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大野拓朗、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

2度目のロミオ、より大きくよりダイナミックに、そしてより繊細に

真名子陽子 ライター、エディター


拡大大野拓朗=岸隆子撮影

 2月23日からミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(潤色・演出:小池修一郎)が上演される(~3月10日まで東京公演。その後、愛知、大阪公演と続く)。2001年のパリ初演以来、世界各国で上演され、観客動員500万人以上の傑作ミュージカル。日本では2010年に宝塚歌劇団で初演され、2011年に日本オリジナルバージョンを上演。その後再演を重ね、2017年には振付、美術、衣裳を一新した新演出版として上演され、今回はその再演となる。

 2017年に引き続き、ロミオ役を演じる大野拓朗の取材会が行われた。2011年の日本オリジナルバージョンの初演以来、すべての楽曲を歌い続けてきたという大野は、2017年再演出版のロミオ役に抜擢。世界一の作品と語る“ロミジュリ”の魅力と、再演にかける熱い思いを語ってくれた。

8年間歌い続けても飽きない

記者:初めてロミオ役を演じた手ごたえと、今回の意気込みをお願いいたします。

大野:自分で言うのもおこがましいのですが、手ごたえは正直ありました(笑)。イントロが流れて僕が客席から出てくるのですが、その時に拍手が起こったんです。こんなことがあるんだととてもうれしかったですし、前回ちゃんとロミオを全うできたから、今回も呼んでいただけたのかなと思っています。ただ、人生2度目のミュージカルでロミオ役をさせていただいて、まだまだ歌もダンスも、ミュージカルの表現として追いついていないところがたくさんあったなとも感じます。ですが、この2年間でたくさん経験をさせていただき、僕自身さらにパワーアップしたと自負しております。今回は、より大きくよりダイナミックに、そしてより繊細に、ロミオとしてこの“ロミジュリ”の世界を表現できたらいいなと思います。

記者:この作品は世界一とおっしゃっていますが、その魅力を教えてください。

大野:2011年の初演を観させていただいた時の衝撃がすごくて、全曲好きになったんです。ひとつのミュージカルで全曲が好きという作品に出会ったことがなかったので、そういう意味で世界一好きだと言いました。もちろん原作の力もあるのですが、やはり曲が持っている力は大きくて、すぐにCDを買ったんです。ただただ好きで、こんな風に歌えるようになりたいと真似をしながら、毎日歌っていました。そして5年後、ロミオをさせていただくことになりました。移動の車の中で熱唱し、家でも熱唱し……ご近所から苦情がきたらやめようと思っていたんですけど(笑)。そして、この2年間もずっと歌い続けてきましたがまったく飽きません。むしろ思うように歌えるようになって楽しくなってきましたし、奥深さを感じるようになりました。約8年間歌い続けても飽きない、その楽曲のパワーが1番の魅力です。

記者:その楽曲の魅力はなんでしょうか?

大野:老若男女すべての方々に染みる楽曲がそろっていると思います。一番好きと評判の「世界の王」はポップスロックのような曲ですし、シャンソンのような曲もあって、いろんな要素を持つ曲がそれぞれにちりばめられています。そういうところでしょうか……。結婚式の場面の曲はゴスペルっぽい厳かな雰囲気がありますし、いろんな表情を持つ楽曲がある所だと思います。心にぴたっと合うんですよね。

2年前よりは成長したと言っておきます

拡大大野拓朗=岸隆子撮影

記者:前回からパワーアップしているとのことですが、何があってパワーアップされたのでしょうか?

大野:ボイストレーニングをずっと続けていること。そして、2年間ロミジュリの歌を歌い続けていたこと。やはり本番を経験した後にボイストレーニングに入ると、感情を考えるようになるんです。歌うときにこういう感情になるから、こういう風になる。だから声が出にくくなるので、ボイトレでどう解消しようか……。そういう実践的な稽古ができるようになりましたし、ああいう感情であんな風に歌っていたけれど、実はこういう風に歌った方がこの感情は伝えやすいんじゃないか、そんな新たな発見がこの2年間でありました。

記者:それを活かした歌い方になるんですね。

大野:前回と歌い方は変えようと思っています。シャンソンのような歌い方に変えようかなと思う曲もあります。そして、肺活量を含めた歌の技術やスキルも、2年前よりは成長しています。と、言っておきます(笑)。

記者:具体的に変えようと思っているところは?

大野:気持ちの流れは変わらないのですが、気持ちの動きを繊細かつわかりやすく、そして大きくしたいなと思っています。

30歳になり少しずつ大人になってきた

拡大大野拓朗=岸隆子撮影

記者:歌の技術以外で成長したなと思うところは?

大野:この2年間でミュージカルの主演、朝ドラや大河ドラマなど、役者としていろんな経験をさせていただきました。少しずつ経験値が増えて自信にもつながりましたし、人としても成長したかなと感じています。30歳になり少しずつ大人になってきたと思うこともあります。前回よりも少し自信を持って、余裕を持って、冷静な目を持ちながら演じることができるのではと思います。前回は5年ぶりのミュージカルでしたので、ただただロミオとして生きようと、一生懸命に感情的に突っ走っていました。それが今回は少し冷静に、ダンスのクオリティを高くしようとか、いろんなところに目を向けられるかなと思っています。

記者:30歳になって変わったことはありますか?

大野:色っぽいと言われることが多くなりました。これまでそのワードは僕の中になかったので、1つ増えましたね。前回も色っぽさを出そうと思って演じていたのですが、今回は自信を持って色っぽさを出していきたいです。

記者:大人の魅力も出せるのでは?

大野:そうですね。2幕の追放されたあたりからの儚い色気をより出せるようになれたらいいなと、今模索中です。ただ歌稽古で、純粋無垢な若々しさが必要な1幕では、声が大人っぽすぎると言われましたので、そこはもっと研究しようと思っています。前回は歌うことに必死でしたので、それが稚拙に聞こえたと思うのですが、今は少し歌えるようになってきて、しっかりした声で歌っているのだと思います。若々しさを出せるようにがんばらないといけない年齢になったなと思いますね。

クオリティの高いカッコいいダンスを

拡大大野拓朗=岸隆子撮影

記者:ロミオはとてもカッコいい役です。演じる上で気にかけていることはありますか?

大野:今回もひたすらロミオ役を必死に生きることに変わりはないのですが、前回は客席を見るのが怖かったんです。「世界の王」は客席に向けてパフォーマンスをしている感覚なのですが、お客さまと目を合わせないようにしていました。でも今回は、一人一人目を合わせて、目を合わせた人を虜にしてやる!と思いながら歌おうかなと思っています(笑)。

記者:ダンスについてはいかがでしょうか?

大野:先日「世界の王」の振りをみんなでしたのですが、ダンスが上手くなりましたねと、振り付けの方が言ってくれたんです。僕自身、実感はそこまでありませんが、体をより自由に扱いやすくなったという感覚があります。だからダンスも前回よりクオリティの高いものをお見せできると思っています。前回は歌、芝居、ダンスと、ロミオとしていろんなハードルを越えなければいけないエネルギーが必要だったけれど、今回はそのハードルを越えたところからのスタートなので、もう少し余裕を持ってできるかなと思います。クオリティの高いカッコいいダンスを皆さんにお届けしたいです。

人に優しくなれたし、愛に溢れていた

記者:2回目のロミオ役、率直なお気持ちは?

大野:超、幸せです!(笑)。ロミオをやっていた期間は、稽古中も本番中もカンパニー全員を愛しているという感覚がすごく強かったんです。自分は天使なんじゃないかと思うくらい人に優しくなれたし、愛に溢れていました。そして、全員が家族なんだと思えたんです。ヴェローナに住んでいる人はみんな家族なんだから仲良くしようよと、ロミオも思っていたのかなって。そういうことも身をもって感じられて、すごく幸せな時間でした。だから今は、『ロミオ&ジュリエット』に再び出演させていただける幸せと、愛に溢れている感覚になれる幸せが大きすぎて、それが勇気になっていますし、自信にもつながっています。だから、プレッシャーはないです。

記者:いつでも笑顔というテーマは今も変わらないですか?

大野:変わらないです。いい日だったと思えるような日々を過ごしたいと、最近より強く思うようになってきました。笑顔でいるための努力をしないといけないですし、心から笑えるように結果を出す。それをより強く思っています。

◆公演情報◆
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
2019年2月23日(土)~3月10日(日) 東京・東京国際フォーラム ホールC
2019年3月22日(金)~3月24日(日) 愛知・刈谷市総合文化センター
2019年3月30日(土)~4月14日(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎
[出演]
古川雄大・大野拓朗(ダブルキャスト)、葵わかな・木下晴香・生田絵梨花(トリプルキャスト)、三浦涼介・木村達成(ダブルキャスト)、平間壮一・黒羽麻璃央(ダブルキャスト)、渡辺大輔・廣瀬友祐(ダブルキャスト)、
春野寿美礼、シルビア・グラブ、岸祐二、宮川浩、秋園美緒、姜暢雄、石井一孝、岡幸二郎、
大貫勇輔・宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)(ダブルキャスト) ほか

★大阪公演 追加公演決定★
上演200回達成を記念して、1幕と2幕で出演者が変わる“200回スペシャルバージョン”追加公演が決定!!
[日時]4月12日(金)18:45開演
[会場]梅田芸術劇場メインホール
[料金]S席 13,000円 A席 9,000円 B席 5,000円(税込)
[一般発売日]2019年3月16日(土)
詳細はこちら

筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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