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【ヅカナビ】宙組・博多座公演

オリジナルの名作にショーの祝祭、2月も博多座は熱かった

中本千晶 演劇ジャーナリスト


 宙組・博多座公演『黒い瞳』『VIVA! FESTA! in HAKATA』は、作品の力とキャスト力を兼ね備えた舞台だった。奇をてらわず正攻法での勝負が気持ち良い。「今年も博多座のタカラヅカは盛り上がっているらしい」との評判を耳にしていたけれど、実際観て納得だ。とりわけ3度目の再演となる 『黒い瞳』について、改めてその魅力を再発見できたような気がする。適材適所なキャスティングの力も大きいのではないだろうか。

 18世紀ロシアの文豪プーシキンの『大尉の娘』を題材とするこの作品は、地方に赴任してきた貴族の将校ニコライ(真風涼帆)と赴任先で出会った娘マーシャ(星風まどか)との「愛」、偽皇帝を名乗るコサックの首領プガチョフ(愛月ひかる)と時の女帝エカテリーナⅡ世(純矢ちとせ)との「対立」を二筋の横糸として進んでいく。そこに縦糸として交わるのが、ニコライとプガチョフの間に芽生える奇妙な友情と、マーシャとエカテリーナの間に生まれる女同士の絆、身分を超えて生まれる関係だ。

素朴な真っ直ぐさ、真風ニコライはブレない

拡大宙組『黒い瞳』公演から=博多座提供

 とにかく真風ニコライの真っ直ぐさが清々しい。じつはこのニコライ、一見ただの好青年のようでいてブレない男だ。旅先で出会った浮浪者然とした男(じつはプガチョフ)に高価なコートを与えてしまうところに始まり、反乱軍の首領にまで上り詰めたプガチョフに対してもグイグイと「核心に」迫る。だが、その空気の読まなさ加減さえも持ち前の素朴な真っ直ぐさゆえに許されてしまう、そんな魅力を真風ニコライは確かに備えている。

 星風マーシャ。冒頭の「雪の少女」の場面はこの作品の見どころのひとつだが、登場の瞬間から可憐さに心洗われる。このところファムファタル的な大人っぽい役が多く、そういう役もこなしてしまう人ではあるけれど、今だからできる等身大の役が見られるのはやはり嬉しいものだ。

拡大宙組『黒い瞳』公演から=博多座提供

 桜木みなと演じるシヴァーブリンはどこまでも救いようがない悪役。目の覚めるような金髪が強烈で、この役で一皮向けようという気合を感じる。だが、桜木本来の持ち味である品の良さが、屈折した貴族という役柄に思いがけずはまり、唯一無二のシヴァープリン像を作り出していたように思った。蒼羽りくのマクシームィチ、コサック出身で心ならずも仲間を裏切ることになる役どころだが、心根の優しさが滲み出る。ダンス場面でもコサック陣を頼もしく引っ張っていた。

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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