赤尾千波(あかお・ちなみ) 富山大学人文学部人文学科教授(アメリカ文学・文化専攻)
津田塾大学学芸学部英文学科卒。筑波大学大学院修士課程地域研究研究科、インディアナ大学大学院を経て、筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科途中退学。岐阜大学教育学部助手を経て現職。著書に『アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ――『国民の創生』から『アバター』まで』(富山大学出版会)など。 研究室HP、 アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ』関連資料
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
写真におけるホワイトウォッシュで興味深い例を紹介しよう。
同じ有名人の黒人でも、肌色を白く修整するのはビヨンセ(2008年にロレアルの広告写真が英『ガーディアン』紙で批判された例が有名)、リアーナ、ガボレイ・シディベなど女性であり、逆に黒っぽく修整されたのは、アメリカのオバマ前大統領、タイガー・ウッズ(白人女性とのスキャンダルで報道されたプロゴルファー)、O.J.シンプソン(白人女性の妻殺害容疑で逮捕されたプロアメリカンフットボール選手)など、男性ということだ(詳しくはRussell, “Trading Races” p.275)。
このことが示唆するのは、女性は白いほど美しいという通念がある一方、黒人は黒いほど野卑との偏見があり、大統領もスポーツヒーローも「(肌の黒い黒人は)所詮は野蛮人だ」、との演出をしているということだ。
このような手の込んだ例とは別に、何気なくなされたかのようなホワイトウォッシュ写真も多い。