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築地市場の「のれん」を発展させる「解放区」

永尾俊彦 ルポライター

解体が進む築地市場/2018年11月20日拡大解体が進む築地市場=2018年11月20日、撮影・筆者

「のれん」の威力

 2018年10月11日、ついに築地市場の解体工事が始まった。営業権を主張し、営業を続けることが解体を止めることになる。豊洲市場の土壌汚染問題などを追及する一級建築士・水谷和子さんも熊本理論を学び、ツイッターで仲卸業者らの営業を支える「お買い物ツアー」を呼びかけた。

 同日午前8時、築地市場正門前には「お買い物ツアー」の客、約100人が詰めかけた。

 「築地市場は閉場してございます。お買い物は豊洲市場でお願いします」

 都の職員はこう繰り返し、ほか数人の職員と両手を広げて入場を阻止。熊本さんも駆けつけ、都の職員に「『閉場』の法的根拠は何ですか」と問うた。職員は答えず、ただ「築地市場は閉場してございます」と繰り返すだけだ。

 20分ほどの押し問答の末、「入りましょう、入りましょう」と買い物客は制止を振り切って入場した。

 一行は、市場内の仲卸店で買い物を始めた。都の職員が、「旧築地市場で営業することは豊洲市場での営業許可の取り消しを含む処分の対象になります」と警告した。

 だが、仲卸は、「私は営業権に基づき、営業しているだけです」と答える。熊本さんが、「営業権は都の許可、もしくはのれんに基づいて発生しますが、今、この仲卸の方はのれんに基づいて築地で営業しているんです。のれんに基づく営業権が存在しないというなら、証明してください」と反論。

 都職員は無視し、警告を繰り返す。が、買い物は止めない。いや、法的根拠が示せないから止められないのだ。「のれん」の威力だ。

 用意されたアジやサバの干物、ウニのビン詰めなどは30分ほどで完売した。

 ツアーに参加した女性(53歳)は「都民を守るべき都が、営業権のある都民を守らないなんて地上げ屋のよう」と感想を語った。

 卸売市場法14条は、中央卸売市場を廃止するには農林水産大臣の認可が必要で、「一般消費者及び関係事業者の利益が害されるおそれがない」時でなければ認可してはならないと定めている。熊本さんは、「市場解体には廃止の認可が必要で、営業が続いていれば『利益』を害することになり、認可できません」と買い物客に説明した。

 私は農水省の卸売市場室に、廃止の認可がなくても市場を解体できるのか聞いた。「都からは卸売市場法11条の業務規程の変更(築地の位置と面積などを豊洲に変更する)の申請があったので、認可しました。築地市場をどうするかは都の管理になる」と答えた。

 解体するか否かは都の勝手ということだが、都が同法14条の廃止の認可は得ていないのは確かだ。熊本さんは、「地方自治法でも公共施設の廃止には議会で出席議員の3分の2以上の賛成の議決が必要です」とも指摘した。

 その後も「お買い物ツアー」は連日開催された。

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筆者

永尾俊彦

永尾俊彦(ながお・としひこ) ルポライター

1957年、東京都生まれ。毎日新聞記者を経てルポライター。1997年の諫早湾の閉め切りから諫早湾干拓事業を継続的に取材。主な著書に『ルポ 諫早の叫び――よみがえれ干潟ともやいの心』(岩波書店)、『ルポ どうなる? どうする? 築地市場――みんなの市場をつくる』(岩波ブックレット)、『国家と石綿――ルポ・アスベスト被害者「息ほしき人々」の闘い』(現代書館)など。