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関西発のノンバーバルのショー『KEREN』開幕

日本文化と最先端の映像が一体化し、大阪がブロードウェイに!

米満ゆうこ フリーライター


拡大『KEREN』制作発表会見=桑島写真スタジオ

 大阪城公園に、劇場型文化集客施設COOL JAPAN PARK OSAKA が誕生する。劇場の中で最も大きなWWホールは2月25日に幕を開け、そのオープニングを飾るのは、ノンバーバルのレビューショー『KEREN』だ。国内外の一流のクリエイターが集結して作られた舞台は、関西発のオリジナル作品で、しかもロングラン公演が予定されている。先日、大阪市内で制作発表会見が開かれ、クリエイターらが作品について語り、『KEREN』の一部が披露された。

日本文化と最先端の映像が一体となった豪華絢爛なショー

 今は〝けれんみ〟の言葉で知られる通り、『KEREN』とは、歌舞伎の世界で奇抜な演出を意味する演劇用語だ。『KEREN』をキーワードに、舞台は京都、大阪、奈良などの近畿地方を行き来し、昭和元禄や平成を時代背景に、ダンス、剣舞、殺陣、歌舞伎、日本舞踊、屋台崩しなどの日本文化と、最先端の映像が一体となり、豪華絢爛なショーが繰り広げられる。脚本・演出は、『笑っていいとも!』『俺たちひょうきん族』などの大ヒット番組の構成を手掛け、舞台では『ダウンタウン・フォーリーズ』、市村正親ひとり芝居『市村座』など数多くの作品で知られる大御所の髙平哲郎だ。さらに、振付は、ブロードウェイ・ミュージカル『コーラスライン』のオリジナルキャストで、2017年にトニー賞を受賞したバーヨーク・リー、タップダンスの振付は、映画『座頭市』でタップの振付・出演をし、日本のタップダンスの第一人者とされるHIDEBOH、殺陣には映画『キル・ビル』の出演・殺陣指導やサムライ・アーティストとして国内外で活躍する島口哲朗の、一流どころが髙平の呼びかけで集まった。また、カナダのモントリオールを拠点とし、スーパーボウルのハーフタイムショーやオリンピック、安室奈美恵、マドンナらのコンサートも手掛けるビデオコンテンツクリエイターのモーメントファクトリーが映像を担う。

ブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』と共通

拡大『KEREN』より、「元禄花見踊り~平成かぶき踊り」=桑島写真スタジオ

 制作発表では平成ノブシコブシの吉村崇とロバータが司会を務め、二人のアナウンスで登壇した、ニューヨーク在住の演劇ジャーナリスト影山雄成は、「ブロードウェイには41の劇場がありますが、『KEREN』はその中で一番ヒットしているミュージカル『ハミルトン』と共通する。『ハミルトン』はアメリカの建国の父を描き、アメリカの文化や歴史を尊重する作品で、『KEREN』もそう。『KEREN』の踊りのタイトルに『What a wonderful cool Japan』(何て素敵なクールジャパン)とありますが、春夏秋冬を通して日本を愛でて尊重するのがこの作品なのです」と熱く語る。

 ここで、『KEREN』のオープニングを飾る『元禄花見踊り~平成かぶき踊り』のパフォーマンスが始まった。葛飾北斎らの風景画が次々とスクリーンに映し出され、着物姿のダンサーたちがしなやかに日本舞踊を舞う。キャストはダンサーを中心に、オーディションでアンダースタディ(控え)も含め約36人が選ばれたという。中央に立つ演者の「KEREN」という掛け声とともに、彼女たちは着物を脱ぎ棄てて洋装になり、ボブカットに近未来的な衣装を身に着けたダンサーたちが登場する。バーヨーク・リーお得意の『コーラスライン』を少し彷彿とさせるエネルギッシュでスタイリッシュな踊りに変わっていく。和の要素を取り入れたりはせず、そのブロードウェイスタイルを貫いたダンスに胸が高鳴った。

期待と不安の入り交じった構成に

拡大右から、髙平哲郎、HIDEBOH、島口哲朗、モーメントファクトリー=桑島写真スタジオ

 髙平は、「オープニングのダンスは、日本舞踊的で、歌舞伎の元禄花見踊りをそのまま使ったら面白いと思いました。そこから、これも歌舞伎の手法だけど、引抜(ひきぬき)で衣装が変わり、コンテンポラリーダンスになる。これから先、どうなっていくんだろうという期待と不安の入り交じった構成にしている」と説明する。続いて、HIDEBOHは、「『KEREN』は型破りなという意味も含まれています。髙平さんはエンターテインメントの生き字引と言っても過言ではない。色んな舞台のセットは和洋折衷とは違い、とてもオリジナルで斬新に作られている。私も2003年に映画『座頭市』で下駄のタップダンスをしましたが、今回はそれとも違い、剣舞、映像、音楽などが溶け合った新しい世界のタップダンスを作らせてもらっています。大阪がブロードウェイになるほど、芸術性の高いエンターテインメントになると思います」と話す。島口は「各シーンで色味が全然違って、刺激的で不思議なステージになっています。それに立ち回りでどうかかわっていくか。モーメントファクトリーさんとの映像のコラボもあれば、HIDEBOHさんとのコラボもあり、サムライだけではなく忍者など、髙平先生が思うクールジャパンを立ち回りで表現します。多くの人に見ていただきたいです」と期待を込めた。

何でもありが日本。それがクールジャパン

拡大『KEREN』より、「剣舞とタップ」=桑島写真スタジオ

 次に、HIDEBOHと島口がコラボレートした『剣舞とタップ』のパフォーマンスが披露される。剣士に扮したダンサーと、燕尾服を着たダンサーがゆっくりと現れる。津軽三味線の音色に乗って、剣士は刀で空間を切り裂き始め、燕尾服のダンサーはフレッド・アステアのような優雅で軽やかなタップを踏み出す。剣士の「エイヤッ!」という掛け声と刀を振り下ろす音、タップの靴音、津軽三味線の音がリズミカルに調和し、演者のパフォーマンスと音楽の速度がドンドンと増していく。剣士が燕尾服のダンサーに切りかかるが、ダンサーはタップを踏みながらそれをよけて闘ったりと、とにかく粋で格好いい。こんなタップダンスはかつて見たことがなく、その斬新さに唸ってしまう。髙平は「基本的なコンセプトはクールジャパンです。美しい日本やおもてなしの日本など食傷気味の言葉ではなく、外国人や日本人が好きな日本があるはずだという思いを込めました。何でもありが日本で、それがクールジャパン」だと述べていたが、日本人から見ても新鮮で、剣舞とタップの組み合わせは想像すらしなかった。髙平は「観光客の外国人も意識して作った」というが、日本の観客も、そのアイデアに意表を突かれ、自国の文化の良さを改めて発見できるのではないだろうか。

 パフォーマンスが終わり、「HIDEBOHさんのドヤ顔がすごいですね(笑)」という吉村に対し、HIDEBOHは、「こういう形のコラボはなかなかないので、ドヤ顔をしました(笑)。『座頭市』のときは下駄のタップダンスがベースでしたが、今回は洋のタップダンスの世界と剣舞のリズムを取り入れた、新しいスタイルです。島口さんと即興で作りました」と胸を張った。

ペリー・キー、「ドンドロリンダラリン♪」

拡大ペリー・キー(左)=桑島写真スタジオ

 最後に『KEREN』全アジア公式アンバサダーのペリー・キーがゲストとして登場。ペリー・キーとはロバート・秋山竜次が架空のクリエイターに扮する人気シリーズ「クリエイターズ・ファイル」に登場するキャラクターの一人で、〝6000人に1人のアジアスター〟だと称される。『KEREN』のパフォーマンスの感想を聞くと、ペリーは、「ダンス。ジャパニーズカルチャーカンターチートーキー、ドンドロリンダラリン♪」と歌いながら謎の言語で答え、吉村が「最高のパフォーマンスだったそうです」と通訳した。髙平も「とても頼もしいアンバサダーが付いて良かったと思います」とうれしそうだ。ペリーは「トンカンナンチー。アジアナンバーワンホワイトヘア(なんてすばらしいヘア。日本のヘアも変わったな。髙平さんの髪型を真似したい)」と髙平をほめたたえた。

 また、吉村の「日本に来る際はプライベートジェットで来るのですか」という質問に、ペリーは当然のように「潜水艦」と答え場内は大爆笑。その突拍子もない答えに、「すごい!規模が違いますね。スーパースターになるとゆっくり時間をかけて日本に来るんですね」と吉村。キャストやクリエイターとの写真撮影で、ペリーは「アジアナンバーワン、『KEREN』ナンバーワン」と叫び続け、皆の士気を高め会場を盛り上げた。

『KEREN』には邪道やはったりという意味もある

 制作発表のパフォーマンスでは、完全ではないがモーメントファクトリーのきらびやかな映像も背景に使われた。髙平は「映像を見て、やるなと思いました。モーメントファクトリーさんが考えている日本の劇画や妖怪は僕らより詳しい。彼らがイメージする日本は、ちょっと違っていたりもするんですが、『KEREN』という言葉には邪道やはったりという意味もある。それも含めてクールジャパンじゃないかと。宙乗りや歌舞伎などの僕らの考えるアナログと、モーメントファクトリーさんの新しいデジタルが融合してうまくいく」と感じたという。

 ほかにも『KEREN』では、ろくろ首、のっぺらぼうなどの妖怪オールスターが登場するシーンや、HIDEBOH振付の大仏殿の修行僧のタップダンス、アメコミテイストの世界観を取り入れたダンスなどが怒涛のように展開する。休憩なしの1幕もの約70分間があっという間で楽しめるはずだ。影山は「浮世絵や黒澤明の映画、お寿司、忍者なども作品には組み込まれ、日本の文化を押しつけがましくではなく、なじむように伝えられるのではないか」と期待する。関西でオリジナルの舞台が生まれることは多くはないのが現状だ。近年、オシャレなカフェやお店が立ち並び、新しく生まれ変わった大阪城公園界隈で、『KEREN』が関西発の舞台の新星となり、世界中の人々に広がっていくことを願いたい。

◆公演情報◆
2019年2月25日(月)~ロングラン公演 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・演出:髙平哲郎
振付:バーヨーク・リー
タップ振付:HIDEBOH
殺陣:島口哲朗
ステージ・日舞:室町あかね
音楽:仙波清彦・久米大作
ビデオコンテンツクリエイター:Moment Factory(モーメントファクトリー)
宣伝美術:横尾忠則

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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

「三度の飯よりアートが好き」で、国内外の舞台を中心に、アートをテーマに取材・執筆。ブロードウェイの観劇歴は20年以上にわたり、ブロードウェイの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて、現地で取材をしている。

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