張を裏付ける「医学的検証を記載した資料」として、米国テキサス大学のローレンス・コーン教授が1991年に執筆した論文を提出したものの、コーン教授は、朝日新聞の取材に対して「私の27年前の論文は、心理的成熟の性差について調べたもので、『コミュニケーション』や言語能力の性差を調べたものではない」と述べたとのことです。
このように、ありとあらゆる点に批判すべき点が散らばっているわけですが、その最大の要因は何でしょうか。おそらく、「男子は後から伸びる」という呪いのような差別的偏見を大人たちから浴びせられ、自己効力感(自分は出来ると信じる気持ち)が著しく低下する実害に被った女性たちが多数いるなかで、順天堂大学がその傷をなぞったからではないかと考えています。
実際、インターネットでは、悲鳴とも言えるような投稿が噴出していました。小学生の頃、大学受験、就職活動の頃だけではなく、働くようになってからも言われ続け、今も現在進行形でへこまされ続けている経験が吐露されていました。本来、伸びるか伸びないかは性差よりも個人差であるはずなのに、エビデンスも無い「モラルハラスメント」で自尊心を傷つける大人たちがそこにはいるのです。
仮に「男子は後から伸びる」のが事実だとしても、それは決して「男子は後から伸びる」という生物学的性質が存在するのではなくて、このような大人たちの偏見・差別・モラルハラスメントによって女子が後から伸び悩むために、相対的に男子のほうが伸びているように見えるだけではないかと思うのです。
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