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【ヅカナビ】宝塚音楽学校第105期文化祭

男役にも娘役にも期待の人材があちこちに

中本千晶 演劇ジャーナリスト


 2月22日(金)~24日(日)、宝塚音楽学校第105期の文化祭が宝塚バウホールにて行われた。文化祭とは、宝塚音楽学校の卒業記念公演のようなものだ。卒業を控えた音楽学校生(本科生)たちが2年間の学びの成果を披露する。3日間6公演のうち、私は22日の12時と16時の2公演を観ることができた。そこで今年もやはり観劇レポートを書き残しておこうと思う。

 劇場入り口では1年目の予科生がお出迎えをしてくれて、プログラムも販売してくれる。その雰囲気が数年前とだいぶ変わったなと感じる。今はずいぶんと華やかで和やかだ。ホスピタリティにも溢れていて、頼めばツーショットで写真も撮ってくれる。

 私の文化祭初体験は6年前の2013年、99期の文化祭なのだが、このときは入り口の雰囲気からして衝撃的だった。「『いらっしゃいませ!』と一斉に挨拶するその姿の清々しさに、まるで自分が穢れたもののような気がして心がひるみ、思わず引き返して帰りそうになった(帰らないけど)」など書き残している(スターファイル2013年3月26日)。個人的には数年前のあのピリッとした空気が少し懐かしい気もする。

演劇ではスペイン舞台の熱い物語を

 文化祭は3部構成だ。第1部では幕開きに「清く正しく美しく」の歌に合わせて全員が緑の袴姿で踊る「日本舞踊」があり、続いてクラシック・ヴォーカルとポピュラー・ヴォーカル(宝塚歌劇メドレー)となる。そして第2部が演劇、第3部がダンスコンサートである。したがって第1部は歌の上手い人、第2部は芝居心のある人、第3部が踊りの得意な人に活躍の場が与えられる。

 第2部の演劇はAB2組に分かれてのダブルキャストになっているから、できれば両パターンが見られるのがベターだ。出し物は座付の演出家によるオリジナル作品で、毎年違う。今年は正塚晴彦作・演出による『黒い風の物語』。ナポレオンが権勢を誇った時代、フランス軍の侵攻を受けるスペインが舞台の物語だ。スペイン貴族のフランシスコ(松岡恵/新井紀香)はフランス軍との戦いで負傷し、記憶を失ったところをロマの人々に助けられる。やがて記憶を取り戻したフランシスコは、ロマの仲間たちともに義賊「黒い風」となってフランス軍に抵抗する。『バレンシアの熱い花』を彷彿とさせるが、105期の陣容に合わせて男役、娘役ともに演じ甲斐のありそうな役が多い物語となっていた。

 フランシスコの命を助けるロマの女イサベル(ハーバート真唯/土井山吹)がヒロイン格。そのほか主だった役としては、フラシスコの親友で皆の命を救うためフランス軍との共存の道を探るアントニオ(深見紗也/葦澤咲)、フランシスコの許嫁だったがアントニオの妻となるセシリア(倉田美優/村上香乃)、「黒い風」の同志となるロマの男ロベルト(山川愛未/早崎実奈)、フランシスコを追い詰めるフランス軍士官のクリストフ(田中愛梨/橋本佳奈)、お調子者の密偵イアーゴー(数見百音/舩戸万由香)、そして物語の進行役を務めるアドナシオン・コンスタンサ(土山はる奈/大澤サラ)といったところ。カッコ内がAB両組の配役だ(敬称略)。

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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