勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
今の若者は昔の何倍もリスクを背負っている
アルバイト店員によるSNSへの不適切動画投稿が相次いで問題になっている件で、前回の記事「くら寿司バイトテロ問題は企業の身から出た錆」では、「質を担保出来るとは思えない求人募集」と「あまりに低い正規雇用比率」という二つの点から、企業の側にも事件発生に関してある程度の責任はあるとの見解を書きました。その一方で、私は消費者の側にも問題があると感じています。
前回の記事でも触れたように、くら寿司は正社員比率がわずか10人に1人ですが、その数字を見た際、「これではアルバイトの管理監督や教育がうまく行き渡らない可能性も十分にあるだろう」と考えるのが自然であるのと同じく、「人件費にお金をかけていない企業のサービスの質は悪くて当然だろう」と考えるのが普通のはずです。食材や商品等では「安いものほど品質は落ちる」というイメージを持つ人も多いと思いますが、それは人材に関しても言えることです。
デフレ時代に成長を続けた回転寿司チェーン業界ですが、それは人件費を徹底的に削ることで、商品価格を抑えた面も大きく影響しているのではないでしょうか。そのような企業は当然、人件費にお金をかけている企業よりも、従業員による不適切行動が発生する確率は高いはずです。
ところが、なぜか人材の質の話になると、「安いと質も落ちる」という原則が考えられない人が多いように感じるのです。「アルバイト店員が全体の9割近くを占める職場であっても、不届き者が一切入らないようにするべきだ」というのは、ハードルが極めて高い理不尽な要求でしょう。それなのに、消費者やメディアも、「安かろう良かろう」「人件費の高低に関係なく提供されるサービスは常に平均以上で当然である」と考えているように見えて仕方ありません。