メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

『なのはな』原作・萩尾望都&演出・倉田淳/下

東日本大震災の直後に発表した、哀しみの浄化と希望が溢れる作品

真名子陽子 ライター、エディター


『なのはな』原作・萩尾望都&演出・倉田淳/上

言葉の裏側にある想いをちゃんと埋めたい

拡大萩尾望都(左)と倉田淳=岩田えり撮影

――この作品を読んだ時、この短い物語がどんなお芝居になるんだろうと思いました。

倉田:言葉の裏側にある想いがすごいので、そこをちゃんと埋めていかないとやらせていただく意味がないと思っています。ただ、あまり言葉で説明はしたくないと思っていますので、音楽の力や役者の居住まい、目と目の芝居だったり……ぎゅっと凝縮したいと思います。観ていただく方も感じることがそれぞれにあると思いますので、その余白を残したいなと思っています。

――終わり方もいろいろ捉え方ができるのではと思います。

倉田:ちゃんと最後の“なのはな”にたどり着いて、やはり希望に繋げたいと思っています。芝居のエネルギーのベクトルはそこへ向いていくと思います。それまでに、ナホちゃんが受けた、みんなが受けた悲しみや戸惑い、理不尽なことがいっぱい起きることに対する受け止め方の複雑さを、しっかりとちゃんと落とし込んでいきたいなと思っています。

――セリフは変えないんですね。

倉田:はい。あまり余計な言葉を増やすと浮いてしまうと思うので、そこは歌で埋めたいと思います。

支配層は本質的なことを言わない

拡大萩尾望都(右)と倉田淳=岩田えり撮影

萩尾:物語の中で小学校の先生がチェルノブイリの説明をして、皆さん勉強しましょうねと言うんです。それについて読者の方から、この先生のセリフは変じゃないか?というご指摘を受けたんです。その先生の意見が私の意見だと思って、じゃあ勉強すればいいんですねと……。でも、そうではなくてこの先生は誤魔化しているんですよね。

――そう感じました。

萩尾:そうなんです。

――そう言わざるを得ない。

萩尾:本質的なことを言わずに、漫然と皆さん勉強しましょうで終わってしまっているという。支配層ってそうですよね、そんな風に言うしかないんですよ。

――先生という立場の人が言う言葉の重さがあると思うんです。すごく腹が立ちました。

萩尾:ありがとうございます。

――先生なのになぜ?と……。

萩尾:校庭の土も変えなきゃいけないのにね。

――続いて、登場人物について。じいちゃんは本当にばあちゃんのことを忘れてしまったのでしょうか。ナホちゃんのためにそんな風に振る舞っているのでしょうか?

萩尾:どうでしょうねぇ……。私の考えだと、おじいさんは古い方だから、さくらんぼだって洗えば食べられると言います。大きなことが起こったから、何とか日常を取り戻したいと思って、良いほうに良いほうに考えているのかもしれません。おばあさんはいないんだけれど、もう深く考えていない。見つからないけれどもどこかにいる、そんなふうに考えているんじゃないのかな。人は現実に対応できない時、忘れたり、眠ったり、見ないふりをしたり、いろいろするんだけど、それも生き延びる方法かなと思います。

倉田:ナホちゃんが「ばあちゃんは帰ってこないもん」と、おじいちゃんがいる前で言うシーンがすごく切ないですね。ナホちゃんの想いが溢れて、たまらなくなってしまいます。

◆公演情報◆
Studio Life『なのはな』
2019年2月27日(水)~3月10日(日) 東京・東京芸術劇場シアターウエスト
2019年4月12日(金)~4月13日(土) 大阪・ABCホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:萩尾望都
脚本・演出:倉田淳
[出演]
船戸慎士、仲原裕之、関戸博一、松本慎也、宇佐見輝、若林健吾、千葉健玖、牛島祥太、伊藤清之、鈴木宏明/明石隼汰(客演)/倉本徹、藤原啓児
〈萩尾望都プロフィル〉
福岡県生まれ。代表作は『トーマの心臓』『11人いる』『ポーの一族』『残酷な神が支配する』『イグアナの娘』『なのはな』『王妃マルゴ』など。作品のジャンルはSF・ファンタジー、ミステリー、ラブコメディ、バレエもの、心理サスペンスものなど幅広い分野にわたり、「少女漫画の神様」とも評されている。小学館漫画賞、星雲賞コミック部門、手塚治虫文化賞優秀賞を受賞するなど、数々の受賞歴があるほか、2012年には少女漫画家では初となる紫綬褒章を受章、2017年には朝日賞を受賞している。
〈倉田淳プロフィル〉
東京都出身。1976年、演劇集団「円」演劇研究所に入所。第1期生。芥川比呂志に師事。氏の亡くなる1981年まで演出助手をつとめた。1985年、河内喜一朗と共にスタジオライフ結成、現在に至る。劇団活動の他、1994年より西武百貨店船橋コミュニティ・カレッジの演劇コースの講師を務めた。また英国の演劇事情にも通じており、その方面での執筆、コーディネーターも行っている。

・・・ログインして読む
(残り:約1376文字/本文:約3356文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

真名子陽子の記事

もっと見る