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プロは過酷な試練を乗り越えて来とるんじゃ!

ゴルフも韓国伝統音楽も、一つを目指す心は同じ。分からないかな~

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

運動場のど真ん中で校舎に向けて…

 数々の授業の中でも、記憶に残っているのが、「教錬」という授業だ。

 教錬とは、1990年代まであった、中高校生が学校で受ける、軍隊の予備教育みたいなもの。

 男子は、教錬服を着て、主にモデル銃M16を持っての整列や行進、匍匐前進。女子は、主に看護や、救急手当ての訓練などを受けていた。

 本国の子たちは、中学から基礎は知っていたみたいで、みんな上手。

 ところが、何も知らない私には、まるで、はじめての軍隊でさっぱり!

 何をどうすればいいか、分からずぶつかったり、こけたりして、みんなから笑われ、邪魔者、のけ者に。あげくの果てに、いつもサングラスをかけ、木でできてるこん棒をいつももっている教錬の先生から目をつけられ、こわいこわい……。

 2か月くらいたった授業終わりに、このサングラスの先生に呼ばれ、「お前はろくに何もできないから、罰だ! 次の授業までに愛国歌(韓国の国歌)を、4番まで覚えてこい!!」と。

 えらいこっちゃ!! えっ? 国歌って4番まであるの!!?? 知らなかった……。

 ただでさえ勉強や楽器の練習で忙しいのに、そんな時間……

 なんとかして、僕は次の授業までに必死に覚えたが、そんなに自信はなかった。

 授業が終わり、一人、運動場のど真ん中に立たされた。大声で校舎に向けて愛国歌を4番まで熱唱した! 途中で歌詞を間違えるたびに、木のこん棒が宙を舞う!

 普通は4分くらいで終わる歌を、倍くらいかかっただろうか。

 その授業はちょうどお昼休みの前の授業で、校舎の窓やベランダから、全校生徒が首を出して見ていた。初めはみんな笑っていたが、歌い終わると、拍手喝采!!

 人生で一番恥ずかしかった。

 この授業の後からは、僕は宇宙人ではなくなった。少しだけど、仲間になれたのだ。

 こん棒のサングラス先生のおかげで。演出だったとしたら、愛があり、なかなか渋くて、すごい先生だ。

 頭のいい人たちが、お金稼ぎばかりに走っている昨今、もうそろそろ、頭のいい人たちが、教育者や文化人、良い政治家にもなってほしい。

 そうじゃないと、自分のためにだけに、生きてしまう世の中になってしまうから。

 だから、特にね、いい教育者を増やすためには、一つの方法として、先生の給料を大幅にアップする。そうすれば、多くの人たちが先生を尊敬し、志願し、いい人材もたくさん集まる。今のシステムでは可哀そう、反比例してる。そら無理でしょう。


筆者

ミン・ヨンチ

ミン・ヨンチ(閔 栄治) ミュージシャン 韓国伝統音楽家

大阪生まれ。幼少の頃からブラスバンドやドラムを経験し、高校から韓国へ。旧李王朝雅楽部養成所であった国立国楽高等学校に入学、ソウル大学音楽学部国楽科卒。1992年サムルノリ競演大会個人部最優秀賞。1992年国楽室内管弦楽団「スルギドゥン」に入団。1993年スーパー・パーカッション・グループ「PURI」創団メンバー。イ・ムンセ(歌手)のテレビ番組にも出演。現在も韓国伝統音楽とジャンルの違う音楽とのコラボレーションに活動中で、2009年に立ち上げた公演「新韓楽」ではジャズとコラボ―レーションした。日韓両国で数多くの公演。アルバム「HANA」(2015年/ユニバーサルミュージック・ジャパン)をリリース。ライブでは日本全国3万人を動員。国楽管弦楽の作曲にも力を入れ、2014年韓国文化芸術委員会で作曲賞受賞。「大衆に楽しんで聞いてもらえる楽曲作り」を目指す。

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