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客前で大声で長々と叱らないで。外国の従業員を

日本のお店で何回も見た悲しい光景。あれは教育じゃない。怒りです

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

国立国楽高等学校の定期演奏会(筆者提供)

世界各地を飛び回るのは楽しいけれど…

 随分、久しぶりになります。

 こういった時は、だいたい本業の音楽が忙しかったということで、大目に見て頂きたい。各地に行って、公演してきました。

 ソウル、プサン、ジョンジュ、ポリョン、大阪、京都、東京、他いろいろ、車に乗ったり、飛行機に乗ったり、新幹線に乗ったり、KTXに乗ったり、公演ホールに行ったり、ホテルチェックインしたり、チェックアウトしたり……。毎日毎日、かばんパンパン かばんパンパン……。

 こんな活動、生活を20代の時から続けている。みんなに言われる。「いいなあ、好きな仕事で来て、好きなところに行けて」

 はい、そうです。ありがとう! 楽しいですよ。ホンマに。

 けど、やれるなら、やってみて。好きなことをするまでが、大変だったんだから。

 きびし~い高校に通ったのです。

 韓国国立国楽高等学校。

 日本のマスコミで、よく厳しい学校を卒業した方たちが集まって、厳しかった自慢を語り合ったりしていますが、んっ!??

 私からすると、何が? それの? 何が?

 楽しそう! 全然、厳しく聞こえません。

 なので、少しお話しますね。

音楽だけじゃない国立国楽高等学校

 韓国国立国楽高等学校、名前も長い……

 韓国語の発音も、すごく難しく、クンリンクガクコドゥンハッキョ、言えるかっ!!

 この学校、前身は李王朝雅楽部養成所という偉い所だったんです。しかも全校生徒が奨学生で、卒業すると少しのお給料ももらえました。なので、ちょっとした公務員みたいな感じになるのです、高校生から。緊張!

 1学年、120人で2クラス。計360人。女子が9割で、男子が1割。まるで女子高。高校入試の倍率は私の時で、およそ4倍。現在はもっとすごいらしい。

 なぜこの高校が人気なのかは、大学入学率が90パーセントを超えるから。全学科と楽科が1番だった優秀な子たちが全国から集まってきます。

 学校生活は、毎朝5時くらいに家を出て、夜11時くらいに帰宅。こんな日々が3年間。

 何をしているかというと、朝は、学校に着いて、授業の前に、専攻の実技の自主練を1~2時間する。で、授業の前の予習授業というのがあって、それを2時間くらい受けて、本授業を午前8時くらいから午後5時くらいまで受ける。そのあと補習授業というのがあって、それが終わって、実技の自主練2~3時間くらいして帰宅。

 みんながみんな、こうしていたので、やるしかなかった。

 音楽専門学校なので、音楽ばかりやっていたんでしょ、と思われるが、ぜんぜん……勉強ばっかり。なぜならばそれは大学入試のためである。

 普通の学校の、学科授業が全部あって、プラス、国楽の授業達。

 専攻実技 私はテグム、それと、国楽概論、西洋楽理論、聴音、民謡、パンソリ、韓国舞踊、タンソ(小さな韓国伝統笛)、合奏、チャンゴ、などなど、覚えている。中間や期末テストの期間が長かったーー。

 1日、2~4科目テストで、約2週間くらいかかったと思う。なので、その2週間、いや、その何週間前からは、地獄だった、とりあえず眠たかった。

音楽の天才が集まる高校

高校1年の時、クラスが合唱大会で優勝したので記念撮影(筆者提供)
 これ以上にしんどかったのが、上下関係!

 先輩後輩、OB、先生とかの、縦の社会が非常に厳しかったので、もう大変!! 体罰なんかは当たり前!!

 しかも私は言葉がまだ上手ではなかったので、自分がなぜ罰を受け怒られているのかも、ハッキリわかった状態ではなかったことが多かった……。

 日本から行ったので、少しはスペシャル待遇ではあったででしょうが、逆に日本から来たので、裏スペシャル待遇もたくさんいただいた。

 ただ、やはり何と言っても音楽の実力はすごかった。全国から、集まった音楽の天才たちが集まった、高校である。

 入ったばかりの冬、授業中に教室にあるストーブで沸かしている、やかんが、ピーッ!! 普通ならみんなしてびっくりしたりしますが、この学校は、その途端先生が、「はい、これ何の音?」。

 そしたら、みんなが、「D(レ)!!」。

 私は一刻もはやくここから逃げようと思ったものである。

客前で、大声で、日本語で、長々と…

 大阪で育った私は、この高校に、海外からは初めて入ったようである。いまだに誰も入ってないらしいので、最後であるらしい。初めての海外からだったので、むちゃ苦労しました。

 それで思い出した!! 先日、日本で思った。

 日本の繁華街には、海外の人が増え、そして海外の方たちがたくさん働いてた。

 で、そこで、何回も目にしたことだが、そんなお店の中で、日本の従業員たちが外国の従業員たちを、客前で叱っているの、しかも大声で、で、長い……。

 もちろん、現場の教育上、注意することはあるでしょうが、あれは注意とは違うと思う。

 怒っていた。ボロクソに。なんなんだろう? すごく気分が悪かった。

 あれは、教育ではない、怒りだ。

 自分たちの仕事が思い通りにならない怒りだ。

 それは違いますよ。彼らは、違う国で育ち、違う文化を持っているだけなので、時間をかけ、懸命に教えてあげると、ちゃんとできるんですよ!

 まして店内で大きな日本語で怒らないで!

 お客の大半は外国人だから、日本語分からんよね、それをいい事に。もし聞き取れたら、すごい問題になっていますよ。

 しかも、日本人の客は、知らんふりや……最悪や……。

 あのね! 海外から働きに来た人たちにも、人権があるのです。

 国に帰れば、家族もいるのです。

 家族のために遠い外国からきて、汗水たらして言葉もよくわからんのに一生懸命に働いているのです。

 あなたらより、ず――っと、偉いんです!

 もしね、日本より物価がもっともっと高い、スイスやヨーロッパの国々で日本人が出稼ぎに行かねばならなくなって、一生懸命やってるのに、その店のその国の従業員に、要領が悪いと、酷く酷く罵られ怒られている――。

 それを見たら、気分いいですか?

間違いは正したいのです。ただ、それだけ

 外国人労働者受け入れ問題もそう。

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