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ブレヒトの傑作喜劇に安蘭けいが出演/上

笑いとユーモアの中でアイデンティティをめぐる物語『マン イスト マン』

大原薫 演劇ライター


拡大安蘭けい=伊藤華織撮影

 KAAT神奈川芸術劇場とまつもと市民芸術館の初の共同プロデュース公演としてベルトルト・ブレヒト作の『マン イスト マン(男は男だ)』を上演する。冬のカーニバルと題して串田和美が選りすぐりの戯曲に歌やダンスをちりばめエンターテインメントに仕立て、串田が脚色・演出・出演する。

 かつてインドがイギリスの植民地だった頃の英軍隊内の物語。機関銃隊のジップ・ジェス・ポリイ・ユリアのお馬鹿な四人組はチベット征服に向かう途中、寺院で賽銭泥棒をはたらく。しかし、ジップが逃げ遅れてしまう。点呼でジップがいないことが鬼軍曹フェアチャイルドにばれないように必死の三人。そんな三人の前に、食堂の女主人ベグビックに胡瓜籠を運ばされているゲーリー・ゲイが通りかかる。人に頼まれたら断ることのできないお人よしのゲイをジップの代わりに仕立ててはみたものの……。

 人間とは何か。笑いとユーモアの中で、アイデンティティをめぐる物語は、予想もできない方向へ進んでいく。

 食堂の女主人ベグビックを演じる安蘭けい。宝塚歌劇団星組元トップスターで、退団後は数々の舞台や映像で活躍を続ける。安蘭に本作にかける意気込みや串田和美演出への出演について、話を伺った。

串田和美のユニークな発想で生まれる、独特の世界観

拡大安蘭けい=伊藤華織撮影

――安蘭さんは串田和美さんとは以前、『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』の演出・共演でご一緒されていますね。今回再び、串田さん演出作品に出演されると聞いていかがでしたか?

 お話をいただいたときに、串田さんが「私と共演したい」と言ってくださるんだということが嬉しかったです。また、今回の作品では歌やダンスもとり入れたいという話だったので、私も協力することができたらと思ってお受けしました。

――『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』でご一緒したときは、どうだったのでしょうか。

 信頼できるし尊敬できる演出家の方だな、と思いました。「固そうだけど柔らかい」という印象で、それは作品創りにおいてもそうでした。串田さんの作品創りはとても不思議な感覚でした。『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』は人形劇をどういう形で舞台にするか、串田さんも悩まれていて、稽古の前半2週間はワークショップをやっていたんです。『えっ、台本はどうなるんだろう?』と思っていたんですけど、そこから串田さんのユニークな発想が生まれてきました。串田さん独特の世界観があるんだなと思って、それを演じることが面白かったですね。串田さんのような演出家は、他にはなかなかいらっしゃらないと思います。

――どういうところが他の演出家と違うのでしょうか。

 『ひょっこりひょうたん島』はもともと人形劇としてあるものだから、ある程度出来上がっているものだろうと思って稽古に入ったら、全然そうじゃなかった。串田さんが現場に入ってゼロから創っていかれたんです。最初にいただいた台本はあらすじだけが書かれているもので、「これから『ひょっこりひょうたん島』を創ります」という歌を入れたり、普通の演劇とはまったく違う発想で積み上げていったんですね。串田さんのアイディアでどんどん変化し、出来上がっていきました。「これからどうなっていくんだろう」と少し心配な気持ちにもなりましたが、そこに信頼を寄せて一緒に創っていく感覚が、楽しかったですね。

◆公演情報◆
『Mann ist Mann マン イスト マン』
2019年1月26日(土)~2月3日(日)  KAAT神奈川芸術劇場
2019年2月8日(土)~2月13日(日) まつもと市民芸術館
2019年2月23日(土) ホクト文化ホール 中ホール
2019年2月27日(水) 伊那文化会館 小ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:ベルトルト・ブレヒト
翻訳:小宮山智津子
脚色・演出:串田和美
企画監修:白井晃
[出演]
安蘭けい 串田和美
海老澤健次 大鶴佐助 小椋毅 近藤隼
坂口杏奈 鈴木崇乃 武居卓 チョウヨンホ
深沢豊 細川貴司 万里紗 山口翔悟(以上50音順)
[演奏]
Dr.kyOn[ピアノ] 徳武弘文[ギター] 木村おうじ純士[ドラムス&パーカッション]
〈安蘭けいプロフィル〉
1991年、宝塚歌劇団に首席で入団。2006年、星組男役トップスターに就任。2009年に退団後も数多くの舞台に出演。『サンセット大通り』『アリス・イン・ワンダーランド』の演技で第38回菊田一夫演劇賞を受賞。最近の主な出演作品は、『民衆の敵』『レインマン』『リトル・ナイト・ミュージック』『リトル・ヴォイス』『白蟻の巣』『スカーレット・ピンパーネル』など。
安蘭けい公式ホームページ

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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