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月イチ八百回 独演会を続行中の真打ち春雨や雷蔵

トーキョー落語かいわい【1】一度も休まずこの夏400回に。 達成時は101歳!

鶴田智 朝日新聞記者

先代・三遊亭円楽に勧められた月イチ独演会

 筆者が雷蔵の「八百夜」に初めて行ったのは2017年の秋でした。別の落語会で配られたチラシの中に、この独演会のチラシがあり「月イチ開催で、連続800回も?」と興味がわきました。古典のネタをじっくり聞けるのもうれしい。

 それにしても1年で12回、10年でようやく120回。半分の400回でもゆうに30年を超すペース。これまで一度も休まず、毎月続けてきたそうですが、気の遠くなるような年月です。一人の落語家が定期的に行っている独演会としては、異例の回数と言っていいでしょう。

 「八百夜」は、人気者だった先代・三遊亭円楽から「毎月の独演会やってみたら」と提案されて始めたそうです。当時35歳。「じゃあ、どうせやるなら」と800回を自分で発案したとか。最初のころは、円楽一門が拠点にしていた寄席「若竹」で開催。「円楽師匠にはずいぶんかわいがってもらって」たくさんの噺のけいこをつけてもらったそうです。

 雷蔵の得意ネタには新作の「おばあさん落語」もありますが、「八百夜」では、ほぼ古典を続けてきました。同じネタを高座にかける時もあります。
「古典は奥が深い。代々の人が磨いてきた。繰り返して(口演し)、前はわからなかったことがわかってきたりする」

 新たな工夫、表現を追い、同じ噺でも演じ方に変化が出るといいます。「これからはもっと自分らしさを出していこうかな」

体を鍛え、時事問題にも関心

 400回近く一度も休まず続けるにはタフさも必要です。雷蔵は30代から山登りで鍛えてきました。多いときは1年で40の山に登ったそうです。いやはや、タフですね。

 今でも地方公演に行くと近くの里山に向かいます。「今はハイキングのようなものです」。自宅でも毎朝、犬の散歩で歩きます。「なるべく疲れないように、疲れがたまらないように」。それが長く続いてきた秘訣の一つのようです。

 雷蔵は、噺に入る「まくら」と呼ばれる導入部で、しばしば時事ネタの小話を披露します。だから毎日、じっくりと新聞を読む。そこで見つけた話題を練って小話を作るのも仕事のうち。いつも、短い新作を作り続けているようなものです。

 ある時は、豪州の海岸に流れ着いたガラス瓶の話題をまくらにして聞かせてくれました。

 その瓶は、約130年前、ドイツ海軍の船が海流調査のために流したもの。「しっかり記録しているドイツの役所は立派」。それに引き換え文書を改ざんしたり紛失したりするどこかの役所は……というオチです。

もうすぐ折り返しの400回。雷蔵は「これからはもっと自分を出していこうかな」と話す=2019年1月17日、東京都中央区日本橋本町のお江戸日本橋亭(筆者撮影)拡大もうすぐ折り返しの400回。雷蔵は「これからはもっと自分を出していこうかな」と話す=2019年1月17日、東京都中央区日本橋本町のお江戸日本橋亭(筆者撮影)


筆者

鶴田智

鶴田智(つるた・さとし) 朝日新聞記者

1984年朝日新聞社入社。地域面編集センター次長、CSR推進部企画委員、「声」欄デスクを務め、現在、校閲センター記者。古典芸能にひかれ、歌舞伎は毎月観劇、落語は面白そうだと思えばできるだけ見に行く。