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栗山千明が一人二役で『十二番目の天使』に出演!

母親としての芯の強さが役柄の共通点

米満ゆうこ フリーライター


拡大栗山千明=岸隆子撮影

 著作が世界で3600万部以上読まれているという、米国の作家オグ・マンディーノの小説『十二番目の天使』が初舞台化される。

 仕事や家庭に恵まれ、幸せの絶頂にあったビジネスマンのジョンは、妻のサリーと息子を、ある日突然事故で失ってしまう。絶望の淵にいたジョンだが、幼なじみの頼みでリトルリーグの監督になり、ティモシーという少年との出会いによって変化し、癒やされていく。しかし、ティモシーはある重大な秘密を抱えているのだった。

 流麗なセリフと、キリスト教に基づいた天国や死に対する考え方も作品の特徴だ。サリーとティモシーの母ペギーの一人二役を演じる栗山千明が会見を開き、『十二番目の天使』についてや、今回5作品目となる舞台にかける思いを話した。

台詞を口にするだけで泣きそうになってしまう

拡大栗山千明=岸隆子撮影

記者:まず、作品の原作や台本を読んだ感想を教えていただけますか。

栗山:最初は舞台のプロットを読んで、原作、そして台本を読みました。プロットで内容は知っていたんですが、原作や台本を読み直すたびに感動します。人が亡くなるという話ではあるんですが、前向きな気持ちになれる、そんな物語です。そういう物語はめったにないと思いますので、全米でベストセラーになった意味が分かります。

記者:原作と台本の違いはありますか。

栗山:稽古がこれからなので分かりませんが、リトルリーグの野球のシーンなどは舞台でどう見せていくのか楽しみです。舞台になったことで、より分かりやすくなるのではないかと思います。私はペギーというティモシーのお母さんを演じるのですが、野球にかんするセリフを言うなど、原作にはないセリフが台本にはふんだんにありますね。

記者:役柄について教えてください。

栗山:私は井上芳雄さん演じるジョンの奥さんのサリーと、ティモシーのお母さんのペギーの一人二役です。サリーも男の子のお母さんで、ジョンを誇りに思っていて、そのジョンを支えてきた芯の強さがある。一方、ペギーは、ひたむきで、ティモシーが抱える秘密に対して、一生懸命彼に応えようとしている。彼女も芯が強いところがあるんですが、ティモシーに対しての向かい方は、母親としてできることに徹しようとしている強さ。同じ年ごろの少年のお母さんでも、その強さが違うという印象ですね。また、ペギーはジョンを神様のように思っている。一つひとつの出来事に感謝して、清らかな気持ちでいられる人なんです。

記者:原作や台本ではサリーは亡くなってしまいます。死後、舞台ではサリーは霊や幽霊として登場するのでしょうか。

栗山:原作もそうなんですが、サリーはジョンの回想シーンとして出てくるんです。役をどうとらえようかと悩んだのは、サリーはあくまでもジョンが思っている回想のサリーなんだと。だから、もっとセリフを優しく言ったほうがいいのかな、理想の奥さんとして、ジョンのイメージに寄せて演じたほうがいいのかなと思っています。私の想像を膨らませてセリフを言わなければいけない難しさを感じています。

記者:サリーとペギーは、母親としての芯の強さが共通するとおっしゃっていました。今のところ、共通点はあるものの、全く別々の人物として捉えられているのでしょうか。

栗山:そうですね。セリフの感じでは、サリーは、ジョンにもジョンを支えている自分にも誇りを感じている。ペギーはジョンに対して色々してもらってありがとうございますという低姿勢です。そういう面からも違う人物だと感じるので、違う要素が多いかなと。今回は私が二人を演じるので、見た目はどうしても同じになってしまいますが(笑)、演じ方で、区別がつけられるとお客さんも面白いと感じてくれると思います。

記者:ペギーが抱えるティモシーの秘密はとても大変なことですね。

栗山:セリフを口に出すだけで、泣きそうになっちゃいます。結構、長いセリフもあるんですが、言い切れるのかなと。ペギーは平常心を保ちながらティモシーに野球をやらせるのは怖いことだと思うんです。過保護になりそうな自分を抑えて、ティモシーのやりたいことをやらせてあげる。どこか母親としてちゃんとしなきゃと感じていると思います。その葛藤みたいなところを表現するのが難しいですね。

記者:ペギーの母親としての強さはどこからきているのでしょう。

栗山:自分がどうこうという思いより、大切な息子にやりたいことをやらせるという、自分以外の人の気持ちを大切に出来るということですね。たいていの人は、自分がやりたいことを優先してしまいがちだと思うんですけど、そこを抑えてティモシーを見てあげられる強さだと思います。

臆病なので、蜷川幸雄さんとは目を合わせられなかった

拡大栗山千明=岸隆子撮影

記者:母親役は今回が初めてですか。

栗山:普通のお母さんは初めてです。『SPEC』という映画では特殊能力がある役だったので(笑)。私は10代からどちらかというと強い役が多くて、今回は優しい理想のお母さんなので、母性や家族愛を出せるのか正直難しさを感じています。

記者:役づくりはどのようにされるのですか。

栗山:皆さん、いつもどうしているのかな?と思っているんですけど(笑)、私はドラマや映画は、監督やプロデューサーと言葉ですり合わせして、役のイメージを固めていきます。舞台は稽古という期間があるので、色んな演じ方を提示しながら、演出家に見ていただく感じですね。でも、どの作品も関係なく、最初に台本を読んだ自分の印象を大切にしています。

記者:今回、演出される鵜山仁さんとはお話されましたか。

栗山:まだお会いしていないんです。色んな方から「鵜山さんはやさしい方だから大丈夫だよ」と言っていただけるので、安心しています。私、臆病なので、怖い方だとそれだけで萎縮してしまうんです。井上さんとも初共演なんですが、この前お会いしたときに気さくにお話していただけました。作品の物語と同じように、いい雰囲気で舞台に臨めるかなと思っています。

記者:稽古場では、いつも様子をうかがう感じですか。

栗山:私、すごいですよ(笑)。最初の3回の舞台が蜷川幸雄さんの演出だったんですが、蜷川さんは怖いというイメージが刷り込まれていて、目を合わせたら怒られると思っていました(一同笑)。なるべく目を合わせないようにしていました。実際は、そんなこともなかったのですが、3度やっても怖いなと思っていました(笑)。

記者:今作では野球のシーンがたくさんありますが、運動は普段からされているんですよね?

栗山:していないです(笑)。身体を動かすのは、すごく小さいときに、クラシックバレエと、中学の軽い部活で新体操をやっていたぐらいです。今回の舞台でも、私が野球をするシーンはないはずです(笑)。

舞台をやらせてもらったから今の私がある

拡大栗山千明=岸隆子撮影

記者:栗山さんは映像を中心にご活躍されていますが、舞台に挑まれるのは何か理由があるのでしょうか。

栗山:もともと私、舞台デビューは遅かったんですね。きっかけがなかったこともありますが、恐怖と私に舞台は絶対できないという思いがありました。ドラマや映画は撮り直しができますが、生の舞台は怖いなと。でも、蜷川さんの舞台を経験させてもらって、何とかできたと精神面で強くなれて、そこまで怖いものじゃないということを教えてもらいました。また、経験を重ねるたびに度胸がついたり、ハプニングが起こってもこうしようと考えたりして、自分の変化を感じられるようになりました。生でお客さんの前に立つ経験がなかったらそういう成長はできなかったと今でも思っています。今回も一皮むければいいですね。

記者:今後も舞台は続けたいと?

栗山:求めてもらえれば。でも、すごく〝緊張しい〟なので、神経をすり減らしながらやる感じですね(笑)。それでも舞台をやらせてもらったから今の自分があると思えるんです。ドラマや映画だと、同じ作品でもお会いしないキャストがいますが、舞台は皆で作りあげていく、チームとしての共同作業は映像だと味わえないですね。

記者:今回、全国各地で公演されます。

栗山:全国を回るのは、前回の舞台に続いて2回目です。各地で笑いどころが違うんですよね。それは演者として楽しいです。東京はいつもこのシーンは笑いのポイントなのに、ほかの場所では「あれっ、ない!」みたいな(笑)。

記者:緊張しいとのことですが、舞台出演中はリラックスするためにどんなことをされていますか。

栗山:本来は普段からしないといけないんですが、舞台のときは規則正しい生活を自然にするようになりますね。公演時間も決まっていますし、そこに合わせて自分のルーティンを作っていく。ドラマや映画ではしないんですが、ストレッチや準備運動、加湿器をつけなきゃと、自分に対するケアの意識が高まります。緊張のほうが勝ってしまいますが、公演を重ねるたびに、少しずつ舞台を楽しめるようになってきましたね。今回は心温まるやさしい作品に参加させていただけるのでうれしいです。全国各地にうかがうことができますし、観客の皆さんにお会いできるのが非常に楽しみです。

◆公演情報◆
『十二番目の天使』
2019年3月16日(土)~4月4日(木) 東京・シアタークリエ
2019年4月6日(土)~7日(日) 新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
2019年4月9日(火)~10日(水) 石川・北國新聞 赤羽ホール
2019年4月13日(土)~14日(日) 茨城・水戸芸術館 ACM劇場
2019年4月17日(水) 香川・レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール
2019年4月19日(金) 福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
2019年4月21日(日) 福井・越前市文化センター
2019年4月24日(水) 愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2019年4月26日(金)~29日(月・祝) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:オグ・マンディーノ
翻訳:坂本貢一(求龍堂刊「十二番目の天使」より)
台本:笹部博司
演出:鵜山 仁
[出演]
井上芳雄、栗山千明、六角精児、木野 花、辻 萬長 ほか

筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

「三度の飯よりアートが好き」で、国内外の舞台を中心に、アートをテーマに取材・執筆。ブロードウェイの観劇歴は20年以上にわたり、ブロードウェイの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて、現地で取材をしている。

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