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[2018年 映画ベスト5]優れた演出と脚本

『寝ても覚めても』、『ビューティフル・デイ』……

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(ソフィア・コッポラ)
 南北戦争末期の南部の女子寄宿学園にかくまわれた北軍負傷兵が引き起こす、戦慄的な愛憎劇が、細心かつ優雅に紡がれる逸品。ドン・シーゲル監督の強烈な傑作、『白い肌の異常な夜』のリメイクだが、濃厚な官能性が息づくシーゲル版とは対照的な、ソフィアならではのエレガントな美意識に裏打ちされた静謐な画調が奏功。2018・3・22、同・3・27、同・3・28の本欄参照。
必見!『ビガイルド 欲望のめざめ』(上)――“女の園”の戦慄的な愛憎劇
必見!『ビガイルド 欲望のめざめ』(中)――細心の画面づくり、衣装デザイン
必見!『ビガイルド 欲望のめざめ』(下)――ドン・シーゲル版との比較

『女と男の観覧車』(ウディ・アレン)、あるいは『つかのまの愛人』(フィリップ・ガレル)
 前者は、やや太目の40代の人妻、ケイト・ウィンスレットが若者との不倫に身を焦がし、ついには正気を失いかける……という、82歳のウディ・アレンが撮った怪作メロドラマ(長編49作目)。アレン自身の卓越した脚本、名手ヴィットリオ・ストラーロのカメラによる色感豊かなビジュアル、メロウな往年のポップスが混然一体となり、見応えあるビターな1本に仕上がった(“人生いかに生くべきか”の答えは得られないが)。アレンの力量(とりわけ脚本力)にあらためて感嘆。2018・8・16、同・8・21、同・9・06の本欄参照。後者は、父・娘・父の愛人をめぐる三角関係が、テンポ良く、しかも濃密に展開される76分の小傑作だが、前作『パリ、恋人たちの影』(73分)で一変したガレルの簡潔な作風に、目を見張る。名手レナート・ベルタのモノクロ撮影も、相変わらず絶品。2018・9・10の本欄参照。
必見!『女と男の観覧車』 ヒロインの危うい魅力――不倫、恋、嫉妬、放火癖……目を見張るような<起承転転>
必見!『女と男の観覧車』 カメラ、BGMの冴え――7色のマジックのような画づくり、メロウな往年のポップス
必見!『女と男の観覧車』 アレンについての補遺――警句めいたセリフやジョークのキレ、役者アレンの滑稽さ
必見!『つかのまの愛人』 簡潔で鮮烈な恋愛劇――説明を省いた意表を突く場面、一人の男をめぐる二人の女のライバル関係……

+アルファ

『犬ヶ島』(ウェス・アンダーソン)
 近未来の日本が舞台の、少年と犬たちの冒険を精緻に――4年の歳月をかけて!――映像化したストップモーション・アニメの秀作。登場人物(動物を含む)を真正面や真横から撮るなどの、ウェス・アンダーソンの<作家性>が本作でも全開し、見る者を幻惑する。2018・07・02、同・07・05、同・07・06の本欄参照。
必見!『犬ヶ島』は、国辱映画か?(上)――近未来の日本が舞台のSF冒険映画
必見!『犬ヶ島』は、国辱映画か?(中)――ディストピアとしてのメガ崎市など
必見!『犬ヶ島』は、国辱映画か?(下)――ウェス・アンダーソンの作家性再説など

犬ケ島」から 〓2018 Twentieth Century Fox拡大『犬ケ島』=2018 Twentieth Century Fox

『きみの鳥はうたえる』(三宅唱)
 モラトリアム期の若者たちの生きる単調な日常のなかに、不意にぬっと顔を出す悪意や暴力、そして男女の屈折した機微。その不穏さ・痛覚・切なさを繊細につかまえる三宅唱の才能に脱帽。書店の店長・萩原聖人が柄本佑に言う次のセリフが『万引き家族』(是枝裕和、後出)への異論にも思えた――「〔1000円の本を売って店に入るのは、ざっと100円だ、と言ってから〕、1冊万引きされたら、10冊売ってはじめて利益が±ゼロになる。ほんとに経営に響くんだよ」。人物らの背景にソフトフォーカスで映る函館郊外の街並みが目にしみる。

『モリのいる場所』(沖田修一)

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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