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[2018年 本ベスト5]AI/ITへの疑問

『デジタルネイチャー』、『技術の完成』、『さよなら、インターネット』……

福嶋聡 ジュンク堂書店難波店店長

F・G・ユンガーが予言したAI/ITの支配

 「〈テクノロジー〉の側面から〈近代〉を乗り越える」ことを目指す落合と対極的に、フリードリヒ・ゲオルク・ユンガーは、『技術の完成』(今井敦、桐原隆弘、中島邦雄監訳、F・G・ユンガー研究会訳、人文書院)で、テクノロジー=技術そのものに批判的・否定的な目を向ける。

 ユンガーによれば、技術の本質は、収奪である。

 技術は大地を情け容赦なく自らに従わせ、資源を機械システムの中に無理やり押し込める。技術は、多くの人がそう信じているように「豊かさ」を生み出すものでは、決してない。技術が「生産」と呼ぶものは、資源を掘り起こして目的に即した形に加工することだからだ。技術の進歩は、地球規模で組織化された収奪を結果し、損失経済はもはや持ち堪えられない規模にまで至る。

 『技術の完成』が書かれたのは20世紀半ばであり、二度の世界大戦と原子爆弾の登場の時代である。テクノロジーの脅威は、現代以上に目に見えるかたちで眼前にあったかもしれない。だが、「完成の域に達したときに技術がこれまでなかったほど包括的かつ強力に収奪する」とユンガーが予言する「未来」を、今現にぼくたちは生きているのではないか?

 “放射線はすべてを汚染する。この汚染は、今日明日のみならず、何千年もつづく。放射性廃棄物が置かれたところは、人間が住むことのできない土地となったのである”

 ユンガーが描く風景は、半世紀以上前のものではない。「3・12」を経験したわれわれは、その風景を、今再び原子爆弾投下の時代と共有しているのだ。

 本書の糾弾は、そうした、現代のエコロジーの先駆に留まらない。 ・・・ログインして読む
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筆者

福嶋聡

福嶋聡(ふくしま・あきら) ジュンク堂書店難波店店長

1959年生まれ。京都大学文学部哲学科卒。1982年、ジュンク堂書店入社。サンパル店(神戸)、京都店、仙台店、池袋本店などを経て、現在、難波店店長。著書に『希望の書店論』(人文書院)、『劇場としての書店』(新評論)など。

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